聖剣復活
「お、おおし、お師匠さま……」
真っ青になった全員をガルリーはちらりとみて、ゆっくりと言葉を紡ぐ
「だから、オリハルコンを取りに行かせたのだ」
「?」
「研ぎ石があるのに、オリハルコンだと言えばわかるかと思ったが……」
アザリアスに貰ったマナの砥石だけじゃ足りない、って思ったけど、あれ?違う感じ……?
「あ、本当ですね。って、モノローグだからわかりません!」
再び面倒臭そうな表情をしたガルリー。
それはなんとなくわかるようになったぞ!
「聖剣を、作り直す為に必要だった」
「せ、聖剣を……作り直す?そ、そんな事可能なのですか?」
ジェダの背後、巨大な銀の飛龍は顔を持ち上げる
『可能だ。全ての宝玉と神獣が揃えばな』
集まった騎士達は宝玉を取り出し、ガルリーの鍛冶場を明るく照らす。
「俺たち……宝玉は……」
「忘れたのか?」
ガルリーも奥から雑にアンバーの宝玉を持ってきて、雑にドンと地面へ。
ノームが何やら言っているが無視?して、クリスタルを指差す。
「クリスタルの騎士のクリスタルは、宝玉と同じだったろう?」
「あ!」
鍛冶場を囲むように置かれた12の宝玉
神獣と騎士がその隣へと並び、宝玉を触ると各宝玉は光を放つ
『火を起こす木や木炭は私が』
ドリアードがギッシリと木炭を詰め込む
『火は俺様がやろう。この作業、懐かしいな』
ファフニールが火を吹き込めば、一気に真っ赤に燃え上がる
『風の調節はオイラにお任せ!』
ジンはふいごのように風を送り込み、徐々に高温へ
「さて、とりかかるか」
『オリハルコンは切っておいた』
いつの間にかオーディンにより細かく切られたオリハルコンは、高温の中で一気に溶けて行く
『鍛冶の鎚はわしの出番じゃ!』
『水は私が』
ウンディーネの満たす水
『その下の氷は我か。うむ。女神と作ったのを思い出すな』
その下へフェンリルの氷が敷き詰められ……
『ルナの台座をお使い下さい』
カンカンと鳴り響く音
サンダーバードの雷が時折光り…
『…そこの若造』
バハムートがおもむろに起き上がると、ワルツの懐へと視線を投げる。
「は、はい!?」
『聖剣の柄は、何で出来ているか知っているか?』
「え?いえ……」
『ヨルムンガンドの鱗だ』
「!!」
くるん!とカーバンクルが現れると、ヨルムンガンドの鱗に光をあて、それをバハムートが柄に形造る。
『最後に、神獣全ての祝福を』
ウンディーネが満たす水の中から、聖剣を取り出す
掲げれば透き通り、太陽の光を反射する
その光は辺りをいっそう明るくさせ、剣にはマナが満ちる
「……」
ガルリーの瞳から、一粒の涙が落ちた
「良い剣だ」
静かにそう言って微笑むと、シゲに手渡される
「ワシがやれる事は……、もうない」
「ありがとう、ガルリー」
受け取った聖剣を手に、勝手に体は聖剣をくるっと回して正中に掲げていた
その場に揃う、12人の騎士はシゲへと片膝をついて頭を下げた
「や、やめてよ」
慌てるシゲと、そしてゆっくりと近付くオルス。
「……」
「わってますよ、ガルリー」
「なら、良い」
え?何言ってるかわかったの?
「彼とは、それなりに付き合いが長いので」
そう言って微笑む神官は、シゲへ【ライトリアスへの通行証明書】と書かれた紙を差し出した。
「聖剣は、まだ完全ではありません」
「……え!?」
「マナの女神様の加護を受けて、はじめて聖剣となります」
すっと指差す先には、空を突き抜ける巨大なマナの木が。
「ライトリアスのオルランドで、皆様をお待ちしております」
「……わかった」
巨大な乗り物に乗ると、オルスは空へと去って行った。
「でも、ワンダ……」
ふと振り返った先のワンダは、アウゼンハイドの攻撃で壊された箇所が散見される。
「……このままなのは」
「あーもーー!こっちもオレが手伝ってやるから、間抜け面はさっさと次に行け!」
話の腰を折るようにトリトルがシゲの背中をバン!と叩いた。
まだ俺、間抜け面なのか、相変わらずだなトリトル。
「にゃ!?なら私も手伝うにゃ~!」
「え?ニャウィーも?な、なら……私も」
「……マウィーはこんなアホ面にかまってないで、城塞都市の復興頑張んなよ」
はぁと溜め息をついて、マウィーの言葉に横やりをするリア。
「……なんだとこの陰湿顔」
「アホ面くんは年上への口の聞き方を知らないのかな?」
完全に睨み会うトリトルとリア……。
あれ……、あの二人、気が合うと思ったけどそうでもないんだな……。
「我は……、どうやら……」
落ちていた皇国軍が持っていた旗を拾い上げてる
「帰還して……、父上と話さねばならないようだ」
そのまま違う方角の空を見つめるジェダ
その瞳の先は……、恐らく皇国アウゼンハイドだ。
「残るは、ライトリアスと……皇国アウゼンハイドか」
「先に、マナの木に行くから…、次はライトリアスだよね」
マナの女神様の近くに行くの、緊張する~とアリアは笑う。
「では」
「あ、待ってジェダ」
「?」
「バハムートと、話をしたいんだけど……」
「だそうだ」
そう言った瞬間、どこからともなくバハムートがジェダの背後に姿を見せる。
『ない。去れ』
え?にべもないんだが?
