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勇者に転生したけど理不尽だ  作者: 甘味好き
邪神へ続く道
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外伝・ガルリー ㊤




【東側のワンダの国】のドワーフは、無口だとよく言われる



『のうガルリーや。その金属は何に使うのじゃ?』



街の鉱石ショップで金属と鉱石を手に、カウンターに並べる。


「……1760ルート」


店員との会話はこれのみだが、他所者には驚かれる事が多い。


『割りと良い値段だな』


武器を作る金属や鉱石を高いとか言う意味はわからないが……。

しかし、会話という会話は本当に必要なのか?


「……」


無言のままお金を受けとると、そのまま袋にいれ、カウンターにポンと置かれる。


「……」


無言のままその袋を受けとれば、買い物は終了する。


至ってシンプルだ。


が、まぁたしかに、思うとこの国のドワーフには特段会話は存在していない。


『ガルリー!なんか喋らんかい!』


「……」


『買い物で会話せんとは、損するぞ!損!』


ノーム様の騎士に何故選ばれたのかは知らないが、ノーム様は思っていた1000倍はおしゃべりだ。


「……」


『なんじゃ!?喋れ!わしゃ、エスパーじゃないぞー!』


そもそも。ショップへは買い物に行っているのだから、物をカウンターに置けばそれは購入すると言うこと。

金額を聞いたらお金を渡してのやり取りに、会話は不要だろうに。


「……」


なので、こちらからしたら他が不思議なのだが、中々理解が進まん


『わしの騎士ならもう少しおしゃべりでないと困る!わしが独り言激しいみたいではないか!!』



ノーム様の騎士とやらに選ばれて15年は経った。


戦乱となったこの世は武器を求める


ひたすら武器を作り続けているが、果ては見えない


そして、己が真に作りたいと思う、その一振にも……


『前回の騎士はもう少し喋ったぞ?』


ワシの前の騎士は西側のドワーフだからな、そりゃお喋りだっただろうな。


「……貴方がガルリーさんですか!?」


久しぶりにワンダの国に訪れたのは、【西側のワンダ】の国から来た青年だった。


「僕はワルツ!貴方の弟子にして下さい!!」


面倒なので断る

ふいと背中を見せたが……、これは失敗だった。


「無言は肯定!よろしくお願いいたします!」


「…………断る」


「もう遅いでーす」


この国のドワーフは、男児も女児も自分たちを「ワシ」と言い、会話は相手の雰囲気や空気、行動を見て察する一族だったので、ワルツはとても新鮮に感じた。


「あ、今日は昼から雨ですね。僕、追加の薪先に切っときます!」


良くも悪くもワルツは空気で会話はせず、言葉に出す。


「モノローグはダメです!そんなんだから、地上人に安く買い叩かれるんですよ!良い武器なのに」


空気が読めないわけではないのだろうが……


「…………喋るのはなれとらん」


「……西と東、同じドワーフなのに……面白いですね」



そう笑うワルツだが……。

面白い、そうか。そんな“言葉”があるんだな……。



「お師匠、勇者御一行が来るそうですよ!流石お師匠、凄いですね!」



《ガルリーの鍛冶場》と書かれた家にノック音が響き渡る。


『誰か来たようだぞ?』


「……」


入ってダメなら鍵をかけるし、追い出すだけだ。


ノームをちらりと見て、再びカンカンと鉄を叩く音が部屋に響き渡っていた。


「鉄と、熱……」


あらかた依頼だろう。そう思っていたが、何やら足音がドワーフの足音とは違う。


話し声がするので奥から出れば、思った通りドワーフではない一団がそこには居た。


「あの、ガルリーさんですか?」


ああ、そう言えばアザリアスから手紙が来ていたな。

と、言うことは彼らは勇者御一行か。



『わひゃひゃ、勇者御一行じゃわい!』



ガルリーの背後から現れたノーム様はいつになくテンションが高い。


勇者御一行とやらはそんなにありがたいのか……。

まぁ、鍛冶職人には関係のない話だ。



『……わしゃ、ノームじゃ!よろしくな!』



『そやつはノーム。琥珀《アンバー》の宝玉の神獣だ』


あれは何かの神獣だろう。


ああ、そうか。古の神獣以外は契約者以外に言葉が伝わらないのだったな。


「って事は」


『こやつはガルリーじゃ!』


『この男がガルリーだそうだ』


つまり、あの神獣は古の神獣。鳥の姿という事はウィングバードのサンダーバード様だろう。


『これガルリー、何か話さぬか』


もはや十分すぎる程、目から入る情報で会話した気もするが……


『勇者御一行、困惑しとらんか?』


