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玄田達を見送った後は又忙しい日々が続いた。


教国最南端の街についた日の早朝にエリクとその妹がガーランド家にやって来た。

俺の予想通り脅されていて自宅付近に張り付いていた見張りを撒くために手薄になる時間帯を調べ、逃亡経路と馬車の手配に時間が掛かったと言う。

俺はアイリスに頼んでエリクは料理長に、妹はジェイムスに預け教育してもらう事にした。

あんな面白いおっさんでも伯爵様だし、料理人が来たと知れれば国王も料理を食べに行くだろうから最低限の礼儀作法は知っておいた方が良いだろう。


二人を預けた後、転移で教国最南端の街に入り商店を見て回り情報を仕入れる。

この町の南側では塩を、東と西に隣接する農村で米や砂糖や香辛料を作っているそうで取り敢えず海岸に向かった。


街の南側から西に向かって岸壁になっておりその上に製塩場らしき建物が幾つかあって海水を引き込んでいた。

東側は砂浜になっており、岸壁との間には桟橋があって小船が幾つか係留されていて近くで漁師らしき男達が網の手入れをしている。

更に東の方へ目をやると一人の男が海の中に膝辺りまで浸かって何かをやっているのが見え、俺はその男に近寄って行き声を掛けた。


「お~い!ハ~ンス!久しぶりだな!やっと追いついたぜ」


「お~パンドラさん!流石に早いですね。ちょっと待ってて下さい、今そちらに行きます」


俺はハンスと話をする為に浜辺にテーブルセットを出してお茶の用意をした。


「頼まれていた物は先程の海水で最後です。どうぞ検めて下さい」


俺は鞄の中身を次元収納に移しながら確認をし鞄をハンスに返した。


「おう、ご苦労さん・・・・・これで取り敢えず当面の商品は揃うな。出来ればこっちにも農場が欲しいんだが・・・・・」


「状況的に難しいですよね。一応敵国になりますし・・・ばれたら直ぐ教国に抑えられてしまいますよ」


「だよなぁ・・・ん~・・・・・・・お、あそこに有る島手に入いらねぇかな」


「あ~・・・あそこまで遠いと交通手段が有りませんよ。もし辿り着けたとしても作物を運ぶ手段がありません」


「ん?って事はもしかしてあそこは教国じゃないって事か?」


「ええ、おそらく誰も行った事無いでしょうし」


「じゃぁ俺が貰っちまうか・・・ククク・・・・・ハンス、お前はあの島の所有権がどうなってるか調べて来てくれ。俺はひとっ走りあの島調べてくるからよ」


「は?調べるってどうやって行くんです?あそこにある船じゃ半分も行かない内に魔物に引きずり込まれますよ?」


「誰が船で行くって言ったよ。ひとっ走りって言ったろ、文字通り走って行くんだよ。まぁ見てな」


俺はテーブルセットを片付けると海岸線に見える島に向かって一直線に駆け出した。


砂浜から波打ち際、そして水飛沫を上げながら海面を直走る。


水に沈まない体質が役に立つとは思わなかったと苦笑いしながら海面を走ると、背後からハンスの「えええぇぇぇ?!」と困惑した叫び声が聞こえたが気にせず走り続けると徐々に島が近づいて来た。


海上を走る事約二十分、島の北側の浜辺に到着。そのまま海岸線を走って行く。外周は東西に長く王都の二つ分以上とかなり広い。西側に丘と言うか低めの山が有り、島全体は鬱蒼とした原生林に包まれていた。

南側に河口が有ったので遡って見たが、人所か魔物にすら会わず水源まで辿り着いた。川は山の東側から島の中心に向かって流れており途中から南に曲り海へ。山の周囲も回って見たが鳥以外の動物にも会わず、他に水源もなさそうなので人は居ないと判断して島の中心付近の川辺を整地し、柵を立てて家を置いて教国の浜辺に転移で戻った。


「おわぁ!吃驚したぁ!行き成り現れないで下さいよ・・・・・何です今の?一瞬で現れましたけど。隠密系のスキルとかでそこに隠れてたとかですか?」


「違う違う、空間転移って魔法だよ。一度行った事が有る場所なら何処でも行けるんだ。それで、そっちはどうだった?」


「はぁ・・・転移魔法って存在したんですね・・・・・てっきり物語の中だけの物だと・・・海の上は走るし驚かされてばかりですよ・・・あ、予想通りあの島は誰も行った事が無いと言うか行く事の出来ない場所だそうです」


「おお!そいつは僥倖だ!喜べハンス!税金無しで作物作りたい放題だぞ!王都の開拓地と出店が一段落したらあの島を開拓して米と砂糖と香辛料の一大産地にして王都で大儲けだ!」


「おお!って、どうやって作物運ぶんです?収納鞄が有っても島から出せないんじゃ・・・・・あ、転移魔法・・・って誰でも使える様になりますかね」


「ははは・・・心配すんな。ある程度の魔力さえ持ってりゃ誰でも使える転移魔法陣が有る。そいつで王都のハンス商会と繋げば仕入先もばれる事はない!」


「す、凄い・・・・・軌道に乗れば仕入れ値も安くなるし、輸送費が要らない上に必要な時に直ぐ手に入れられるって事ですよね、それ!」


「ああ、そうだ。王都の開拓地と同じ様に商会員として扱ってやれば文句もでねぇだろ。更に転移魔法陣で王都に買い物にも行けるから王都で生活しているのと変わらねぇ。勿論転移魔法陣に見張りと制限は掛けるが悪用しなけりゃ基本自由にしよう。先ずは王都の開拓地で試験運用しようぜ」


「・・・ええ・・・はい・・・・・はい・・・良かった・・・貴方を信じて本当に良かった」


「おいおい、泣くのは早えぞ。先ずは一度王都に戻って態勢を整えてからだ」


「・・・解りました・・・私は馬で来てますので後日王都で御会いしましょう」


「何言ってんだ、一緒に転移出来るから馬連れて来な」


俺達は街の宿屋に預けてある馬と一緒に転移で王都のハンス商会へ飛んだ。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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