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その日我が家で起こった事は僕の人生に多大なる影響を及ぼした。


父上の紹介で我が家の客人となったパンドラさんとその眷属のライラさん、アレスさん、タニアさん。


皆優しく面白い方達だ。


パンドラさんが持って来てくれた父上からの手紙には『剣術の手解きを受ける様に』と書かれていたので、僕よりも大きな剣を背負った騎士の様な出で立ちのアレスさんにお願いしたが、パンドラさんにライラさんの剣術の方が僕向きだと言われライラさんに教わる事になった。



獣人は人族より身体能力が高いとは知っていたが、僕と然程変わらない背丈の女の子が巨大な剣を振り回すオーガより強いなど誰が信じると言うのか。

ライラさんとアレスさんが手合わせを始めるまで僕も信じていなかった。


だが現実は違った。


僕の掛け声と共に剣を振り上げたアレスさんの喉下にライラさんの剣が突き付けられていたのだ。


そして翌日から本格的な訓練が始まった。


ライラさんの教えは解り易かった。

常に全体を見て動き続け的を絞らせず、攻撃は小さく鋭く的確に、唯それだけだがそれがとても難しい。

救国の英雄の子孫で時期当主の僕は、幼い頃から忙しい父の変わりに門番から剣を教わっていたのでそれなりに自信は有ったのだが、僕の攻撃は二本の木剣により簡単に捌かれ、掠る所か体制を崩され攻撃を貰ってしまう。

力の流れを感じ取れれば簡単に出来る様になると言うが、国内最強の騎士と謳われる父にも出来ないと思う。


こんな達人の女の子を従え、国王陛下と謁見する事が出来るパンドラさんは一体何者なのだろう。


その日、昼食後にパンドラさんが陛下との謁見に出かけ、剣の訓練をしていると、突然ライラさんが動きを止めて屋敷の従者を含めた全員を二階に連れて出て来ない様にと言い門へと向かった。


僕は妹と共にタニアさんに連れられ二階の部屋へ入り、バルコニーから門の方に視線をやると門番が門を開けた後に屋敷に向かって走り出した。

一体何が起こっているのかと思っていると、門の前に沢山の兵士達がやって来た。


「あれは王都守備隊みたいね。お城では面白い事になってそうだわ。後で宰相様から御話を聞かないと」


そんな暢気な事を言う母上を尻目に、何か言い合っている兵士達とライラさんを見ていると兵士達が開いた門からなだれ込んで来た。


兵士達はライラさんを取り囲む様に広がって行くが、何故か次から次へと倒れて動かなくなって行く。

僕が困惑していると全ての兵士達は倒れていて、ライラさんは屋敷の入り口にいるアレスさんを呼んで、倒れた兵士達を壁際に転がして行った。


アレスさんは兵士達を運び終えると入り口に戻って行き、ライラさんは倒れた兵士達の近くで木剣を携えたまま兵士達を睨んでいた。

気が付いた兵士は逃げ様とするか、ライラさんに向かって行ったが、ライラさんに打ちのめされて倒されて行った。何度もだ。


そこまでする必要が有るのかと言う思いと同時に、主の命を守るという事の重さを思い知らされ『救国の英雄の子孫』として、国を守る意味と覚悟を叩き込まれた気がした。


やがて日が傾き始めた頃、全ての兵士は打ちひしがれて壁際で固まって頭を抱えて震えていた。


暫く睨みを効かせていたライラさんが門の方へ向かって行くと、門の前に五台の馬車が止まり、一人の兵士がライラさんに頭を下げて話かけた後、馬車から兵士達が出てきて壁際で震えていた兵士達を連れて行った。


その日から僕はライラさんを師と仰ぎ、剣の訓練に励んだ。

そして十年後『ベルトラン王国の守護者』と呼ばれる様になるのだった。

ここまで読んでいただき有難う御座います。

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