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勇者に転生したけど理不尽だ  作者: 甘味好き
邪神へ続く道
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外伝・ガルリー ㊥



勇者から受け取った聖剣を研ぐべく奥の仕事場へ。


鞘から引き抜いた聖剣は……



『こりゃぁダメだワイ』



ノームが先にそう言った。


ガルリーの見立ても、ノームと全く同じだった。


「……ノーム様もそう思われるなら」


『1000年も前の剣じゃ。仕方なかろう』


外では楽しげな声が。

ガルリーはやや申し訳ない気持ちで勇者たちが待つ部屋へ。


さて、どう言ったものか。


「早かったね」


「まぁ、研ぐのは一から作るわけちゃうしな」


台に聖剣を置く。

勇者一行の反応を見るにわかってはなさそうだ。


やっぱりか、小さく呟いたワルツは、少しだけ肩を落とした。


「……」


ワルツはわかっておったか。

なお言わなかったのは、ワシに少しばかり期待したのか。


「……」


そう思うと、今から言う言葉は彼等には申し訳ないものとなる。


小難しい工程を話しても混乱を招くだけだろう。


「……結論から言うと」


「結論から!?」


「工程を言ったらお主らわかるのか?」


「だとしてもお師匠、言い方ー!」


む、喋れと言うたり難しいやつだ。まあ良い。


「……結論だが。聖剣は寿命だ」


「………え?」


「…………研いでもどうにもならん」


「ま、待って待って…」


「どうやってこの剣が誕生し、どうやって今まで持ったのか。もはや奇跡じゃ」



ああ、だから言葉は嫌いなのだ。

人を喜ばしもすれば、こうやって絶望的な気持ちにもさせる。



「ワシ程度のドワーフでは、マナの女神様のお力にはなれん」


「じゃ、じゃあ……聖剣は……」


絞り出した言葉を聞き、しかしガルリーは躊躇う事なく言葉を紡ぎだした。


「…………………諦めろ」


そう言って立ち去ろうとしたガルリーの背後



「お師匠様が、聖剣を修復すれば良いじゃないですか」



ワルツは再びニコッと笑って、本をいくつか取り出した。


「…………聞いとらんかったか、ワルツ」


「聞いてました。聖剣は、過去でも修復されています」


ロングセラー小説【勇者と邪神退治の旅】のタイトルが書かれた本だ。

この星の者は誰だって1度は目にしただろう、龍神王様がお書きになったその冒険譚。



━重大な真実は隠されしその本を、人々は有り難がって読む━



「ノームの騎士の手によって」



そりゃ、そうさ。ノームの騎士はその為だけに存在しているのだから。



『そうじゃ、わしらで修復すればよい!』



脳裏をよぎる、石盤の言葉


━邪神、その技術を恐ろしく思い、ワンダを滅ぼすなり━


━2代目勇者の聖剣研ぎし北ワンダは邪神に見つかり滅ぶなり━


━3代目勇者の聖剣研ぎし南ワンダは邪神に見つかり滅ぶなり━



けれど、少しだけ本へと視線を投げて、ゆっくりと口を開く。


「聖剣は、必要なんだな?」


はてさて。

ワシは研ぐべく選ばれたのか、滅亡させる為に選ばれたのか。


「……邪神を退治するには、聖剣が必要だとマナの女神様は仰っています」


アリアの言葉を聞いて、その決意は固まる。


いや、最初からどうするか……決めていたのかもしれない。



「さっさと引退しとくべきだったな」



━聖剣を研いではならぬ、聖剣はワンダを滅ぼす魔剣なり━



「……いや、若(・)い(・)の(・)に(・)背(・)負(・)わ(・)せ(・)る(・)にゃ、ちと荷が重いか」


ワシが聖剣を復活さる事ができねば、どのみちこの世界は終わる


「……ワシがやれる事は、延命に過ぎん。この旅が終われば…女神に新たな一振を所望しておくんだな」


ならば、宝玉の騎士としてではなく


一人の鍛冶師としての本懐を全うするのみ


「ありがとうございます」


聞いたことのない、その感謝の言葉は


まぁ。悪くはないなと思うのと。


完成してからまた言ってくれ……その言葉はシゲたちには届かなかった



「……ワルツ」


「え、あ、はい」


「次代の騎士に初任務だ。勇者御一行に同行し、“オリハルコン”をアンバーの谷から持って来るように」


唯一の懸念はただ一つ


研ぐことさえ不可能だった場合と


過去に滅んだ経緯



アザリアスからの手紙にも、その懸念は記されていた。

そして、聖剣を新たに造る為に手を回す、とも。



「……え!?お師匠は!?」



東のワンダは聖剣復活と引き換えに……恐らく滅びるだろう


邪神の手の者が押し入って来るに違いない


そうなれば……、残るは西のワンダのみになる

ワルツは西のワンダの出身だ


なにも、道連れにする事もない


ワシかワルツか……


どちらかの騎士は残るであろう


選択肢は二つだった


ワシがオリハルコンを取りに行くか

ワルツがオリハルコンを取りに行くか


ならば、勇者と一緒の方が安心だ

襲って来るとわかっているワンダに残すより、な。


 

