宵闇から暁へ
「何か、方法は?」
動く足場は下に落ちて、帰り道となる橋はない
「鍵穴は?」
「こっちには、ない」
「……間違ってたって事?」
【間違った道は奈落の底へ。正しき道は帰り道】
「……ファフニールやサンダーバードに乗せてもらう、とか?」
「その2体はでかすぎる。横が足りん。フェンリル!」
凍慈がクリスタルを握りしめると、フェンリルがすっと姿を見せる。
「飛び越えれるか?」
その言葉に、距離を確認する。
「ベヒーモスが飛び越えて逃げたんや」
『問題ない』
「なら、一人づつ頼む」
「その必要はないよ」
今度はリアがクリスタルからルナを呼び出していた。
『………✕□◯◯□』
『なるほど。それなら、一度でよかろう』
「ん?なんだって?」
最近神獣と会話してて忘れていたけど…、そういえば古代の神獣以外は契約騎士以外とは会話出来ないんだった。
『△◯◯□✕!』
ルナが全員目掛けて何か技をかけた瞬間……
「え??」
ぐわんと不思議な感覚と……
目の前のフェンリルは
巨大な脚だけとなっていた
「待って!説明!説明してッッ!!」
「あ、ボディチェンジか?」
「ボディチェンジって何!?」
その瞬間、目前には巨大な口が現れる
そしてかぱっと開かれた先には並ぶドデかい牙
「ぎゃぁぁぁ!!食われるーーー!!?」
『騒がしい……』
浮いた体はモフッとした毛並みの中に埋もれる
「ルナに小さくして貰ったんだよ」
「…………なるほど」
小さくして貰った??
物理学的に、それはどういう現象だ??
いや、ファンタジーの世界にそんな事を言い出したらだめなのはわかってるけど……一言だけ言いたい
「え?サイズもかわるの??」
いや、まぁ神獣も自在にサイズ変わってはいたけど……
『しっかり掴まっていろ』
少しの振動、、そしてフェンリルが一気に飛び越える
「あれ、なんかまだ移動してる?」
その背の景色は目まぐるしく変わって行く
『急いでいるのだろう?』
「ありがとう」
上へ行く乗り物もフェンリルは足場にしてぽんぽんと軽快に飛んで渡り、あっという間に地下の入り口へ
「あ、元に戻った」
再び、ズシンと城が揺れる
「行こう!!」
慌てて外へと飛び出した、その先……
張られていた結果が大きな音を立てて壊れ、光線がいくつも城や城下町に降り注ぐ
「オルブラッドが……」
その最中を、騎馬に乗って駆け抜けるアザリアス
そして、足を引きずるベヒーモスへと剣を振り下ろした
瞬間だった
『およしになって、色男さん』
アザリアスの剣を手のひらで受け止め、微笑む美しい女性
「………ティアマト、復活していたのか」
『ユルルングルを倒したというから期待したけれど……。そう、もう、オーディンの力はないのね』
「!!」
美しい女性の背後から、ドラゴンの頭が5つ姿を見せる
いや、その女性と一体化している…といった方が良いのか…
『もう、用はないわ』
カッと5つの顔から光線が吐き出され、アザリアスが後方へと吹き飛ばされる
『ベヒーモスは復活した。引き上げるわよ』
ベヒーモスを脚で掴んで飛び立つ、その間際
シゲたちを目視した
[………こっち、見てる?]
不適な笑み、そして………
『アウゼンハイドで会いましょう、勇者一行』
頭に響いたその声と
女性はそのまま巨大な飛龍へと姿を変え、飛び去った
「………アザリアス」
跳ね橋が降りるのが永久に感じるほどだった
ほんの、5分足らずだというのに……
「シゲ殿。アザリアス殿を。我々は城下町の手伝いに回ろう」
「そうだよね。私の、回復魔法が……役に立つかも」
頷いて、アザリアスが飛ばされた方へとシゲは走り出す
「無事だったか」
その道中、アザリアスは何事もなかったようにシゲの前から歩いてやってくる…。
「……………ごめんなさい。ベヒーモス、逃がしちゃった」
すっとシゲへと視線を投げ……、おもむろに口を開いた
「あのベヒーモスが必死で逃げる姿を見たか?」
「………え?」
「あの滑稽な姿は後世まで語り継ぐべきだ、そう思わないか?」
まだ落ち込んでいるシゲにふっと笑いかけ、紙とペンをどこからともなく取り出した
「なぁに、討伐してくれるんだろう?“勇者一行”よ」
【アザリアスからの高難易度モンスター討伐依頼】というテロップがあらわれた事よりも…、高難易度モンスターの説明が入っている事なんかよりも……。
アザリアスの口から初めて…、“勇者一行”と呼ばれた嬉しさが…… 疲れを吹き飛ばした瞬間だった…
「絶対に、討伐します」
「ああ、期待している」
その足元には、夜明けが近づいてきていた…




