聖剣復活への道 ①
聖剣を欲しがっていたガルリーに握手するという辱しめをやや引き摺りつつ。
「聖剣と預かってた砥石です」
聖剣とアザリアスから渡されたマナの砥石を渡すと、ガルリーは少しだけ眺め、ゆっくりと鍛冶場へと向かう。
「……大丈夫です。ああみえてお師匠、腕だけは良いですから」
ニコッと笑うワルツだったが、少しだけ引きつった笑顔に見えたのは気のせいだったのか…。
「凍慈とガルリー、足して2で割ったらちょうど良い気がする……」
「アホ言うな!足して割ったらマイナスや!!無口の関西人とか誰がみたいねん!!」
やっぱり無口方が勝つのか……。
いや、静かな凍慈もみてみたいけど……察しろはキツイ気もしてきた…。
「あ、僕も似たような事をお師匠によく言われます!僕の場合はその辺の石ですけども!」
何気にそれは酷くないか!?
いや、この国のドワーフの話さなさ具合をみたら、黙れってことなのか。
「石の静かさを学べ、って、そりゃ石なんだから静かに決まってるじゃないですか~」
頬を膨らませてみせるワルツと。
「そりゃそうやで。むちゃくちゃ言いよんな。人間喋ってなんぼやで~」
と、軽い凍慈。数々のデリカシーのない発言が脳裏を過り……。
いや、俺はガルリーの気持ちが少しだけわかるぞ、少しだけな。
「……なんや」
「……なんでも」
そんな会話をしていると、ガルリーが奥から姿を見せる。
「……」
再び戻って来たガルリーは、やはり何も言わなかった……。
「早かったね」
「まぁ、研ぐのは一から作るわけちゃうしな」
台に置かれた聖剣。先ほどとあまり変わりはないように見える。
やっぱりか、小さく呟いたワルツは、少しだけ肩を落とした。
「……」
「……」
「……」
ワルツが何も言わないところをみると、ガルリーは伝える言葉を考えているようにも見えた。
「……結論から言うと」
ようやく口を開いたけど……なんだって?
「結論から!?」
「工程を言ったらお主らわかるのか?」
鋭いツッコミに、全員うっと閉口した。
まぁ、聞いても確かにわからない、、かも……。
「だとしてもお師匠、言い方ー!」
「……結論だが。聖剣は寿命だ」
「………え?」
「…………研いでもどうにもならん」
「ま、待って待って…」
「どうやってこの剣が誕生し、どうやって今まで持ったのか。もはや奇跡じゃ」
その言葉は、全員の声を失わせるには十分な効果があった。
「ワシ程度のドワーフでは、マナの女神様のお力にはなれん」
「じゃ、じゃあ……聖剣は……」
絞り出した言葉を聞き、しかしガルリーは躊躇う事なく言葉を紡ぎだした。
「…………………諦めろ」
そう言って立ち去ろうとしたガルリー
「お師匠様が、聖剣を修復すれば良いじゃないですか」
ワルツは再びニコッと笑って、本をいくつか取り出した。
「…………聞いとらんかったか、ワルツ」
「聞いてました。聖剣は、過去でも修復されています」
リアが持っていたのと同じ、【勇者と邪神退治の旅】のタイトルが書かれた本だ。
「……」
「ノームの騎士の手によって」
「……」
ノームもガルリーに何かを言っているが、彼からは何のリアクションもみられない。
「……」
けれど、少しだけ本へと視線を投げて、ゆっくりと口を開く。
「聖剣は、必要なんだな?」
「……邪神を退治するには、聖剣が必要だとマナの女神様は仰っています」
アリアの言葉を聞いて、ガルリーは再び考えはじめる。
「さっさと引退しとくべきだったな」
そう呟くと、表情に変化のなかったガルリーは……
少しだけ笑っていた
「……いや、若いのに背負わせるにゃちと荷が重いか」
無口のドワーフから漏れたであろう本音は、心にズシッと重たくのし掛かった。
「……ワシがやれる事は、延命に過ぎん。この旅が終われば…女神に新たな一振を所望しておくんだな」
「ありがとうございます」
責任重大な事を頼んでしまった事を考えると、ありがとうなんて言葉では足りない気がしたからだろうか。
その感謝の言葉は、少しだけ声量は小さかった。
「……ワルツ」
「え、あ、はい」
「次代の騎士に初任務だ。勇者御一行に同行し、“オリハルコン”をアンバーの谷から持って来るように」
「……え!?お師匠は!?」
「……」
その返事はなく、くるっと踵を返し再び鍛冶場へと向かう
「仕事が沢山あるって、、もう!わかりましたよぅ!」
「……何言ってるかわかるの、凄いね……」
「まぁ、同じドワーフですから」
あはは、と笑ったワルツ。
「……お師匠。あの、行って来ます」
「……」
ちらりと一度だけワルツを見て、再び鍛冶場にはカンカンと鉄を叩く音が響き渡る。
そのワルツ横顔は、とても不安そうだった
「……だ、大丈夫!勇者一行が君を全力で守るからさ!」
「はい、足引っ張らないよう、がんばります!」
そう言ったワルツを、ガルリーだけは笑って見送った
シーンと静まり返る鍛冶場
「……そんなヤワにゃ鍛えとらん」
ガルリーのその呟きは、少しだけ大きく響いた。
『素直じゃないやつめ。わしもワルツと一緒に行くからな!』
「……」
『行くからな?』
「……」
『な?』
「……」
『なんで黙るんじゃーー!!』




