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翌朝、朝食を取った後ハンスの村へと向かった。奴の憑依に対する防衛作を試すためだ。
ハンスの村に着き周囲を見渡すと丸太を抱えて走る二人の姿が見えた。
「お、やってるな。お~い!ケントく~ん!」
俺の声が聞こえていないのか、二人共どんどんと遠ざかって行く。
「しゃあねぇなぁ・・・転移!・・・よう!おはよう二人共!頑張ってるねぇ」
「おぉ!何だよ急に出てくるなよ!吃驚すんだろ!」
「・・・パンドラさん・・・ハァハァ・・・おはよう・・・御座います・・・・・」
「ちょっとケント君に用が有ってな。試してみたい事が有るんだが・・・正直、どうなるか解らない・・・だから断っても良い。ただ、君にとって必要な事でこれが失敗しても他の方法を探さないとならないんだ。俺としても人体実験なんて遣りたくない。だが、今はこれ以外の方法を思いつかないんだ。どうする?」
「・・・・・プッ・・・パンドラさんでも自信が無いなんて事が有るんですね。驚きました。不確かな事でも試さなきゃいけない程に時間が無いって事なんですよね?だったら遣るしかない、でしょ」
「ちょっと見ない間に良い顔する様になったな・・・・・解った、両手を前に出してくれ」
ケントが前に出した両手を軽く握り、これから遣る事の説明をした。
「これからこの手を通して君に属性付与を行なう。生物に付与なんてした事が無いし、他の生物で試した所で君に出来なければ意味が無いから君で試す。無理をする必要は無い・・・危険を感じたらこの手を振り払ってくれ」
「ちょ、ちょっと待て!お前自分が何言ってんのか解ってんのか!」
「重々承知の上だ。だが、今直ぐにでも必要になるかもしれない措置なんだ」
「白井さん、心配要りませんよ。パンドラさんが失敗するなんて有り得ません」
「お、お前・・・・・あ~解った・・・そこまで言うなら、これ以上何も言わねぇよ」
「有難う御座います、白井さん。それじゃ、始めてください」
ケントの声に頷き両手から魔力を流して行きケントの全身をを包み込む。
「・・・・・行くぞ・・・属性付与!」
ケントの全身を覆った俺の魔力がケントの体内へと浸透し始めるとケントは「ガァッ!」っと短い呻き声を上げ、額から汗を流し歯を食い縛り耐え続け、俺の手を離す事は無かった。
全ての魔力が体内へと入り込むとケントの身体が一瞬薄黒く染まった。
「終わったか・・・・・どうだケント君、身体に違和感は無いか?」
「・・・ええ・・・・・何でしょうこれ・・・・・違和感は・・・有ります・・・でも、これは・・・・・ああ・・・そうか・・・僕、魔法が使える様になったんだ・・・・・」
「・・・ふぅ・・・・・良かった、成功したみたいだな。まだ身体が慣れてないだろうから暫くは無理はしない様に。白井君、君から見て異変が有ったら安静にさせてガーランド家まで連絡してくれ」
「あ、ああ・・・解った・・・・・ケント、午前中は休んどけ。何か有ってからじゃ遅せぇからな」
「はい、でも大丈夫だと思いますけどね」
後はこのまま闇属性が定着してくれればと思いながら魔王城改めドラグーン城へと飛んだ。
城門前に居る鰐の様な衛兵にケイオスへ取次ぎを頼むと、そのまま城の中に通され入り口の傍にいた侍女に謁見の間まで案内された。
「よう、調印式の日程が決まったんで知らせに来たぜ」
「ほう、それは楽しみだ。ビブリエ教国の方は参加するのであろうな」
「勿論だ。調印式は十九日後だ。その三日前の朝に迎えに来るから準備しておいてくれ。連れて行くのは十人迄だ」
「フッ・・・・・我がそんな大人数で行くなど有り得ん。行くのは我と元帥に将軍の三人だけだ」
「流石に一人で行くとは言わないか・・・こっちはその方が助かるんだが、此処の守りは良いのか?」
「構わん。取られたら取り返せば良いだけだ。で、助かるとは何だ?」
「調印式前日に王城ベルトラの訓練場で御前試合をやる予定になっている。対戦内容はベルトラン王国騎士団の上位二名対聖堂騎士団の上位二名、そして・・・・・俺の部下二名対あんたの部下二名だ」
