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店内へと戻りお客の対応を暫く続けた後、表通り側の窓から外を眺めてニヤニヤと黒い笑みを浮かべる俺に玄田が話しかけてきた。
「パンドラさんさっきから何を見てニヤニヤしてるんです?何か怖いんですけど・・・・・」
「いやぁ・・・あの醜い豚野郎の顔が更に醜く歪んでいると思うと・・・ついな・・・・・」
「え?誰の事です?パンドラさんがそんな言い方するなんて余程の事だと思うんですけど・・・・・」
「ああ、正面の大商会の会頭の事だよ。今頃、会員総出で慌てて対処してんだと思うと笑いが止まらねぇよ・・・ククククク・・・・・」
「な、何をしたんですか・・・・・迂闊な真似をするとは思えませんけど・・・拙いんじゃないですか?」
「・・・フフフ・・・何も・・・俺は直接何もしちゃいない・・・ククク・・・しいて言うならこの店の存在その物が物理的に影響を及ぼしているのさ・・・・・ハハハハハ!」
笑いながら店の奥へと歩いていく俺を背に、玄田は窓の向こうに見える巨大な商業施設に眼を向けた。
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パンドラの箱の正面に有る店舗の一階奥に有る応接室では、会頭と副会頭が国内で突如売れる見込みの無くなった塩の在庫をどう処分するかの打ち合わせをしていた。
「昨日、南東の農村から戻った者達の話しでは、これから買う事になっている商会以下の値段でなければ買う事は出来ないと言われたそうです・・・・・」
「くそっ!・・・・・最早国内で捌く事は無理か・・・・・多少値を下げてでも早急に捌かねば噂を聞きつけて他国でも売れなくなるぞ!」
「ですが量が量ですし・・・全て捌くのは難しいですよね・・・・・」
そこへ店員が慌てて駆け込んで来た。
「会頭!大変です!店内が急に暗く!照明器具の使用許可を下さい!」
「何を言っている?今日の天気で今頃から照明などいらんだろう」
「か、影が!影がこの店を覆い始めているんです!このままでは直ぐに三階まで覆われてしまいます!使用許可を!」
「か、影だと・・・・・まさか!」
慌てて部屋を飛び出し、暗くなった店内を抜けて表通りへ出ると逆光で黒く染まった巨大な建物を見上げた。
「・・・やられた・・・・・店舗は二階部分だけだ、売り上げに影響など然程出ないと・・・見た目での客引きの為だとばかり・・・・・ギリッ・・・これが狙いか!この為だけに必要以上に高い建物にしたと言うのかぁ!」
「か、会頭どう致しましょう・・・・・」
「・・・クッ・・・・・自然現象に苦情など言えんだろうが!照明器具を使え!魔道具からだ!油の消費を出来るだけ抑えろ!あの若造め!覚えていろ!」
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「と、まぁそう言う訳で、本来なら寮と店舗を別にすれば三階建てで済む所を一つにした上に、女子寮の部屋数を増やして使うつもりの無い俺達の部屋と展望風呂を作って六階建てにしたって訳。日照権なんて概念すら存在しないこの世界ならではの嫌がらせだ。塩が国内で売れなくなった上に高価な油を昼過ぎから使わにゃならんとか・・・ククク・・・俺だったら損害が大きくなる前に移転を考えるね」
「ひ、酷すぎる・・・良くこんな事思いつきますね・・・・・ほんと、敵に回すと恐ろしい人ですよ・・・・・」
「おいおい、あの豚野郎は二年以内にうちを潰すって言ったんだぜ。偶々立地条件が良かっただけでまともに商売で勝負してやってんだ、文句なんて言わせねぇよ」
「そもそも、此処までしなくても楽勝でしょうに・・・・・価格競争じゃ勝てない訳だし・・・・・同じ物が作れる様に為ったとして、幾ら位の値段に為ると思います?」
「そうだな・・・軽く三倍にはなるかな・・・・・物にもよるけど、大量生産用の設備投資と輸送費を含めた人件費を考えたらこの世界じゃそれ位は行くな。特にガラス製品は五倍じゃ効かないと思うぞ」
「そ、そんなに・・・・・それじゃ、何でこの値段で売ってるんです?もっと簡単に稼げるんじゃないですか?」
「身分の格差を無くす為・・・と言っても精神的にだけどな。少し頑張れば誰でも貴族が使う様な最高級品が買えるとなれば労働意欲も湧くし、自分達が普段使っている物が貴族が使う様な物だと知れば精神的劣等感も薄れる。個数制限をしているのは転売を防ぐ為でも有るけど『平等』で有る事を意識させる為とリピーターを増やす事が目的だ。例えば食堂の料理で缶詰になっているのが有るだろ?又食べたいけど来るのが面倒だから缶詰を買う。空き缶を売りに来た序に缶詰に無い料理を食べて別の缶詰を買って帰る。来る度に『平等』で有る事を意識させつつ売り上げにも繋がり、うちで買い物をする事が当たり前になり他で買い物をする事が減ると言う訳だ」
「そ、それって一種の洗脳なんじゃ・・・・・」
「何言ってんだ、人聞きの悪い。経営戦略と言ってくれ。うちに来るのも買うのもその人の自由だろ。俺は強制なんてしてないぜ」
「そりゃそうですけど・・・・・うちに塩を買いに来ますよね・・・・・って事は・・・・・」
「まぁそう言う事だな。俺がこの国に店を出すと決めた時点でこう為る事は決まっていた。この国・・・いや、この世界の常識をぶち壊す為の布石で奴に対する復讐の一環だ」
「悪い事じゃない・・・悪い事じゃないんだけど・・・・・釈然としないんだよなぁ・・・・・」
「だったら赤城さんと代わるか?俺はそれでも構わないぜ」
「いえ、遣ります。自分で言い出した事ですし。何より僕ではシュウさんを抑えられませんから」
「ははは・・・確かにあいつを抑えるのは難しいよな。何だかんだ言いながらも白井君も従ってるし。あいつらできてんのかね?」
「その辺良く解んないんですよね。でも、お似合いだとは思いますよ。二人共照れて否定するでしょうけど」
「同じ職場だ、ほっときゃその内くっ付くかもな」
その頃ハンスの村では赤城と白井が同時にくしゃみをしたとかしないとか・・・・・
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