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パンドラ達三人が謁見の間を出て行き扉が閉まった。
「陛下!何故あの者達を無事に帰したのです!」
「しかも取引まで。条件もそのままで交渉すらしなかったではないですか!」
「これでは他の物に示しが付きませんぞ!」
第四将軍ガルド、第二将軍アリューズ、第六将軍ドーズが騒ぎ始める。
「何だ気に入らんのなら奴らを追いかけても良いぞ。その時は我が軍から除名するがな。ヴァイス、フロートアイの増産と材料の手配だ急げ」
「畏まりました陛下。何としても期日までに1000体揃えて見せましょう」
「待てヴァイス!お前は何とも思わんのか!あのような小僧に良い様にあしらわれて『おいおいガルド、てめーが陛下の命令無視して斬り掛かったせいも有るって解ってねーだろ』・・・」
ガルドの声を遮って第一将軍フェイルが口を開く。
「・・・だから斬り捨ててしまえば『一瞬で剣を斬り落とされた奴の台詞じゃねーだろ』・・・グッ・・・・・」
更にフェイルがガルドを遮り歩き出し、アレスが切り落とした剣の先を拾ってガルドに投げ付ける。
「斬り口見てみろ綺麗なもんだろ。剣の性能も有るんだろうが並の腕じゃねぇぞあのオーガ」
「さて、あやつには手を出すな、これは決定だ。それとガルドは罰として木材の調達だ。期日までに足り無ければ降格処分とする。不服ならば出て行け、我が命を守れぬ将軍など他の者に示しが付かんからな」
* * * * * * * * * *
そんなやり取りが有ったと知らず、俺達はメイド達に見送られて城門まで来ていた。
「お嬢さん達、世話になったな。もし此処の待遇に不満が有るなら俺が雇ってやるから何時でも言いな」
「フフフ・・・面白い方ですね。魔王様に仕える者を引き抜くなど普通では考えられません」
「そうか?まぁ考えといてよ。他にも虐げられてる奴とか居たら声掛けといてくれると助かる。そんじゃまたな」
軽く勧誘をしながら挨拶をして魔王城を後にし、正門から続く道を真っ直ぐに歩いて行くと、長い草原が終わり低い木々に変わり林が見えてきた。
「さ~て取り敢えず水場を探さにゃいかんなぁ。ライラ、水音が聞こえたら頼む・・・・・って何脹れてんだ?」
ライラはそっぽを向いて返事もしてくれなかった。
「主殿が魔王城の侍女達に声を掛けたのが気に入らないのでは・・・グァ!」
ライラの手刀がアレスの脇腹の甲冑の隙間に突き刺さる。
「何だ~ライラ~やきもちか~しょうがねぇな~・・・ほれ、外に出たらやろうと思って作っといた奴だ・・・お~よく似合うぞ~可愛いな~ライラは~」
服に合わせて作った黒いつば広の帽子は麦藁帽子の様な形で、つばの付け根には白いリボンが巻いてある。
「っつ・・・お、おお、良く御似合いですぞライラ殿!良い所のお嬢様かと思いましたぞ!」
脇腹を押さえながら必死に誉めるアレスを余所に、お宝製造で壁掛けサイズの鉄の鏡を作ってライラの前に出した。
ライラは鏡を見た後、頭の上の帽子を取って眺め被りなおしてニヨニヨと微笑みながら歩き始めた。
暫くいくと林の中に気配を感じたがゴブリンより弱そうだったので放って置く事にしたのだが此方に近づいて来た。
「ちょっとあんたたち待ちなさい!」と言って林から出てきたのはサキュバスだった。
「・・・・・ライラ、お前はあんな大人になっちゃダメだぞ・・・こんな所を下着姿でうろつく奴は『変態』って言って危ない奴なんだ。相手しちゃダメだぞ」
「ちょ、違うわよ!あたしは変態じゃないわ!この格好はサキュバスの正装で由緒正しい物なんだからやめてよね」
「あ、そうですか。それじゃ私達は失礼します」
