聖剣復活への道⑦
抜け道を走り抜ける
大きな音は近付き、襲って来ていたモンスターは…
気が付けば皇国兵士へ
「……やっぱり、皇国はワンダに……」
行く前にはなかった、ワンダの遥か頭上
大地の裂け目から太陽の光が差し込んでいる
「遅かったか」
シゲが呟いた、その視線の先
その裂け目からは皇国兵がワンダへと降りて行くのが遠目からでも確認出来た。
「待って、何かおかしい……」
視力の良いリアが、大地の裂け目をじっと凝視する
「間違いない。皇国兵は撤退している」
「完全に、手遅れってこと?」
巨大なワンダの大門は開いたまま、そこからワンダへと入れば……
真っ先に飛び込んできた、その光景
「海流一閃」
碧い槍を持つ色黒の青年が、波を起こして皇国兵へ突っ込んでいく後ろ姿だった
「まっかせるっニャー!」
最後方で踊るニャウィーはシゲたちに気付いたのか、一度だけウィンクをして
「合体技!海流の激流!にゃ~」
前線では細腕で軽々とバルディッシュを振り回すマウィー
甲冑を着た皇国兵が軽々と宙を舞う
『聞いてない、聞いてないぞ!!』
ワンダの広間には巨大なモンスターが鎮座し、皇国兵士をけしかけ続けるがなしのつぶてだ
「私の出番は、必要なさそうですね」
「あ、あ、あの、あの方は」
その声の主は、見知らぬ神官だった
しかし、セピアが一気に動揺している
「え?知り合い?」
「光の聖都・ライトリアスの大神官にして、宝玉パールを守護するウィプスの騎士さ。ちなみに、大神官最高位。僕はあまり好きじゃない」
リア、そもそも君が好きな人間はいるのか?
両手で足りそうだけど……
「おや、自己紹介は不要になりましたか」
にこっと微笑む爽やかイケメン。
宝玉の騎士って、顔も基準にされてそうだな……
「は?まだ1000人くらい残ってるんだからオッサンも参加しろよ」
「オルス大神官に、な、なんて口を!」
セピアが見たことないくらい、あわあわしていて何だか可愛い。
アリアはなんだかニコニコ?ニヤニヤ?しているが……どうしたんだろうか…??
「怪我をしたドワーフ達を任せた」
その一言を発した人物に、釘付けになる
その声は……背後からだった
蹄の音が鳴り響き
そのままその音は…
シゲ達の隣を通り過ぎた
漆黒の馬上、その両手に持った透明の剣を構える
その姿はまるで……
「来い、オーディン!!」
シゲのクリスタルが真紫にカッと光り
アザリアスが駆けると同時にオーディンがその姿をみせる
『やれやれ、相も変わらず人使いの荒い騎士だ』
そう、文句を一つ
「斬滅の一閃」
おびただしい数の皇国兵は、アザリアスとオーディンの合体技により、一瞬にして後方へと吹きとばされた
「盾はなくなったぞ、ムーンビーストよ」
『そんなバカな事があるはずない…。騎士が、、一堂に揃うだと?自国の守りを、、放棄して?』
【月の宝玉から解放されし邪神の腹心・ムーンビースト】があらわれましたというテロップ
「この国には、その価値がある」
アザリアスはそう言って、遥か天空を見上げた
「石盤は把握していたからな。ガルリーにはもちろん。私が各国へ連絡をして、呼び掛けた。無策でいるほど、人は馬鹿ではないぞ」
あの日、廊下でアザリアスが、巨大な真っ黒い鳥の首の筒に、手紙を入れて解き放ったシーン思い出す。
「聖剣を仕上げるのにも…騎士が必要になるし、ちょうど良かった」
『聖剣など復活させん。今ここで全員消し炭にしてくれる』
ムーンビーストの咆哮が轟いた、その瞬間
「全く、あれも相変わらず到着が遅いな」
未だ、アザリアスは天空を見上げたまま
全員が釣られるように上を見上げようとしたその瞬間
視界に、キラッと何かが煌めき…
「撃墜旋」
ムーンビーストと呼ばれたモンスター目掛けて一直線に落ちる
その一撃のもと、ムーンビーストは弾けとび、
地面に刺さった槍の上に立つ美青年は何事もなかったかのように槍から降りる。
ダメージ表記も何もないまま………
【ボス早期撃破ボーナス・ムーンビーストの心核】
【ボス早期撃破ボーナス・経験値+5%】
【ボス早期撃破ボーナス・獲得金+5%】
「………」
「………」
「………」
「………」
全員、言葉を失っている。わかる。俺もだったから。
アザリアスだけは笑っているが、いや、引くよ、ドン引きするよ。
「消し炭になれたし、本望だよね」
リア、君はなんて事を言うんだ…
あ、でも今ちょっと目をそらしたぞ…
「………逃げたら良かったであろうに、なぜ戦おうとしたのか」
ガルーダ、それは言ったらダメだよ!
上空から化けもんが降ってくるなんて誰も思わないよ!!
「ジェダ!ここで会ったが100年目!!覚悟しろ!!」
トリトル、何を言い出すかと思えば、まだそんな事言ってたのか!?
今の見てなかったの!?無理だって!!
「にゃっ!?落ち着くにゃ~!」
突っ込んで行こうとするのをニャウィーに止められ、しかし、ジェダは意に介さない。
「…勇者よ、久しいな。なんだ?やつれたか?」
違うよ、ツッコミに忙し……
「だめだ、ツッコミする人が足りない!!」
天井が吹き飛んだガルリーの鍛冶場に全員が集まり、ワルツの出したお茶を飲む……。
12の騎士が勢揃いした形になった。しかし、メンツが強すぎる……。
「あ、お師匠様!こちらがオリハルコンになります!」
「ワシは、聖剣を研いでくる」
「………お願いします」
その言葉を聞いたアザリアスは、ちらっと聖剣を見て……
「我々も、そろそろ準備せねばなるまい」
「?」
その言葉を言い終わるかどうか。
いや、ガルリーが聖剣を持ち上げた、その瞬間だった
「……………今、寿命が来たか」
ピシッパキッという音と亀裂、そしてボロっと聖剣は崩れ落ちた
「う、うそ……」
あれだけ手にして嬉しくなかったその剣だったのに……。
何故だろう。今は、絶望的な気持ちになった……。




