ワンダと職人ガルリー 後編
道中の露天にも、沢山のアクセサリーや武器などの店があった。
「あとで寄る?」
「掘り出し物がありそうだよね?」
アリアとセピアは女子トークで盛り上がり、ガルーダは店の近くまで歩いては下見をしている。
「……まぁ、この前のオルブラッド城で結構貯まったし、ちょっとくらいはえーんちゃう?」
「凍慈は食材買い込みしたいだけだろ」
「あ、バレた?」
そんな雑談をしながら市場の喧騒を通り抜けて、少しだけ離れた、比較的静かな場所にある家の前に。
《ガルリーの鍛冶場》と書かれた家をノックして入ると、カンカンと鉄を叩く音が部屋に響き渡っていた。
「鉄と、熱……」
むわっとした熱気のこもる部屋。
そして、話し声がする奥へと行くと、一人のドワーフが姿を見せる。
「あの、ガルリーさんですか?」
「………」
待って、待って、嘘だろ?
一抹の不安は的中しそうな勢いだ。
『○✕□○✕!』
突如ドワーフの背後から姿を見せた、髭を蓄えた……いや、ほぼ髭の何か。
『……○○!✕□○✕!』
『そやつはノーム。琥珀の宝玉の神獣だ』
サンダーバードがガルーダの肩に止まると通訳をしてくれた。助かった……。
いや、うん、ありがとう。
「って事は」
『○○○○!』
『この男がガルリーだそうだ』
【無口なアンバーの騎士・ガルリー】のテロップ。
いや、もっとはやく出してくれ!!
「………」
無口にもほどがあるだろっ!この国の人たち!
かたや、ノームはずっとガルリーに向かって喋り続けているけど……いや、逆にしてくれないだろうか?
「思い出したで」
「………え!?何を??」
「いや、ゲームの時はドワーフ、画面に吹き出しで訳されてた」
「ないが?」
「せやな」
理不尽!!
「………あー!またやってる!!!」
バン!と勢い良く扉が開くと、若そうな?ドワーフが飛び込んで来た。
「………」
「お帰りじゃないです、モノローグやめて下さい。喋ってませんよ!!」
「…………そうだったか」
ようやく口を開いたガルリーは、やれやれと肩をすくめた。
「勇者の皆さま、申し訳ないです。ここのドワーフは基本的に空気読んで会話するところがありまして……。つまり、基本的に会話がないです」
それってまさか……、今まで俺たちこの国の人たちから空気読めない奴らだと思われていたんだろうか……?
アザリアスもその辺りの情報くれよ!!
「あー、えっと。僕はワルツ。ガルリー殿の一番弟子です!」
「よろしく」
もう、喋ってくれるなら誰でも良いよ……
「………」
再びガルリーは無言で奥へと行くと、何かの包みを持って帰ってくる。
「………」
その中から、すっと台に置かれた一振の刀
「お師匠。また声が出てないです」
「ん?そうか。……リアよ、お主宛だ」
迷うことなくその刀はリアに渡される
「なんで僕がリアってわかるのさ」
当たってるんだからそんな事言わなくても良いだろ、というツッコミを入れる暇もなく、ガルリーはリアの手を見て刀を軽く調整する。
「いきなりベタベタ触らないで欲しいんだけど」
「………」
「お師匠!またモノローグ!」
「………話すのは面倒なのだが、察しの悪い奴らだ……」
「地上人のコミュニケーション方法は僕らと違うんですぅ!」
「………」
「おーしーしょーー!!」
「地上の者は不便だな」
ガルリーは、深く「はぁ」と溜め息を一つ。
そして包みの中にあった封の開いた手紙をリアへ。
「それはマサムネ。城塞都市からお主にだ」
「城塞都市………、これ、マウィーから?」
━拝啓、そろそろ夏の終わりも訪れる今日━
━ワンダの皆さまはいかにお過ごしでしょうか?━
その一文から始まった細く美しい字には、勇者一行の尽力とリアが復興の手伝いに月の民を派遣させた事、そのお礼に【宝刀・マサムネ】を調整し、勇者一行がワンダを訪れた際に、リアという剣士に渡して欲しいと書き綴られていた。
背後では凍慈が「マジか!?刀の最強武器やん!」と情緒もなくはしゃいでいる。
見なかったことにして、リアは調整されたマサムネを受け取り、引き抜いて2、3度振って見せる。
「……返しに、行かなきゃならなくなっちゃったじゃないか」
美しい流れるような所作で刀を鞘に
装備していた刀をアイテムボックスへと入れると、マサムネを腰へ
「責任重大だな、お互い」
そう笑って言うガルーダを軽く睨み付け、トライデントにふいと視線を投げる。
「……僕が、刀を持ってたからリアだと気付いたのはわかったけど、地上でそんな事したら嫌われるから気をつけなよ」
「………」
「わわわ、本当にすみませんすみません!」
慌ててペコペコと頭を下げるワルツ。
「あはは、本当素直じゃないんだから……。ワルツ、気にしないで」
そう言ったシゲを上から下までみると、 ガルリーはすっとシゲに向き直り、無言で右手をさしのべる。
「………ん?」
なんだろう?
「………」
「………」
癖でそのまま右手を出して握手をしてしまう。
ガルリーのゴツゴツした職人の手に、言葉に出来ない感動を覚える。
「………」
そのまますっと無言で手が離れ……
「何をしておる」
あれ?違った?
「…え?よろしくの握手じゃないの?」
「なんの話だ。聖剣を出せと言うたのじゃ」
うん。そりゃそうか。
ワンダには聖剣を研ぎに来たんだもんな……。
喋ってくれーー!!!




