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勇者に転生したけど理不尽だ  作者: 甘味好き
邪神へ続く道
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ジェダ・ハンネ・アウゼンハイドEP3





「………死ぬかと思った」


突如割れた地面。


「ヨルムンガンドが暴れたせいだろう、地盤が緩んだのか……」


「…………………え?」


声がした隣を見る。3回ほど。見間違いではないようだ。


謎の空洞にジェダと二人きりというやや気まずい状況。

もうこれで二人きりは3回目だ。


いや、待って、なんでジェダも一緒に落ちて……


【皇国の貴公子・ジェダが一時加入しました】


「またかよ!!」


その文字と同時に勝手に開くステータス画面。

レベル115と表示されているが、あの時とはもう心持ちが違う。


「ワンダの更に下があったとは……」


見上げればそこそこ落ちたらしく。自力で登るのは厳しそうだ。


上は人が落ちるくらいの隙間だが、空洞辺りは薄暗くてよくみえないが、広い空洞のような感じになっているらしく。


座り込むシゲとは裏腹に……、ジェダは辺りを見て回っている。


「ジェダ。君は……どうして諦めないの?」


周りを真剣に調べているジェダに、つい、そんな言葉がついてでた。


どうせこのあと、救出されるのに。


「(救出されたあとは?回る国はあと2つ……)」


なら、どうせ闘うことになるんじゃないの?


クリスタルの騎士は揃った


なら、ジェダはどうせ味方にならない


頭を巡る、沢山のどうせ、どうせ、どうせという言葉。


「……卿は、何かを諦めたのか?」


「諦め……どうだろ。うーん。諦めたのかな」


「クリスタルの勇者が、何を諦めたのか。少し興味がある。今この瞬間の話ではあるまい?」


「それ。それだよ。目が覚めて、いきなり世界を救え、クリスタルの勇者だ。ツッコミ入れるだろ?」


死んだと言われた事もしばらくは諦めきれなかった。

なんとか元の世界に戻る方法を探して、この世界に馴れるのだってほぼ諦めだ。


「“クリスタルを救え”って言葉だけで、アホみたいに旅してヤバいのと闘わさせられてさ」


元の世界が良いか悪いかで言えばこの世界とは違う意味で地獄だった。

今みたいに仲間に恵まれてなんていないし、ブラック企業だったし、正直良い環境なんかじゃない。


「死と隣り合わせの旅だよ?元の生活に戻りたいって思うだろ?」


悪態を言うくらい。

少し反抗するくらい。

自分の好きな道へ行ってみるくらい。


「わかってた、、わかってたんだ……」


それすらも勇者だから、ゲームのストーリーだからと修正をされなきゃならない。


「ワンダがああなることは。たまたま、今回は違っただけで……」


それ以外の道はないと言われ、誰もが皆“正しい”と信じて疑わない。


そして…どうせ、決められたストーリーだと


その上に成り立つ、様々な犠牲は……もう二度と戻ってはこないのに……



「どうせこれは、とか。どうせ何々とか。そう思う事ばっかで」



そう、どうせこれだって…

ただのストーリーの追加エピソードの一つに過ぎないんだよな。


彼だってどうせ……。


ああ、もうこんな自分が嫌になる。


「でもさ、諦めたら意外と楽になったんだよね」


「諦めが楽に繋がるのか?」


「“だってこの世界はこうだから”」


ああ、ゲームの登場人物に俺は何を言ってんだか。

 


「(違う、ジェダは……、登場人物なんかじゃない……)」

 


