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店内に夕日が刺し込み窓ガラスと柱に取り付けられた鏡に反射し、更に金属やガラス製の商品にも反射して店内を幻想的に染め上げる。
閉店前のほんの僅かな時間にだけ見られる現象を店内の全ての人達が楽しみ感嘆の息を漏らした。
やがてその現象が収まり店内が薄暗くなった所で店員達に声を掛けた。
「総員配置に付けぇ!・・・・・良し!照明器具点灯!」
すべての柱の上部に取り付けられた照明の魔道具を店員達が灯して行く。
照明器具の数は少な目だが白く塗られた天井と柱の鏡のお陰で然程暗さを感じない。
どのみち直ぐに閉店になるのだ、その内照明が点いたら閉店間近だと浸透するだろう。
「まもなく閉店時間となります!御買い上げになる方は御早く願います!」
俺の一声で買うか悩んでいたお客達が一気にカウンターに押し寄せ、閉店前ラッシュとなった。
食堂では最後の一口をゆっくり味わって食べていた人達が名残惜しそうに席を立ち、口々に「又食べに来る」と言って出て行った。
最後の一人を皆で見送り入り口の鍵をかけて『閉店』と書かれた看板を立てた。
「良し!最後の一仕事だ商品の補充と、在庫と売り上げの確認と報告を頼む」
幾つかの班に別れ担当部署の補充等を行い俺の下に報告が来た。
「ん?缶詰の数が一個足りないな・・・誰か間違えたか、盗まれたか?」
「あの~オーナーが最初に空けて試食させた奴なんじゃ・・・・・」
「あ・・・あれか・・・すまんすまん。ほれ、これで合い数だ。皆ご苦労さん、飯にしよう」
収納から缶詰を出して店員に渡し労いの言葉をかけて夕食に。
食後のお茶をを楽しんでいる時、皆に明日以降の話をした。
「皆聞いてくれ。先ずは今日の営業は特に問題なく・・・陛下一行の事は置いといて・・・問題なく終わったのは諸君らのお陰だ。明日からも宜しく頼む。その明日からの事だが俺はあまり来られなくなるから何か有ったら店長や兵士達を頼る事。それと一番注意して欲しいのは休日だ。特に女性陣は出歩く際は出来るだけ複数で裏通りは使わない様にして帰りも遅くならない様に。他にも商品の横流しなどの話をしてくる奴がいると思うが・・・・・やりたきゃやれ・・・地の果てまで追い詰めて死んだ方がマシだって目に遭わせてやるから楽しみにしとけ。後、移籍は自由だからここより条件が良い所が有れば何時でも移籍して構わん。何か質問は?」
「何か怖い事さらっと言いましたよね・・・・・まぁ良いです。営業とは関係ないんですけど、僕の部屋広すぎて落ち着かないんで引っ越しても良いですか?」
「ダメに決まってんだろ。元聖堂騎士が住んでるってだけで犯罪抑止力になってんだよ。嫌がらせにしたって仕掛けてくるのは真夜中だろうけどな」
「やっぱり来ますよね・・・・・特に正面の商会が裏から手を回して来そうですけど、大丈夫なんですか?特に火事とか」
「ん?ああ火事の心配は無いな。木造に見えるけど中身は鉄骨だ。木の部分は燃えにくい圧縮木材を不燃性の樹脂で覆ってるから大量に油を撒かなきゃ碌に火もつかんし直ぐ消える。それと正面の商会の事は気にするな、直ぐにそれ所じゃ無くなる」
「え?まだ何か仕掛けて有るんですか?」
「いや、俺は何もしてないし、するつもりも無いが・・・あの仕事の早いジェラルドが何時までも放って置くとは思えないんでな。まぁ言う為れば奴の自業自得って所だ」
「なんだか良く解りませんけど気にしなくて良いなら、それで」
「部屋が広いのは先を見越しての事だ。これから縁談が沢山舞い込んで来るって解って無いだろお前」
「えっ!そうなんですか!?縁談って、僕まだ二十一歳ですよ。結婚とか早いですって」
「そりゃ日本人の感覚でだろ。こっちじゃ十五歳で成人なんだ遅い位じゃねぇの?その辺どうよ皆」
「あ、私は十八から二十歳までには結婚したいです!今十六歳ですけど同じ歳の友達で結婚してる人も居るし恋人とか普通に居ますよ・・・・・私は居ないけど・・・・・」
「それみろ、こっちじゃこれが普通なんだよ・・・なんなら紹介してやろうか・・・エリーゼ殿下を」
「いや、マジで勘弁して下さい。って言うか普通に振られますよ、何かパンドラさんに固執してたみたいですし」
「ああ・・・今思い出しても腹が立つ・・・・・女性の顔面を全力で殴りたいと思ったのは生まれて初めてだ・・・・・やらんけど。まぁ人の恋愛に口を挟む気は無いが、変な女に引っかかって店の商品や売り上げに手を付ける様な真似だけはすんなよ」
「ははは・・・死んだ方がマシって目には遭いたくありませんから大丈夫ですよ」
「それじゃ、俺は帰る。後は頼んだぜ店長」
そう言い残して転移でガーランド家に帰ると何故かジェラルドが食堂で酒を飲んでいた。
「おお、帰ったか、パンドラ殿。今日購入した新しい酒を試させて貰ってるよ。どの酒も良いが、この日本酒と言うのが一番気に入ったのでまた買いに行かせるとしよう」