「仕事が沢山あるって、、もう!わかりましたよぅ!」


「……何言ってるかわかるの、凄いね……」


「まぁ、同じドワーフですから」


あはは、と笑ったワルツ。


珍しくさっぱり当たっとらんがな、まぁ良い


「……お師匠。あの、行って来ます」


さっさと行ってこい、そして……ワシが生きてるうちに戻ってこい。


ちらりと一度だけワルツを見て、再び鍛冶場にはカンカンと鉄を叩く音が響き渡る。


そのワルツ横顔は、とても不安そうだった


「……だ、大丈夫!勇者一行が君を全力で守るからさ!」


「はい、足引っ張らないよう、がんばります!」





そう言ったワルツを、ガルリーだけは笑って見送った


さて、アザリアスのやつは上手いことやったのか……


そういえば最後に会ったのは、やつに送った最高傑作の双剣を渡す時だったか


我ながら良い出来だった


シーンと静まり返る鍛冶場


不安そうに出ていったワルツを思いだし…、珍しく独り言がもれた。


「……そんなヤワにゃ鍛えとらん」


ガルリーのその呟きは、少しだけ大きく響いた。


『素直じゃないやつめ。わしもワルツと一緒に行くからな!』


ノーム様は何故ワシに聞くのか……


『行くからな?』


行きたいならば行けば良いのでは?


『な?』


まぁ、ノーム様はワシ以外と会話が出来んはずだから、今とさして変わらんとは思うが……


『なんで黙るんじゃーー!!』


手にした別の依頼書へと目をうつし、再びガルリーは金槌を振り上げた


 


「………そろそろ、か」


依頼書をくるっと巻いて、出来上がった武器を台に並べる


『なんじゃ?何の話しじゃ?』

 

海竜王《レヴィアタン》の轟槍(水属性)


森林龍《フォレストドラゴン》の地鳴り(木属性)


風神バルディッシュ(風属性)

 


『流石、わしの見込んだ騎士。喋りは壊滅的じゃが、鍛冶の腕だけは素晴らしい』


それは、誉めているのか?貶しているのか?


 

その直後、ガルリーの鍛冶場の扉が開く


「………ガルリーさんの家は、こちらでよろしいでしょうか?」


「鍛冶場はここしかないニャ!つまり、ここだニャ!」


入って来たのは、猫亜人の二人組、いや、もう一人いるな。


どうやら一人は話しがわかりそうだ。


「そ、そうかも知れないけど!」


「あの人がガルリーさんに間違いないニャ!」


「あのねニャウィー。礼儀作法ってものがこの世の中には、ニャウィー!」


「こんにちわ!私ニャウィーだにゃ!」


「………」


このお嬢ちゃんは話が早そうで助かる。


他の地上人は何でも聞いてきて困っていたからな。


「ところで、呼ばれたけど何するにゃ?」


「………」


アザリアス殿の手紙に書かれておっただろう、詳しくな。


すっと台に乗った武器を見ながら、3人へ視線を投げる。


ほれ、依頼書のお主らの武器だ。受け取れ。


「これ、海竜王の轟槍!」


と言うことは……この麦茶色、、こやつがアトランティス人か。


まだ若い、成長を考えるともう少しだけ調整が必要だな。


「………」


「…いきなりベタベタ触らないで欲しいんだけど」


ん?どこかで聞いたセリフだな。


何度も言うようだが……。

触らずにどうやって調整するのだ、少しは察する能力を鍛えよ。


「この武器の代金はどうしたら良いニャ?」


もうアザリアスから受け取っとる


「何で私が鉄扇使いって何でわかるのにゃ?」


両手に特有のマメがある

槍とバルディッシュではそんなマメはつかん


「ガルリーさんはもう勇者シゲには会ったかにゃ?」


「あの間抜け面、少しはマシな顔つきになってたら良いけどな」


「どうしてガルリーさんは喋らないのにゃ?」


今の流れで喋る必要がどこかにあったか?


「言葉に出さないとわからないにゃー!」


「親父を酷くしたバージョンじゃないか……」



こやつら、ノーム様より喋るじゃないか、ワルツ、はよ帰って来い!!



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