わかっていても、時々そう思わないと割りきれない。


ふと視線を上げれば真摯な顔で話を聞くジェダと目が合った。


やっぱこの男、恐ろしいくらいの美形だ。


「目から鱗、と、言ってしまえば良いのか」


「え?」


「卿は我にいつも…、新しい感情を教えてくれる」


「……そんなこと」


すっと正面に腰をおろし、アイテムボックスから焚き火セットを取り出して目が点状態のシゲに御構い無く、鍋を火にかけ食材をぶっこんでいく。


「なに。“どうせ助けが来る”のだ。ゆっくりするのも悪くないと思ってな」


「………料理まで出来るのかよ」


「嗜む程度には」


「あんたの欠点どこよ」


眉目秀麗、文武両道、聖人君子、身長でも小さけりゃと思ったが190はある上に8~9頭身。敵キャラ?くらいしか欠点が見当たらない。


「あるぞ?」


いや、敵キャラなのかも謎だけど。


「いや、絶対ないだろ」


「部下には欠点がない事が欠点だと言われたよ」


「言いたくなる気持ちわかるわ~」


「そう言う卿は…」


「シゲ。シゲで良いよ」


「そうか。なら、我もハンネと呼んでくれ」


出来たと渡された白いシチューのような物が入った器。

相変わらず料理の時間の概念ぶっ飛んでる。


「…………」


「これはアウゼンハイド皇国の伝統料理でな」


これは絶対に目の錯覚だ。

静止画で【ドラゴンシチュー】なんて文字が見えるけど、錯覚通り越してバグにちがいない。


「ドラコンシチューだ」


「とんでもねぇ伝統料理だな…」


「ははは。よく言われるよ」


あ、声出して笑うんだ。キリッとしていた表情は今はなく、眉間に寄っていた皺もない。


完全にリラックス状態なのかなんなのか。

いちお、たぶん俺って敵?なんだけどな、なんて思う程には彼から威圧感もなくなっていた。


「(ジェダは……やっぱり…敵なんだろうか……)」


そうだよ。

皇国が敵なら……、ジェダともそのうち……。


「アウゼンハイド領は遥か昔から飛龍モンスターが多くてな。民に害する飛龍が出れば皇国の聖騎手が退治しにいき、その亡骸を持ち帰り皆で食べていたのが始まりと聞く」


「俺の国にも、、料理には歴史があったな。飽食の時代過ぎて、なんか忘れガチだったわ」


「ルビーの国の伝統料理は確か…」


ぱっと浮かんだ知らない料理。ああ、本当に嫌(やん)なるよ。


「日本だよ。日本。俺の育った国は」


キョトンとした目でシゲの言葉を聞いたジェダ。


彼ほどの教養があれば“日本”という名前がこの星に存在していないのはわかるだろう。


まぁ、“どうせ”言ったってなかった事にされるんだ。


「にほんか。にほん国の食べ物はどんな物なのだ?」


そう思ってたのに。胸がじわじわと熱くなる。


どうして…、そんな国はないって言わないの?


「……俺の、、国の…」


そこまで言ってから言葉が出ない。


死んだ、ゲームに転生、気がつけばこんな所まで来た。


“日本への帰り方”を聞いたし調べたが「そんな国は存在しない」「帰る方法などない」その現実だけが肩にのし掛かった。



━━バハムートだって、諦めろって言ったんだぞ━━



「ないって、、言わねーの?」


シゲの絞り出した声と……


ふっと笑うジェダ


「何故?君の生まれ育った国なのだろう?」


そうだよ、モンスターなんて出ないし、剣も魔法もない。

広大なフィールドを歩くことも、お尻にダメージを受ける馬車に乗る必要もない。


「……我の知らぬ国だ。どんな国なのか、興味は尽きない」


日本は、戦争はもう…うん十年ない、平和になった国だよ……


だけど……その言葉は、言えなかった


「ここと、そんなに変わらないよ」


「一度、訪れてみたいものだ」


「バハムートは置いてきてよ?ドラゴンは存在してないからさ。大パニックになっちゃう」


自衛隊?

映画みたいに他国の軍用機がでばってきちゃう?


どの機体でも、バハムートに勝てそうにはないけど…。


「飛龍はいないのか、残念だったなバハムート」


「いない、というか……。存在してない、かな?」


存在してない……その言葉は、いつも心に闇を落とす。


 

「ハンネ、君は考えた事ある?」

 


その言葉を言ってはいけないんじゃないか


と、何度も何度も思った


だから、凍慈にも聞いたことはない


 

「目の前の人間が、もし違う何か、だったら?って」

 


ムービーでは勝手にしゃべっている自分。


時々勝手にストーリーを決めてしまう自分。


その“真実”はとても理不尽な事なのではないかと思いはじめた自分。


 

「我は我が見た目の前の人間を信じる」

 


彼は今後、敵対するかもしれない……。

もしかするとこの後、闘う相手かも知れない。


凍慈から“あんま仲良くならん方が良い”のアドバイスで察したじゃないか。

無視しちゃって、そうなったら後でまた苦しい気持ちになってしまうのに。


 

「……仲間になってよ」

 


すっと出た言葉

いや、無意識で発していたと言っても良い


 

「………って、何言ってんだ」

 


クリスタルの騎士は、もう揃ってるっていうのに……。


遠くが騒がしくなってきたのに気が付いたのか、すっと立ち上がり近くに置いた槍を手にするジェダ。


「その問いに答えを出すことは、、出来ない」


だよな、と踵を返したジェダの背に言う。


踏み出そうとした足が、一度だけ止まった。



「勇者シゲ。卿はあの日…、我に……戻らない事を教えてくれた」



━━もし、過去に戻れるなら━━



あの日の洞窟でのジェダからの問いが…


何故か鮮明に思い起こされる…


あの日の答えは、今聞かれても……答えは変わらないだろう



「幼き立ち止まっていた少年は、もう立ち止まる事はしない」



いや、ちょっとだけ揺らぐかも知れない……


でも……もう……、この世界を知ってしまったから…


 

「それを教えてくれたのは、シゲ。君だ」

 


美しい金の髪が隙間風に揺れる


新海のような瞳は、ただ静かにシゲを見つめた



なぁ、ジェダ。

俺の回答は、そんな大層な答えじゃなかっただろ?


なのに、自然とシゲもその場から立ち上がり、ジェダを見つめ返していた。


 

「俺も……、最後まで歩くよ」

 


「なれば、そなたとは道は違えど行き着く先は同じ。その時こそ…、我が槍をそなたに預ける」

 


ああ、やっぱあんた、めちゃくちゃカッコいいよ。





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