修正ではない理不尽
生唾を飲み込む音が響く。
それは、シゲでもあり凍慈でもあり。
「それは…」
絞り出した声は自分の耳にすら到達したかわからない。
「(どういう意味で言ったの?」
静寂を保ったまま、でもそんなに長い時間ではなく。
振り返った時、すでに俺は喋り出していた。
[……アリア、どうしたの?僕はここに居るよ]
ムービーがスタートしたと同時
雷が落ちたようだった
考えないようにしていた
ゲームのストーリーで勝手に“もとから決められていた事”を喋り出しているんだと。
いや、それは恐らく凍慈も同じだろう。
[ほら、覚えてる?君がお転婆で。6歳の時にウルフの子供を村に連れて帰ってこっそり育ててた事があったの]
アリアの目が大きく見開かれた…。
[覚えてるよ。大騒ぎになっちゃったよね。貴方が、、間に入って……]
アリアの声が震えている。
知らない記憶なのに、勝手に喋る。
でも今は助かっている。心底。
[10歳の誕生日に、君が杖を欲しがった時のおばさんの顔ときたらさ。私は冒険者になるの!って、箒を振り回してたよね?]
[うん。うん]
[売りたくないって言ってくれて、嬉しかったよ]
ああ、あの木の杖。売りたくない、そうだったんだ。
知らないからって酷いこと言っちゃったんだ。
[騎士学校行くのは凄いゴネて、大神官様が困り果ててた]
[…………貴方と、、離れたくなかったから]
この世界に、騎士の学校があるなんて知らなかったもんな……
[でもね、僕は…誇らしかった。僕の母の後を引き継ぐ君が…とてもね…]
そっか、勇者のお母さんは…騎士だったのか……。
[……うん]
[マナの木を君と見れて良かった。絵本より、立派だったね]
マナの木を、俺は知ってたんだな…。
[貴方が、いつも読んでくれたでしょう?楽しみにしてたんだよ、本物を……貴方と見るのを……]
風が二人の合間を縫うように吹き、少しの沈黙が流れる
[まぁ、ドラゴンの肉は、口にしないに越したことはないけどね]
[やっぱり、まだダメ?]
[うーん。まぁ、僕の口には合わないかな]
あはは、と笑い合う二人
そっか、俺は……。
いや、君はドラゴンの肉が嫌いだったんだな…。
そりゃ、アリアからしたらもう別人だよ。
[アリア。まだ…、ルビーのタルトは好き?]
[うん、大好き!]
あの日、あの洞窟で思い浮かんだ…その食べ物の名前
ああ、そうか。俺が好きな食べ物じゃなかったんだな
[大丈夫だよ。僕はいつだって君の側で君の事をみてる]
[うん]
[僕は、この瞬間だけは……君と一緒だから]
[そっか、そうだったんだね]
「アリア…」
自分の声が出る。あんなに優しいトーンで話し掛けれるなんて知らない。ごめん、ごめんアリア…。
「ごめんね、シゲ。変なこときいちゃって」
ニコッといつもの笑顔が向けられる。
“目の前の人間が、違う何かだったら”
考えないようにしていた現実は、とても残酷で理不尽だった。
「旅の終わりが近いのかなぁ、ちょっと不安になっちゃって!」
だから、もう気にしないで。
その言葉はもうシゲには届いていなかった。
アリアの視線は、シゲと凍慈を見つめていて……。
そして、同じく凍慈も視線をすっと外した。
「寝る準備、しなきゃだね!」
いつものように笑うアリア
アリア
君は…気付かないフリをしてくれるんだな……
「………バレてへん、そう思ってくれるって事や。このまま行くで」
凍慈の表情は、うかがい知る事が出来なかったけれど、どこか動揺しているようにも感じた。
「………だよな」
アリアが、そう言ってくれるなら……
お言葉に甘えよう……
「(………待って、それは…違うだろ)」
あれだけ、“ここはゲームの中だけど、ちゃんと人が息づいている”そう思い続けていたのに
「一番、大事な事を見ないふりしてたのは、俺じゃないか………」
闇が、あっという間にその場を覆い尽くす
「………ごめん、、アリア。君と勇者の旅を……奪って…」
その小さな謝罪は、風に吹かれてかき消された……
前話、修正前のをアップしており…。
やや加執と修正しておりますm(__)m