困惑する程、情報がないと言うわけでもあるまいに、ノーム様はいつもいつも不思議な事を仰られる。



「思い出したで」


「………え!?何を??」


「いや、ゲームの時はドワーフ、画面に吹き出しで訳されてた」


「ないが?」


「せやな」


何やら喋っているが、用がないなら鍛冶場に戻ろう。


そう思った矢先。


「………あー!またやってる!!!」



バン!と勢い良く扉が開くと、ワルツがお使いから戻って来たようだ。

ああ、またうるさくなるぞ。ワシは静かに作業がしたいというのに……。


そう思いながらワルツの方へと視線を投げ、お帰り、と、言葉に出したのか出さなかったのか。


「お帰りじゃないです、モノローグやめて下さい。喋ってませんよ!!」


「…………そうだったか」


ワルツの言葉に、ガルリーはやれやれと肩をすくめる。



「勇者の皆さま、申し訳ないです。ここのドワーフは基本的に空気読んで会話するところがありまして……。つまり、基本的に会話がないです」



また会話か、そう思いながらガルリーの目には琥珀色の髪の剣士がうつり、マウィーからの手紙を思い出していた。


そして、勇者御一行とワルツの会話を横目に奥へと歩き出す。


「あの男がリアだろう。ふむ。もう少しだけ微調整が必要か」


 

すっと台に一振の刀を置く。


受けとれ刀使いよ。


ん?なぜ彼らはなんのリアクションもないのか。


「お師匠。また声が出てないです」


「ん?そうか。……リアよ、お主宛だ」


刀をリアに渡すと、またもや思いもよらない言葉が返って来た。


「なんで僕がリアってわかるのさ」


刀使いはお主しかおらんだろうに…。バカじゃなきゃわかる。


ガルリーはリアの手を見て刀を軽く調整を開始。


「いきなりベタベタ触らないで欲しいんだけど」


触らずにどうやって調整するのだ、少しは察する能力を鍛えよ。


「お師匠!またモノローグ!」


「………話すのは面倒なのだが、察しの悪い奴らだ……」


「地上人のコミュニケーション方法は僕らと違うんですぅ!」


ここはドワーフの国だ。

その国で地上のコミュニケーションを求めんでくれんか。


「おーしーしょーー!!」


「地上の者は不便だな」


ガルリーは、深く「はぁ」と溜め息を一つ。


見てわからぬ事は聞いてもわからぬだろう、そうは思ったが……またワルツに言われては面倒なので控える。


包みの中にあった封の開いた手紙をリアへと渡した。


「それはマサムネ。城塞都市からお主にだ」


この一振は、少しだけ心が揺さぶられた良い品だ


できれば、ワシもこういう逸品を世に出したいと思える程。


「城塞都市………、これ、マウィーから?」



━拝啓、そろそろ夏の終わりも訪れる今日《こんにち》━

━ワンダの皆さまはいかにお過ごしでしょうか?━


マウィーの手紙を読み上げ、そしてさすがに察したのか。


リアは調整されたマサムネを受け取り、引き抜いて2、3度振って見せる。


ふむ。調整はこれで良さそうだ。


「……返しに、行かなきゃならなくなっちゃったじゃないか」


美しい流れるような所作で刀を鞘に


装備していた刀をアイテムボックスへと入れると、マサムネを腰へ


「責任重大だな、お互い」


鷲亜人の持つトライデントにふと視線を投げる。


そうか、持ち主は彼になったのか………。


ならばあの日……、幾年か前の記憶をたどるガルリーに…


「……僕が、刀を持ってたからリアだと気付いたのはわかったけど、地上でそんな事したら嫌われるから気をつけなよ」


やれやれ、ワシは地上になど出ぬというに、勇者御一行とは“面白い”ことをいうものだな。


「わわわ、本当にすみませんすみません!」


慌ててペコペコと頭を下げるワルツ。


「あはは、本当素直じゃないんだから……。ワルツ、気にしないで」


そう言ったシゲを上から下までみる。腰の聖剣が目にはいった。


なるほど。こやつが勇者だな。


ガルリーはすっとシゲに向き直り、無言で右手をさしのべる。


「………ん?」


さて、さっさと聖剣を研いで静かな日々を取り戻すとするか。


アザリアスから連絡は受けている。


「………」


差し出した手は、何故か勇者の右手に包まれる事となる。


なんだ?聖剣を渡す前の儀式か何かか??


「………」


そのまますっと無言で手が離れ……


さすがのガルリーも声が出た。


「何をしておる」


「…え?よろしくの握手じゃないの?」


「なんの話だ。聖剣を出せと言うたのじゃ」


驚く勇者に……


ああ、これが文化の違いか………


少しだけわかった瞬間だった。





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