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国王との謁見の為に少し早めの昼食を取った後、アイリスが馬車を用意すると言って来たが自前の乗り物が有るのでと断った。
「それじゃぁ行って来ます。アイリスさん、もしもの場合はライラに対処させますから身の安全を第一に考えて手を出さない様にお願いします。それでもガーランド家が罪に問われる様な事になるのなら国王を含め敵対する者は全て俺が消してマークスさんを国王に据えますんでその時は宜しく」
そう言って次元収納から四輪自転車を取り出して乗り込んだ。
「これはまた面白そうな乗り物ですね・・・フフフ・・・本当に見に行けないのが残念ですわ」
「ははは・・・それじゃ。ライラ、後は頼むぜ!」
ペダルを漕いで中央通りに出て向きを変え、南に見える王城に向かって加速していく。
ギャリギャリと石畳を削る様な音を立てて疾走する鉄の塊に擦れ違う馬車は道の端に避け、時折貴族の邸宅からは叫び声が聞こえてくる。
「さて、北砦と同じ様な対応になるのか、それとも穏便に話し合いから始まるのか楽しみだぜ」
徐々に近づく城門の上に居る兵士が此方を指差しているのが見え、門の脇に有る扉からわらわらと兵士が十人程出てきて門の両脇に並び槍を構えた。
俺は門の正面に車を止めて降りると、態と大きな音を立てて車のドアを閉めて一番近くに居る兵士にマークスと玄田から渡された書類を掲げる様に見せた。
「マークス・ガーランド男爵及び使徒、玄田武士殿より預かった委任状と推薦状だ。国王陛下との謁見の予約も取ってある門を開けろ!!」
「話は聞いている!その乗り物は此方で預かるのでそこの扉から入るが良い!」
そう言って兵士は城門横の通用口を指差した。
「あ?俺は門を開けろって言ったんだぜ。それとも何か?ガーランド家の名代に門は潜らせられないってのか?大体あんな遠くまで歩くとかふざけんなってーの」
「何と言われようともだめな物はだめだ。そこから入るのが嫌ならば帰るが良い」
「ほう・・・そりゃぁ誰の命令だ?まさか国王陛下じゃねぇよなぁ・・・・・まぁいい・・・開けてくれねぇってんなら押し通るまでだ」
そう言って門の正面まで歩き、次元収納から次元刀とは別の刀を取り出して門の隙間から閂を斬って門を蹴り開け車に乗り込んだ。
「怪我ぁしたくなかったらどきやがれ!!」
そう叫ぶと同時にペダルを全力で漕ぐと、後輪が空転し石畳を削り白煙を上げ徐々に前に進み出し「ガッ!」と大きな音を立てて前輪を浮かせながら加速して行った。
門の周囲に居た兵士達は襲い掛かる様に近づいて来る鉄の塊から転がる様に逃げだした。
前輪を浮かせたまま10m程走り着地すると、正面の扉から鎧姿の男が一人出て来て槍を構えたまま此方に向かって来たのが見えた。
男は槍で突いて来たが、俺はフルブレーキをかけると同時にハンドルを切りスピンターンをしながら槍を窓枠で絡め取り、男の横を擦り抜けてそのまま城の入り口前に車を横付けした。
「なかなか良い腕してるが惜しかったな!それじゃあ俺には届かないぜ!」
唖然とする男を尻目に車を仕舞い、入り口の扉を蹴り開け城内に入りぐるりと見渡す。
「まず先に言っとくぞ。怪我ぁしたくなかったら俺の邪魔をするな・・・・・で、誰が国王の所まで案内してくれるんだ?」
入り口から正面の階段までの間に三十人、更に階段の両脇からぞろぞろと兵士が出て来るのが見えた。そして、背後には城門周辺に居た兵士と詰め所から出てきた兵士が既に百人近くになっていた。
俺は次元収納からアレスの予備の剣を出して右腕一本で振り回し、左手の指から魔力弾を撃ち出して正面に居る兵士の武器を打ち落とした。
「あぁ・・・この剣じゃ怪我どころか死んじまうなぁ・・・ククククク・・・いやぁすまんすまん、せめて刃の無い武器にしてやるよ」
