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勇者に転生したけど理不尽だ  作者: 甘味好き
邪神へ続く道
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ワンダへと続く道で……



今、シゲは過去最大のピンチを迎えていた



「お尻がっ、壊れる!!」



シゲの魂の叫びは、少し大きめの石に乗り上げた車輪が、ドン!と着地した瞬間、ピークを迎えた。


「フェンリル出して!!」


ガタガタと舗装など一切されていない道を走る馬車。


「まだだいぶマシだよ?」


「流石、オルブラッドの高級馬車といったところかしら?」


呆れ顔のリアに、しれっとしているセピア


ノーダメージ感しかないガルーダと、むしろ普段どんな馬車に乗ってるんだ…。



「ケツの鍛えられかたがちゃうって事か!?」


もちろん、凍慈はこっちサイドだ。いや、良かった……。

凍慈まで「痛くないで~」とか言い出したらどうしようかと思った……。


「ケツの鍛えられ方……、なんだか嫌な響きだな」


「いや、そこはツッコむところや…… 」


「アリアも平気そう……」


「えっとね、実は…、プロテスでガードしてるんだ……」



てへっと笑うアリア


それ、俺にも下さい!!!




「~♪」


「シゲ、ご機嫌だね?」


鼻歌交じりのシゲを覗き込むアリア。


「え?そう?」


出発の時


ネプチューンから聞いた話が、少しだけシゲの気持ちを軽くしていた。


 


『トリトルは……元気ですか?』


『ああ、今はエント復興に脚しげく通っている』


『エント復興…。エント…無事だったんだ……』


『聖女が宝玉を強化して下さったおかげだ』


良かった…。

あの日ニャウィーだけを帰宅させた事、少しだけ気にしていたから……


この選択は正しかったのかとか。そんな……後悔のような。


『ニャウィー殿に……』


『え?』


『大事な事を、思い出させて貰った』


そう言うと、ネプチューンは海岸の方へと歩きだす。


『………勇者の行方に、マナの加護があらん事を』


気がつくと、もうネプチューンは揺れる水面を残し、海の中へと姿を消していた……。



「去り際まで親子でそっくりやったな」


「あはは、不器用な所もね」



ふと、振り返る……


ニャウィー、マウィー、雪月花、アザリアス


仲間にならなかった人たちのその後は、知らないところで動いていて……



「(やっぱり……、ここだってちゃんとした現実なんだよな)」


「どないした?」


「いや、なんでもないよ」



再び、ガタン!と激しい下半身への衝撃はなかった事には出来ないけれど……。



「……そういえばさ、皆は邪神退治が終わって平和になったら……どうするの?」


凍慈と俺は……元の世界になんとしてでも帰るとして……。



「私は、村の復興かな。聖女の降り立つ村を…残さないと」


アリアの眼差しはどこか、窓の外から遠くを見ていた


そっか、そりゃそうだよな……。


「…………私は」


ふと目が合ったセピアはどこか、困惑していた。


「平和が、わからないんだ……」



その言葉の衝撃は、中々なものだった……



「生まれた時には、邪神が復活していたでしょ?5歳で、ファフニール様に次代の騎士だと言われて、7歳の時には騎士学校だ」


肩を、すくめて笑うと


平和か……と、小さく呟いた


「平和の為に戦っているのに、平和を知らない。不思議でしょ?」


「僕も……、いや、僕らは皆知らないよ」


「……でも、邪神退治が終わったら、ゆっくり考えるのも悪くないとは思ってるわ」


そう言って笑ったセピア


その二人を見るガルーダの目は……少しだけ細くなった


「私は、騎士を全うし、ウィングバードの皇太子として、その後は国を支えるつもりだ」


うん。ガルーダらしい答えだな、そう思った矢先……


「かっった」


リア、、本当に君って奴は……


凍慈かリアかくらいの空気クラッシャーだな


「そういうリアは?」


「……僕は、龍神王だから」


すっと髪を耳にかける仕草と、隠された角を触る仕草と。


うん。もう、わかるよリア……。


「あるんだ、やりたいこと……」


「……………地図」


ボソッと呟いた一言


「正確な世界地図がないから。それを……書いてみたかった」


それは今、叶ってるんだけどね、そう言うと馬車のキッチンへと歩きだす。


あの時の「世界地図」の言葉の意味がようやくわかった。

そっか、リアは……世界地図を書きたかったのか……。


「クリスタルの騎士に選ばれて、夢が叶ったって事やろ?良かったやん」


「良くないよ。僕だけ、夢が叶ってるんだ。ズルいよね」



その一言は雷が落ちたような衝撃だったと……


そう言えば良いのか……



「夢が叶う事が、ズルい?」


「僕たちが生きて帰れる保証なんてどこにもないんだよ。そんな中、僕だけが……やりたい夢を叶えてる。これがズルじゃないなら、なんだって言うのさ」


彼等は一体、どれだけの不穏の中を生きてきたんだろうか……


返す言葉につまった、その瞬間……



「そんなもん、対価に決まっとるやん」



珍しく、凍慈は真剣な顔をしてリアを見つめて……



「リアが書いたダンジョンの図面は…、今後誰かの役に立つんやし。勇者一行《おれら》か、その後の誰かか。もしくは攻略サイトやな」


「おい凍慈、最後だけ余計だぞ」


でも、少しだけリアの表情は柔らかくなっていて……



「誰かの……役に……」


「そうだよ、実際ベヒーモスの所は助かったよね」


そう笑っていうアリアと、頷くセピア。



「誰も……、リア。君にそんな事を思う者はいない。君以外は」



そう言ってガルーダはリアが運んで来たお茶を一口含む



「……それでも僕は、」


「じゃあ、こうしよ!俺がリアに依頼」


シゲは紙を取り出して、手書きでささっと依頼書を作成


「勇者シゲよりリアに、これからの旅で地図を所望する、どう?」


ふっと笑って、そしていつものリアの顔に戻る


「やだね」


「え!?」


「……僕の地図は、僕があとで見返す用。旅が、終わって、僕が……もしかしたら本を書くかもしれない。その時に使うかも知れないだろ?」


「……残念だなー」


リアの口から出た、本を書くという言葉


彼の中では大きな変化だっただろう


「10万ルートくらいなら引き受けるよ」


「たっっか!!勇者割は?」


「ない」


そう言ったリアの口許は、少しだけほころぶ



「(夢の一つ、叶える事も負い目を感じなきゃならないなんて……)」



そう思うと……

やっぱり、この世界は理不尽だ……



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