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昼時の込み合う時間帯の筈だが陛下達が来たからなのか、それとも珍しい商品を物色するのに忙しいからなのか、食堂は意外と空いていた。

陛下達一行を南西の窓側の席に案内しメニューを渡す。


「あくまでも軽食屋なのでメニューの中から食べたい物を御選び下さい」


「ふむ・・・・・どれもこれも聞いた事の無い物ばかりでどれを選んで良いのやら・・・・・パンドラ殿、お勧めは何かの?」


「勿論全てです。ですが好き嫌いも有るでしょうし・・・そうですね、普段どう言った物を好まれているのかお聞かせ下さい。そこから選びましょう」


全員の好みを聴いて料理を選ぶ事に。陛下と王妃、王太子は肉で王女は魚が良いとの事。ロールパンと焼きおにぎり、目玉スープ、ポテトサラダと陛下にとんかつ、王妃に唐揚げ、王太子にハンバーグ、王女に白身魚のフライを用意した。

俺は、白米と豆腐の味噌汁に餃子と卵焼きにした。


「なるほど軽食と言うだけあって量は少な目か。スープはカップなのじゃな」


「これならスプーンを使わなくて済みますし、飲み易いですから」


陛下の「では戴くとしようか」の声に皆が食べ始めた。

皆の評価は料理と言うよりマヨネーズやタルタルソース、ウスターソース等の調味料の方に偏った。


「どれも美味であったが・・・・・このスープは格別じゃな。主な素材だけでも教えて貰えんか?」


「それは在る筋から入手した物で今はまだお教えできませんが、近い内に誰でも手に入る様に為る。と言ったら陛下ならお解かりになるかと」


「ほう、近い内にか・・・・・それは楽しみじゃな。しかし御主は良くその棒で食事が出来るのう。器用なものだ」


「これは箸と言って正しい持ち方さえ出来れば大抵の人は使える様になりますよ。それよりデザートにしましょう、うちではこちらに力を入れてますから種類も豊富ですよ」










「御主等・・・一体何時まで・・・・・幾つ食べるつもりじゃ・・・・・・・・」


「何を言っているのです陛下。此処でしか食べられ無いのですよ!滅多に外へ出る事の敵わぬ身。今食べずして何時食べると言うのです!」


「そうですよ、お父様!これ程の甘味を知らなかったとなれば社交界で恥を晒す事になります!可能な限り食していかなくてはなりません!ねぇお母様」


「ええ・・・ええ、そうです。これを知らぬとあれば王家の恥となりましょう。この味を一つ残らず覚えておかねば為りませんよ、エリーゼ」


王妃と王女の狂乱の宴は30分程続いた。


「まぁ・・・・・あれだ・・・気に入って貰えた様で何よりだよ。で、陛下俺に用が有るんじゃないの?」


「ああ、二十日後に決まった。準備期間は短いが一刻の猶予も無いとの判断じゃ」


「解った。二、三日前に連れて来るからよろしく頼むよ」


「うむ、そちらは任せてくれ。そなたには面倒をかけてばかりなのが心苦しいのだが・・・・・何も要らんと言うのだろう」


「その件はこの間言った通りだ。俺に使う金が有ったら国力を上げろ。余裕が出たら周辺諸国に諜報員を送って動向を探れ。俺一人でこの国の全てを守れると思うな」


「うむ、それは重々承知しておる。だが、そなたに報いたいのも本音なのだ。そこでだ、エリーゼはどうだ。良けれ『そこまでにしとけ』・・・・・それでは、我等は如何したら良いのか・・・・・・・・」


「あんた等が協力してくれて俺は十分助かってる。何か有ったらまた助力を頼むから、その時は宜しくって事で良いだろ」


「良くありません!私ではご不満ですか?!私の何がいけないと言うのですか!?」


「不満?大有りだな、自分一人では何も出来ない我侭な小娘なんて邪魔でしかないんだよ。俺の傍に居たいならオーガの群れに一人で立ち向かって勝てる位でなきゃ足手纏いだ」


「そ、その様な女性が居る筈有りません!断る口実だとしても酷すぎます!」


「止めよ、エリーゼ。事実、パンドラ殿の眷属のライラ殿はそなたよりも若いが魔族の将軍二人を倒しておるのだ」


「そ、そんな・・・・・私より若いって・・・パンドラ様は少女趣味なのですか・・・・・」


「そっちかよ!人聞き悪い事言うんじゃねぇ!ライラは娘とか妹みたいなもんで恋愛対象じゃねぇんだよ。それに、女に感けてる暇なんざねぇよ」


「良かった!そういった趣味でも心に決めた女性が居る訳でもないのですね!それでは全てが済み次第改めて申し込ませて頂きますので、その時は宜しくお願い致します」


「・・・・・ハハハ・・・どうやらエリーゼ殿下の頭の中はお花畑の様だ・・・・・もう一度だけ言うから良く聞け『自分一人では何も出来ない我侭な小娘なんて邪魔でしかないんだよ』・・・解ったか?理解出来ないのなら帰ってから陛下にでもじっくり説明して貰うんだな。さて、これ以上は営業妨害として出入り禁止にさせて貰う。もう十分飲み食いしただろうし、お帰り戴きましょうか」


「お、おお、そうじゃな長居し過ぎた様だ。皆は先に行ってくれ、ミランダ、ライオネル、頼んだぞ」


「え!?お母様、お兄様、何を!は、離してください!私はまだパンドラ様とお話が!やめて!引きずらないで!パンドラ様ぁ~!」


王妃と王太子に両脇を固められて後ろ向きに引きずられていく王女を一瞥もせずにカップに残ったお茶を飲み干すと陛下と向き合った。


「・・・・・で・・・あれは何だ?・・・新手の嫌がらせか?・・・・・国の存亡をかけた嫌がらせか・・・・・流石だな・・・国王陛下ともなると遣る事が壮大だ・・・ハハハハハ・・・・・」


俺が陛下の返答を待っていると血の気を失った顔をした陛下が額から滝の様な汗を流し始め、両手をテーブルの上に付いた後「ゴン!」と大きな音を立てて額をテーブルに付けて謝罪した。


「申し訳有りませんでしたぁ~!」






支払いを終えて額を赤く腫らした陛下を見送る為、外に出ると王妃と王女を乗せた馬車は既に無く、王太子が漕ぐ自転車を囲む近衛達が見えた。


「本当に乗って帰りやがった・・・・・やるな王太子・・・・・陛下・・・出入り禁止とかしないから何時までも落ち込んでんなよ」


「・・・・・おお・・・すまんな気を使わしてしまった・・・・・しかし・・・あれでは貰い手が・・・育て方を間違えたと痛感しておる・・・・・」


「まぁ大丈夫だろ王女ってだけで寄って来る奴は居るだろうし・・・・・俺は御免だが。ああ、明日は二十日後の事を知らせに行ってくる。絶対に成功させるぞ」


「うむ、今は其方に全力を傾けねばいかんな。では、帰るとしよう。出せ」


陛下の馬車を見送り表通りに伸びた店の影を見てニヤリと笑う。


「自分では何もしなくても毎日の様にか・・・・・嫌がらせってのはこうでなくっちゃな・・・ククククク・・・・・」


正面にある巨大な商業施設を横目に店内へと階段を上った。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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