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重厚で豪華な装飾の施された両開きの扉を衛兵達が開けると、ジェラルドが脇に避け先を促した。
「どうぞお進み下さい。陛下がお待ちです」
扉から真っ直ぐに真紅の絨毯が敷かれ、その先に豪華な椅子に座った四十歳位の男と、その右隣には騎士らしき男が居た。
絨毯の両脇の少し離れた所には槍を携えた衛兵が十人ずつ並んでいて、更に壁際に豪華な衣装を纏った貴族達と護衛の兵が並んでいた。
俺は真っ直ぐに歩きながら魔王城を思い出して、何処も似た様なもんだなと苦笑いしながら玉座の5m程手前で止まり、後ろから付いて来たジェラルドにマークスからの手紙を渡した。
ジェラルドが国王の左隣に並び、俺からの手紙を国王に渡すと右隣に居る騎士が声を上げた。
「国王陛下の御前だ、控えよ」
俺はその声を無視して国王が手紙を読み終えるのを待った。
「我はベルトラン王国国王、アスタル・ベルトラムである。ガーランド家の名代大儀であった。パンドラ殿、城門での事については謝罪しよう。それからマークス北方防衛総隊長からの報告書確かに読ませて貰った・・・が、ここに書いて有る事は本当か?」
「自己紹介は要らないみたいだな。城門では盛大な御出迎え痛み入るって事で。後、俺はその手紙の内容は知らされて無いんで何とも言えんかな」
「そう言って貰えると助かる・・・手紙の内容は簡潔に述べると、この国を救う為にそなたの手助けをして欲しいとの事だが・・・教義の是正に魔族との和平、国内経済と食料事情の改善とあるが・・・・・可能なのか?」
「俺はある目的の為に行動しているんだが、魔族との和平がなれば楽になるんだ。その為にも教義の是正は必要だし、この国が教国から自立出来ればもっと楽になる。まぁ序だ序」
「ほう・・・物の序に国を救うか・・・・・面白い。で、我に頼みたい事とは?」
「お待ち下さい陛下!この者は魔族を配下にしている様な者ですぞ!信用してはなりません!そもそも教義の是正等も必要無いでは有りませんか!全ては魔王を倒せば済む事です!」
「・・・ミゲイル、この百年で我が国がどれだけ疲弊したのかそなたが知らぬ訳無かろう・・・・・このままでは周辺諸国に切り取られてしまうのが落ちじゃ。この者は救国の英雄ガーランド家が使わしたのだ、一考の価値が有ると思わんか?」
「思いませんな。そもそもそ奴が魔王の手の者で無いと言い切れるのですか?ガーランド家に関してもです、英雄などと祭り上げられ良い気になって、魔王と結託し国を乗っ取ろうと画策しておるやも知れんではないですか!」
「おい、お前、煩ぜぇーんだよ。俺と国王が話してんだ、口挟むんじゃねぇよ」
「いい加減にしろ!良いか、城門での件で貴様には国家反逆罪の嫌疑に掛けられる!貴様の配下も!貴様を送り込んだガーランド家もだ!既に兵を送り込んである。全員牢屋に送った後一人ずつ念入りに取調べをしてやるから覚悟しておけ!」
「あっちゃ~参ったなジェラルドさんに先に言って止めて貰えば良かった・・・・・ライラ、面倒な事に為ってすまん!」
「今更詫びても手遅れだ・・・ククク・・・・・貴様も大人しくしておれ。どのみち助からんがな」
「あん?何勘違いしてんだ?余計な犠牲を出したく無かっただけなんだが・・・まぁ良いか、殺さない様には言ってあるしな。ジェラルドさんガーランド家に迎えの馬車を出して貰えるかな?何人送ったかしらねぇけど気絶してるか心折られてるから自力じゃ帰って来れないと思うんだ」
「貴様・・・何を言っている・・・・・」
「さて・・・御集まりの皆様!教会の教義では亜人も人族と認めておりますが、その中に竜人族は含まれますか?」
俺の問いに周囲がざわめき国王が答えた。
「間違いなく含まれる・・・・・但し二百年以上目撃されておらん筈だが・・・・・」
「ん?おかしいな・・・五十年前に姿を現している筈なんだけど?」
「・・・どう言う事だ?五十年前と言えば大進攻位しか思い浮かばんのだが・・・・・」
「正解だ。五十年前の大進攻の時に人族を魔属領から追い返したのが竜人族の魔王、ケイオス・ドラグーンだ」
周囲のざわめきが更に大きくなりミゲイルが叫んだ。
「嘘を申すな!魔王と言えば悪逆非道の限りを尽くした悪魔の王の事ではないか!!」
「そいつは先代魔王の事だな。百三十年前にケイオスが倒して魔王になってる。そもそもこの百年間に一度でも魔族が進行して来た事があるのか?詳しくは知らないが、大進攻の時だって追い返されただけなんだろ?魔王・・・ケイオスは自分の領地と領民を守っただけなんだよ」
周囲が静まり返りミゲイルが青褪めて俯き何やらブツブツと呟き、国王が額に手を当てて俺に聞いてきた。
「・・・・・だとすれば・・・教会が諸悪の根源と言う事になる・・・・・魔族と和解をし、共に教国を・・・教会を滅ぼすしか無いと言うのか?」
国王の問いに答えようと口を開いた瞬間、ミゲイルが叫んだ。
「ふざけるなぁ!!貴様の言う事なんぞ信じるものか!魔王と結託し、この国を滅ぼそうとしているに決まっている!!貴様を殺し!魔王も殺す!!全ては神の御心のままに!!」
ミゲイルが腰の剣を抜き、飛び掛るように間合いを詰め俺の首を横凪に斬り付けて来た。
ミゲイルの剣が俺の首を捉えると「ギイン!」と音を立てて剣が折れてカラカラと折れた剣先が床に転がった。
「・・・・・おい・・・そんな鈍らじゃ俺に傷一つ付けられねぇぞ・・・そう言やぁお前・・・内の者だけじゃなくガーランド家にも手ぇ出したんだったなぁ・・・・・俺ぁ敵には容赦しねぇぞ」
そう言って殺気を放ちながら巨大ハンマーを取り出すと、ミゲイルは青褪めて腰を抜かしじりじりと後ずさった。
俺はハンマーを肩に担いでミゲイルをゆっくりと歩いて追いかけ、間合いに入ると一気に振り下ろした。
「死ねええぇぇぇ!!」
ハンマーがミゲイルの頭に当たり「カン!」と音がして蓋がはずれ、ミゲイルはハンマーの中にすっぽりと納まった。
「なぁ~んつってな!ははははは!!言ったろ?余計な犠牲は出したく無いって。さて、喧しい奴は大人しく為ったし話の続きをしようか、国王さんよ」
そう言ってハンマーを持ち上げると、白目を剥いたミゲイルがパタリと倒れた。
ここまで読んでいただき有難う御座います。