なんならまだ何も言ってませんが??
「バハムート」
ジェダの言葉に少しだけ耳を向けたが、シゲの方へは全く顔を見せる素振りもない。
「話を聞くくらいは良いだろう?」
『断る』
「あの、時間は取らさないので……」
ここで聞くのも、なんだか気が引ける内容だし。
『既に貴重な時間が経過している』
『………神獣の王たるバハムートが、なんたる狭量』
オーディンが姿を見せると、バハムートを鼻で笑う。
待って待って待って、オーディン険悪ムードにならないで。
『貴様が世に言えたことか』
『………我がアザリアスは彼を勇者と認めた。なればこそ、我は勇者についたのだ。それがわからぬほど耄碌したか』
『黙れ』
『そして、お主の主であるジェダも認めておろう』
その言葉を聞いた瞬間
バハムートの目が真っ赤に光る
『黙らねばその減らず口、今ここで捻ってくれよう』
『まだ我より強いつもりでいるのか、バハムートよ』
バチっとにらみ合う。
ジェダが間にすっと入り、バハムートへ向き直る
「バハムート、あの日彼が聖剣を抜いた瞬間…」
『我が愛し子よ。それはマナの女神の気紛れに過ぎぬ。本来の勇者は、お主だったというのに』
ジェダの言葉を最後まで言わせる事を嫌ったのか、かぶせるように言い放つ。
冷たい谷風が吹き抜ける。
“前回までは勇者は宝玉の騎士の誰かから”
バハムートにしたら、そりゃ……いきなり変わりますなんて……
「受け入れられないよな…」
ジェダの視線は、そう呟いたシゲの言葉が終わるよりも速かった
「……ならばバハムート。我とはここまでだ」
「!?」
『!?』
『!?』
シゲとオーディンとバハムートがジェダを見つめると、ジェダは銀の槍をくるっと回して地面に突き刺した。
「……我が槍が誓うは平和と安寧、そしてマナの女神。マナの女神の思し召しが受け入れられないような神獣王に、我は使えた覚えはない」
『………』
吹き抜けた風がジェダの金色の髪を揺らし、耳の両剣水晶は太陽の光を受けて煌々と煌めく。
『………何の用だ、仮初めの勇者よ』
ふっと笑ったジェダは、気を利かせてか…その場から遠ざかって行く。
「………………日本」
『………』
「…異世界?って言うのかな。そういう違う世界からの行き来……みたいな記録って、ありますか?」
頼む、小さな小さな心の声は……
『………』
「訪れた人がいる、とか…」
言葉を紡ぐ度に大きくなっていく……
『………』
「何でも良いんです、、聞いた事、ないですか?」
━━頼む…、あると言ってくれ━━
『…………諦めろ』
頭上から降り注いだ、たった3文字のその言葉は……全身を貫いた
「……ライトリアスの……」
『世が知らぬ事を、知る場所などない。時間の無駄だ』
息をする事を、忘れたのではないか……
それくらい、全身がフリーズした……
『………』
その姿を見たバハムートは、一瞬だけ
目を細めて神獣の言葉を放ち、くるっと踵を返す
「(………なにか、違う聞き方を、、だめだ、頭が回らない…)」
『だが……』
その瞬間……、再びバハムートはシゲを見下ろした
『邪神を退治すれば、マナの女神は本来のお力を取り戻される。あるいは……。まぁ……あまり期待せぬことだ』
少しだけ、刺々しさのなくなった声
離れているジェダへとバハムートは去っていった
「そっか……。やっぱり……ダメだったか……」
でも、まだ希望がないわけじゃない……。
街の外にはジェダ隊が整列していて、もう帰ろうとしていた
「シゲ、前も言うたけどな。龍騎士とはあんま仲良くならん方が…」
凍慈の言葉を聞き流し、わかったわかったと慌ててジェダの方へと向き直る。
「……お礼、言わなきゃ」
そう言ってジェダへと一歩踏み出し走り出した、その瞬間…
「…………ん?」
足元から聞こえた、ピシッという不思議な音と同時
「んんん??」
足元が、一気に崩れて……落ちた
「……嘘でしょ?」