「なんだ、旨いつまみが欲しくなってエリクの事を連れて帰る気にでもなったか?それより陛下達の事だ、何で止めなかった?あんたなら止められただろ」
「ふぅ・・・・・出来る訳なかろう・・・昨日から楽しみしていたのだぞ。陛下は連日遅くまで書類仕事をこなして時間を作っていたのだ、止められる訳が無い」
「そこまでして来る意味が解らねぇよ」
「だから、楽しみにしていたと言ったであろう・・・・・陛下が気兼ね無く話せる相手など・・・そなたしか居らんのだ。すまないと思うが偶の事だ付き合って貰えんか」
「はぁ・・・・・解ったよ。王様なんてやってりゃ碌に自由も無いって事か・・・・・だが、あれは何だ?幾らなんでも酷すぎるだろ。冗談抜きで嫌がらせかと思ったぞ」
「ん?あれとは・・・・・ああ、エリーゼ殿下の事か・・・私の方にも以前から何度も『御茶会』と言う名目で殿下から打診が来ておってな、忙しいからと断り続けていたのだが今日の事を嗅ぎ付けて・・・と言う訳だ」
「あんたの差し金じゃないなら良い・・・・・いや、良くないけど。何にしても豪い目に有ったぜ。初対面なのに求婚してくるし、人の話は聞かない上に断っても必死に食い下がってきやがって・・・・・あ~また腹が立ってきた」
「ああ・・・そなたには初対面であっても殿下にとっては違うぞ。初めて城に来た時、中庭で貴族の令嬢達と御茶会をして居ったのだ。城門を突破して城内で啖呵を切った様を見て運命を感じたらしい」
「はぁ?!何だそりゃ!?あれ見て運命をとか、かなりヤバイだろ!実はメンヘラとかヤンデレでストーカーになって四六時中付き纏わられるんじゃねぇだろうな・・・・・」
「は?めん・・・何だ?何を言ったのか解らんのだが。付き纏うのは無理であろう。護衛を撒いて城を抜け出すのは無茶が過ぎると言うものだ・・・・・が、否定は出来んか・・・・・近衛達には言い含めておこう」
「ああ、この国の為にもそうしてくれ。それで、酒のつまみを目当てに来ただけじゃないんだろ。本題は?」
「ああ、レンフォール家の家宅捜査の結果が出たので知らせに来た。騎士団に充てられた予算を使って色々と遣っておってな。関係者の中に例の商会とその傘下の商会も有ったのだ。明日、日の出と共に会頭と副会頭の自宅を含めた商会の施設を一斉捜査する事となった」
「そりゃまた大規模になりそうだな。エリクの件も有るから裏家業とも繋がりが有るだろうし、きっちり遣ってくれ。但し、殺すなよ。資産没収位にしとけ」
「む、投獄も無しか?それでは刑が軽すぎるであろう。ミゲイルの時もそうであったが、ちと優し過ぎるのではないか?」
「ああ、裏家業の奴等は好きにして構わないぜ、だが商人はだめだ。あんたがそう思うのは仕方ないが・・・・・商人が罪を犯して罰せられるってのは信用が無くなるって事で取引する奴は居なくなる。しかも資産没収となれば再起は略不可能で他に才能が有る訳でもない・・・・・殺しちまったら税も取れないしな。奴等は生きながらにして地獄を味わい続ける事になるのさ」
「なるほどな・・・・・精々国の為に足掻き続けて貰うとしようか。後はそなたの明日の予定も聞いた。各国から参られる人数なのだが共の者を含めて十人前後にして貰えるよう伝えて貰えるか」
「そいつはかなり少ないが・・・・・ケイオスなんか一人でも来そうだな。まぁ俺が転移で連れて来るんだ、十人以上は運べないとか言えば良いだろ。ケイオスは三日前、教皇は二日前に連れて来る。後、国民に百三十年前に『暴君アースラ』を倒し魔属領を平和に導いた英雄としてケイオスの事を正式に発表するのを忘れない様に頼むぜ」
「うむ、それと前日に顔合わせと事前打ち合わせを行なうので、そなたにも参加を願いたい」
「顔合わせか・・・・・いっその事御前試合なんてどうだ?王国最強の騎士対聖堂騎士最強の使徒とか面白そうだろ。後は・・・ケイオスの部下対俺の部下なんてのも良いかもしれんな」
「ほう・・・それは面白そうだな・・・流石パンドラ殿だ。前日の昼前に御前試合、昼食会を挟んで打ち合わせか・・・・・それで予定を組もう。先方にはその様に伝えて貰えるか」
「お、良いのか?負けたら拙いんじゃねぇの?」
「その心配は要らん。魔族が相手ならまだしも、人族であの男に勝てる者など居らんよ。治癒術士を用意するので治癒しきれない怪我や殺めない限り何をしても良い事にしよう。実戦に近い程その力量も解るという物だしな」
「そいつはたいした自信だな。まぁ誰を出すのかは予想出来るが、良いのか?切り札みたいなもんだろ」
「フッ・・・・・我が国の力を見せ付ける絶好の機会だ、叩ける時に叩いておかねばな。それでは宜しく頼んだぞ」
そう言って宰相が帰った後、明日は二人の所以外にも憑依阻止の対策も試さなくてはならず、上手く行くと良いがと溜息を付いた。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




