聖剣復活への道②
地下を歩く
足音は反響し、薄暗い道は少しだけ不気味だ
壁にかけられた松明の火が先へと続く
「……そういえば、ワルツが“ここのドワーフは”って言ってたけど、ドワーフの国はほかにもあるの?」
「今は、東側と西側にワンダの国があります」
その言葉を聞いた凍慈が、何かを思い出したように声を出した。
「……あー、、そういや2と3で北と南のワンダの国は…」
「随分と物知りなんですね」
ニコッと笑うワルツ。
過去作の話は会話に出ても、知っている人と知らない人で反応が違う。
「……凍慈」
「しもた」
知識を知らなければ彼等には聞こえないみたいだったが…
やっぱり、知っていたら聞こえるんだな。
「私は初耳だ」
「アルヴィーの本にはなかったけど……」
セピアは少しだけ興味深く耳を傾け、ガルーダやリアもワルツへ視線を投げる。
「龍神王様は……、やはりお書きになりませんでしたか…」
そう言って笑うワルツ。
「アルヴィーが……書き忘れたとか?」
━━金竜銀竜の話は、意図的に書かれてなかった?━━
その疑問がふいに思い起こされる。
「……ワンダには、古い伝記がいくつかあり、石盤に刻まれている物もあります」
こっそりリアがいつも付けている日記を取り出したのは、突っ込まないでおこう。
「昔、昔。初代勇者の時にはワンダは地上にありました」
━地上のワンダ、勇者御一行に聖剣を授けるなり━
━邪神、その技術を恐ろしく思い、ワンダを滅ぼすなり━
━技術を持つ4人のドワーフの王、東西南北、邪神の目の届かぬ地下へと姿を隠すなり━
━2代目勇者の聖剣研ぎし北ワンダは邪神に見つかり滅ぶなり━
━3代目勇者の聖剣研ぎし南ワンダは邪神に見つかり滅ぶなり━
━聖剣を研いではならぬ、聖剣はワンダを滅ぼす魔剣なり━
シゲたちの足は完全にその場に釘付けになったかのように、歩みが止まった。
「……凍慈、本当なの?」
「……………ほんまの事や。過去作、毎回ワンダは……消滅しとる」
どうして教えてくれなかったんだ!!
その言葉をぐっと飲み込んで軽く凍慈を睨み、シゲはワルツへと駆け寄る。
「帰ろう、ワルツ」
「どうしてですか?」
きょとんとした顔でシゲを見ると、無邪気な笑顔が返って来た。
「だってワンダが」
「確かに、勇者の聖剣を研いだワンダは滅んだかも知れません。でも、滅ばないかも知れないでしょう?」
「ガルリー殿は、知っているのか?」
ガルーダの問いかけに、ワルツは少しだけ曇った表情を見せる。
「存じ上げています」
「どうして……」
「引き受けたのか?」
先を歩くワルツの歩みは止まらない。
「お師匠様のお気持ちを僕が察するのは烏滸がましいですが……。ドワーフとは、そういう性分なのです」
だから、もう少しだけ声に出してほしいなぁ……。
ワルツの小さな小さな囁きは、暗い洞窟へと吸い込まれていく。
「さぁ、もう少しでアンバーの谷の入り口ですよ!ちゃちゃっとオリハルコンを見つけて……帰りましょう」
むっとした表情のシゲに、凍慈は悪かったと言って近づいて来た。
「知ってたんだろ?」
「石盤は知らんけど、滅んだのは知ってた」
「………何で教えなかった?」
「聖剣を、研ぎに行かんって言うと思ったからや」
「当たり前だろ、一つの国が滅びるんだぞ?」
「だから、教えんかったんや。クリアするには、道はそこしかないんやから」
まだ、そんな事を言うのか……凍慈。
こんなにもリアルな世界を体験して…、それでもなお、、ここはゲームの世界だからって言いたいのか……。
「そんなの、間違ってる」
例え、凍慈の言うようにゲームの中だとしても
「失って良い命なんてない」
凍慈は一瞬だけ黙って……
「それでも不都合やと思ったら、俺は教えへんで」
そう言葉を絞り出した。
「……不都合、か」
近くにいたリアが、耳を髪にかける仕草を取る。
「……だからアルヴィーは、ワンダの事を書かなかったんだね」
振り返ったリアの瞳はどこか、悲しげだった。
「ど、どうして?」
「一番の功労者を滅ぼした原因が聖剣だなんて、英雄譚には相応しくないだろ?」
言葉に言い表す事の出来ない何かが…、胸にずしりと重くのし掛かった
「相応しいって…なんだろうな」
シゲが見下ろす視線の先……
腰にさした聖剣……
それが今だけは…
血塗られた何かに感じた……