そう言って剣を仕舞い、アレスを叩いたのとは別の中身の詰まった巨大なハンマーを取り出して床に叩き付けた。
「ドゴン!」と言う破壊音と共に床が大きく揺れ、ハンマーを中心にクレーターが出来て放射状に床がひび割れる。
「・・・・・で、誰が案内してくれんだ?・・・・・おい、何黙ってんだよ・・・こいつでぶん殴られなきゃ解らねぇのかよ!」
叩き付けたハンマーを肩に担ぎながら問うと、兵士達は青褪めて小刻みに震えた。俺が周囲を見渡し鼻で笑い、階段に向かって歩き出すと兵士達は一定の距離を保ちながら道を開けた。
「なんだぁ案内も出来ねぇのかよ、使えねぇ奴らだな。全員首にした方が良いんじゃねぇのか?金の無駄だろ」
俺は歩きながら階段の上から降りてきた男に話しかけた。
「随分と辛辣なご意見ですが、この様な者共でもこの国の治安を守る為に必要なのですよ・・・・・パンドラ殿ですな?この国の宰相をしておりますジェラルド・ハーグスと申します」
「こりゃまたいきなり大物が出てきたな・・・・・門での対応は誰の仕業だい?」
「申し訳ありません。丁重に迎えるようにと申し付けたのですが・・・・・貴様ら何時まで呆けている積もりだ!さっさと後片付けをして持ち場に戻らんか!この馬鹿者共が!!」
ジェラルドの怒号で兵士達が慌てて動き出し後片付けを始めた。
「いやいや十分派手な出迎えだったぜ・・・ククク・・・で、あんたが案内してくれんのかい?」
「ええ、どうぞ此方です」そう言って歩き出すジェラルドの後について行くと、護衛らしき兵士と部下らしき男が俺達の後ろに付いて来た。
「さて、事の顛末は?・・・・・どうせ騎士団長とか近衛辺りだと思うが一様聞かせて貰えるか?」
「きちんと調べてみない事には何とも言えませんが・・・・・おそらくは小隊長辺りが罰せられて終わりでしょうな」
「ハッ!くだらねぇ貴族同士の柵とか面子なんて興味は無ぇが世話に為ってるんでな。俺とガーランド家に仇為すってんなら相手が何処の誰であろうと潰すぜ」
「・・・・・それは国王陛下が相手でも、と言う事でしょうか?」
「あぁそうだ・・・国王だろうが教皇だろうが関係ないね。敵対するなら潰すまでだ・・・・・マークスさんは言ってたぜ『このままこの国が衰退するのを見続けるよりは俺に賭けた方が良さそうだ』ってな。その気持ちを無柄にする様な奴が居るなら俺は許さん」
「フッ・・・マークス殿らしい・・・・・レイル殿の意思は受け継がれている様で安心しました」
「・・・なぁ、ガーランド家ってのは何なんだ?男爵にしては幅を利かせすぎだろ」
「ん?ご存じ無かったのですか・・・・・詳しい話は私からは出来ませんが救国の英雄の家系とだけ言っておきましょう」
「ふ~ん・・・英雄なのに下級貴族ってのが気になるが・・・・・ああ・・・それで反感買ってるのか」
「気になるのでしたらアイリスにでもお聞き下さい」
「ん?呼び捨てって事は知り合い・・・いや、もっと深い仲か?アイリスさんもあんたが酒好きだって言ってたし」
「・・・アイリスは私の姪なのですよ・・・・・ガーランド家を守る為に縁付けたのですが余計に風当たりが強くなってしまって・・・・・」
「気にすること無いと思うぜ。アイリスさんも子供達も楽しそうにしてたしな・・・・・そうそう、あんたに土産だ受け取ってくれ」
俺は次元収納からウィスキーの入った樽を取り出して床に置くと、後を付いて来た連中にジェラルドの個室に運ばせた。
「かなり強い酒だから果汁や水で割って呑むことをお勧めするよ・・・・・ああ、国王にも持って来てるから遠慮は要らないぜ」
「お気遣い感謝いたします。早速今夜にでも戴かせてもらいます」
その後はアイリスが酔った時の事など他愛の無い話をしているうちに謁見の間に着いた。
ここまで読んでいただき有難う御座います。




