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ガーランド家に帰り、マークスの騎士団長就任の報告をするとジェームスの「お祝いをしましょう」の一言で昼間だと言うのに宴会となった。
食堂に料理が運ばれ従業員も含め全員が集まると、マークスの「祝いの席だ皆遠慮せずに楽しんでくれ、乾杯!」の声と共に手にした杯を呷り料理と歓談を楽しんだ。
俺は皆からのリクエストに答えて料理を追加しつつ宴は夜になるまで続いた。
深夜皆が寝静まった後に王都を抜け出し、月明かりの中南の街道を教国に向け車で直走る。
「どれだけ掛かるか解らねぇが、運良きゃハンスに追い着けるかも知れねぇな」
時折現れる魔物を狩りながら移動し、夜が明けると目印を残してガーランド家に帰った。
「それでは行って来る。引継ぎが終わり次第帰ってくるのでそれまで留守を頼む」
「皆さん御世話になりました。王都に戻って来た際には宜しくお願いします」
皆に見送られながらマークスと玄田を連れて北砦に飛ぶと何やら騒がしい。
「総隊長!玄田殿!ご無事でしたか!副隊長が今日戻らなければ魔族領に進攻すると言って聞かなくて・・・・・お戻りになられて本当に良かった」
「「「あ・・・・・」」」
俺達は気まずそうに顔を見合わせた。
「いやぁ~慕われてますなぁマークスさん。そういや、ちょっと借りるとしか言ってなかったわ・・・ははははは・・・酒でも渡して誤魔化そう」
「是非そうしてくれ。あいつの小言は長いのでな」
俺が副隊長に酒を渡しつつマークスが北砦が交易都市に変わる事を話し、会議の準備をする様にと言い付けて小言をかわす。
「上手く誤魔化せたみたいだし帰るよ。取り合えず五日後にまた来るから玄田君は引越し準備しとけよ」
そう言って王都に戻ってからは忙しかった。
昼間は開拓地の住居と王都の店舗の設計と、商品の作成に加え応募人員が殺到したハンス商会の助っ人をし、夜中は教国への移動と創造神に対抗する為のスキルを模索。
睡眠が必要無いとは言え精神的にキツイ部分はライラを愛でて癒した。
二日後、アレスとタニアの様子を見に魔の森の拠点に転移すると周囲の木々は無く、既に村が作れる位開墾が進んでいた事に驚いた。
二人が家の中に居無かったので車で捜索しようと家から出ると頭の中に声が響く。
《眷族がLV上限に達し条件を満たした為、進化を開始します》
俺は周囲を見渡し光を確認すると、急いでアレスとタニアのステータスを確認しつつ光の発した方へ駆け出した。
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種族:鬼人♂ 名前:アレス LV1
HP 1200/1200 MP 500/500
筋力:1000 体力:1300 素早さ:500 技術:400
知力:350 精神力:500 幸運:50
スキル:剣術 身体強化 言語操作 物理攻撃耐性
気配察知 投擲 状態異常耐性 高速思考 炎剣
装備:鋼のグレートソード 布の服 布のズボン
鋼の鎧 鋼の篭手 鋼の兜 鋼のブーツ
眷属契約〔契約主:パンドラ〕
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種族:サキュバス♀ 名前:タニア LV13
HP 120/120 MP 280/280
筋力:100 体力:120 素早さ:150 技術:100
知力:150 精神力:210 幸運:5
スキル:言語操作 弓術 身体強化
装備:布と鉄のワンピース ハンマーシューズ
パワーリスト パワーアンクル 複合弓 矢筒
眷属契約〔契約主:パンドラ〕
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「おいおい、アレスの奴やるじゃねぇか・・・ククククク・・・面白くなってきたぜ」
徐々に木々が近づいて来ると弓を構え周囲を警戒するタニアの足元に蹲る人影が見えてくる。
タニアが駆け寄る俺に気付いて手を振りながら声を上げた。
「ご主人様~!貴方のタニアはここですよ~!ほら、アレス様!ご主人様がいらっしゃいましたよ!進化した御姿をお見せしないと!」
アレスがゆっくりと立ち上がり、進化した姿がはっきりと見えてくる。
オーガだった頃の筋肉の塊と言った容貌は人のそれに近く変わり、身長は20cm程低くなり全体的に引き締まった体格に変わり、頭部の角はやや長くなり逆に牙は短くなっていて黒髪は肩近くまで伸び、精悍な顔付きに変わっていた。
「こりゃまた随分と男前になったじゃねぇか。気分はどうだ、アレス」
「お褒め頂有難う御座います、主殿。気分は・・・・・残念な事に余り宜しくありませんな」
「ほう、そりゃ一体どう言う訳だ」
「主殿にお作り戴いた鎧と剣が似合わなく為って仕舞いましたので」
「あ~そりゃいかんな。だがもう鎧はいらんだろ?俺と同じ様な服を用意してやるよ。で、剣はどうする?」
「・・・・・許されるのならば刀・・・と申しましたか?主殿が使っている物と似た物を戴ければ」
「ちょっと扱いにくいが、今のお前なら問題ないだろ。ちょっと待ってな、直ぐ作ってやる」
転移でハンス商会に飛び、適当に布を貰ってアレスの元に戻ると俺の着ている服のサイズ違いを作り、兜の代わりに鋼板入りの鉢巻、鉢がねを用意し刀の製作に入る。
刀身110cmで柄が40cmの大太刀を予備も含めて二本渡した。
アレスは服を着替えて刀を腰に差し、刀を鞘から抜くと刀身を眺めた後にニヤリと笑った。
「・・・・・素晴らしい・・・これで少しはライラ殿に近づけた様な気がします。有難う御座います、主殿」
「おう、これからも宜しく頼むぜ。近い内に入植者を連れてくるからそっちも頼む」
予定よりかなり早い進捗だったので畜産関係を先行するつもりだ。
「うぅ・・・・・ご主人様、あたしにもご褒美下さいよぅ・・・・・」
「お前に褒美をやると調子に乗ったりサボったりしそうなんだよなぁ・・・まぁ偶には頑張りを認めてやるか・・・・・ほれ、これで良いか」
店で売る商品として作って置いた細い鎖の先に三日月の付いたイヤリングを取り出して渡した。
「え!?ほ、本当に戴けるんですか・・・・・ありがどうございまずぅ~・・・・・」
「その程度で泣くな、鬱陶しい。それじゃ俺は戻るから・・・・・っとこれを渡しとく拠点に戻るのに使ってくれ」
耐久テストも兼ねて商品として作っておいた三輪自転車を取り出して転移で王都に戻ると忙しい日々が続くのだった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