「・・・ククク・・・・・ハハハハハ!それは面白そうだ。フェイル!アリューズ!遠慮は要らん全力で遣れ!」
「「ハッ!」」
「そう来なくっちゃな。一様治癒術士は用意するが治せない様な怪我は負わせない事、勿論殺すのも無しだ。それ以外は魔法でも何でも有りって事で宜しく」
「しかし良いのか?そなたの部下が負ければ教国や他の国が調子付くのではないか?」
「ははは・・・その言葉そっくりそのままお返しするぜ。一対一ならまだしも、あの二人が組んで勝てる奴なんて俺とあんた・・・・・後は奴・・・位しかいねぇよ」
「戴した自信だ、当日を楽しみにしておこう。他には何か有るか?」
「入場時に王都内を一周する。先代魔王『暴君アースラ』を倒し魔族を救った英雄としての御披露目だ。乗り物はこっちで用意するから心配すんな」
「見世物にされるのは好かぬが・・・・・魔王と呼ばれし我が英雄か・・・・・物は言い様だな・・・ハハハ」
「それではケイオス陛下、五名で手続きをしておきます。失礼致します」
丁寧な口調をしつつ口元には挑戦的な笑みを浮かべたまま一礼し、教国へと飛ぶ。
教国の北門は修理されていたが詰め所は無く更地だった。
俺の姿を確認すると門番達は慌てて門の左右に整列し、槍を捧げ持って礼を尽くしてきた。
「ベルトラン王国全権大使、パンドラ殿に敬礼!」
「おいおい、そこまで遣らんでも・・・・・」
「先日は大変申し訳有りませんでした!あの時対応した門番と上官は懲戒処分と致しましたので如何かご容赦を!」
「いや、俺もちょっと遣りすぎたと思ってんだ、終わった事だしそこまで気を使わなくて良いぜ」
「寛大な御言葉に感謝致します。只今馬車のご用意を致しますので少々お待ち下さい。おい!馬車の用意だ!猊下への先触れもだ!急げ!」
此処まで対応が変わると怖い物が有るなと思いながらも、自分の攻撃が一切効かない相手が居たらどうだろう何て事を考えていた。
大聖堂に着くと神官達に案内されて教皇執務室に通され調印式までの流れを説明した。
「って事なんだけど、こっちは何人連れて行く?ケイオスん所は五名なんだが、十名迄は良いそうだ」
「ご、五名とは・・・・・それはまた随分と思い切った物だ・・・・・自分の命が狙われると思っていない・・・・・いや、何が有っても返り討ちに出来ると言う自信からの事か」
「まぁな、元帥と将軍達を連れて行くって言うから城の守りは良いのかって聞いたら、取られたら取り返せば良いだとよ。実際あいつを倒せるのは俺と自称神だけだしな」
「ふむ・・・・・此処で大人数を率いて行っては国の威信に係わるな。あちらに習って此方も五名としよう」
「パンドラ殿、私は御前試合の相手が気になるのだが『王家の懐剣』が出て来るのか?」
「は?誰だそりゃ?そんな二つ名持ってる奴が居たのか?」
「何だ知らなかったのか。救国の英雄の子孫、マークス・ガーランド男爵殿の事だ。守備隊員時代から騎士団長のレンフォール伯爵殿が一度も勝った事が無いと言う話しは有名だぞ」
「ほ~そりゃ面白い話が聞けたな。誰が出るかは明言されてないが俺もマークスが出ると思ってたんだよなぁ」
「一度手合わせをしてみたかったんだ・・・確か私と歳が近かった筈だしな」
「私はパンドラ殿の部下二名の方が気になるな。将軍二人を相手にどれだけ善戦出来るのか興味がある」
「個々の戦力は向こうが上だが勝つのはうちだ。まぁ当日を楽しみにしとけ。あ、楽しみと言えばお二人さんに土産が有るんだ・・・・・ほれ、味噌と醤油にソースだ。王都の俺の店でも売ってるから時間が有ったら寄ってくれ」
「・・・・・良い匂いだ・・・・・懐かしいな・・・日本に居た頃の記憶が蘇る・・・・・有難うパンドラ殿」
「ああ・・・部活帰りに寄った定食屋のおばちゃん元気かなぁ・・・・・」
目尻に涙を浮かべ思い出に浸る二人を置いてその場を辞去し、ガーランド家へと帰った。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