「まって~!違うから!そんな冷たい目で何気なく去ろうとしないで~!!」
面倒臭いがストーカーみたいに付き纏われるのも嫌なので話を聞くと、俺達が試験場を荒らしたせいでクビになり、行く宛ても無いので責任を取って欲しいとの事。
「知らんな。その事については魔王と話は付いてる。俺達に何の責任もねぇよ。それにライラに悪影響及ぼしそうだしな」
「そこを何とか!連れて行ってくれれば雑用でも何でもするから!・・・は、初めてだけど色々頑張るからお願い!!」
「あ、そう言うの要らないんで。それじゃ」
「えぇ~なんでよ!初物よ!初物!男ってそう言うもんじゃないの?!ほ、ほら!あたしの方がその子より胸も大きいしきっと満足させてあげられるわよ!」
必死に食い下がろうとするサキュバスの言葉と共に背後から殺気が漂い、後ろを振り返ると聖なるグラディウスを抜こうと剣に手を掛けているライラをアレスが肩に手を掛けて止めて前に進み出た。
「・・・・・ライラ殿・・・この様な者にライラ殿が手を汚す事は有りません・・・・・貴様・・・ライラ殿に対する無礼許さんぞ!そっ首刎ねて其処の木に吊るして晒し者にしてくれる!!」
魔王の配下に俺が剣を向けられた時より怒っている様に見えるのは気のせいだと思いたい。
アレスが剣を抜きその大剣を大上段に構えると顔色を真っ青にして「ヒイイイィィィ!」と悲鳴を上げて後方に飛び退きながら見事なジャンピング土下座をきめた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!もう言いません!もうしませんから許してください!ごべんなざい~ゆるじで~ごろざないで~・・・・・」
「うわ~マジ泣きだよ・・・引くわ~どん引きだよ・・・・・もうほっといて行こうぜ」
俺が歩き出すと二人が納得出来ないような顔をして付いて来た。サキュバスは俺達が離れて行くのに気が付き慌てて立ち上がり、少し離れた所を泣きながら付いてきた。
「主殿は優しすぎます・・・・・魔王の手の者かも知れぬではありませんか」
「え?・・・あれがか?・・・・・無いわ~それだけは無いわ~・・・・・もしそうだとしたら魔王軍どんだけ人材不足だよ。寧ろ今まであれを使ってた魔王に同情するわ」
「・・・・・自分で言っておいて何ですが・・・我も『無いな』と思ってしまいました・・・申し訳ありません」
「あ・・・主様、向こうから水の匂いがします・・・・・近くに小動物の気配もします」
ライラの示す方へ向かうと開けた場所に泉が見えた。
「おお結構広いな。これなら家も出せそうだし、水の補給も出来るな」
水の補給と聞いて二人は嫌な顔をしたが、気にせず湖の辺に家を出すと背後から悲鳴が聞こえた。
「ヒイイィィィ!な、何ですかこれ!一体何処からこんな物が・・・・・」
俺達は取り敢えず無視して家の中に入りリビングで休憩した。
「何か色々有って疲れたな・・・少し休んだら飯にしよう・・・・・それであいつの事なんだが・・・・・」
そう言って窓から外を見るとサキュバスが泉で水を手で掬って飲んでいた。
「主様はああ言う女性が好みなんですか・・・・・」
俯きながら聞いてくるライラに間髪入れずに俺は断言した。
「無い!それだけは無いな!俺は何の力も無い癖に努力もしないで人に頼るだけの奴はだいっ嫌いだ!」
「では何故あの者に情けを掛けるのです?」
「単に殺す価値も無いからなんだが・・・利用出来ないかと思ってな。魔王城の侍女に声を掛けたのにも繋がるんだが、ライラに常識を教えさせようかと思ってな」
そう言って外を見るとサキュバスが足を滑らせて背中から泉に倒れこんでいた。
「ブハッ!・・・ククククク・・・いやすまん何でも無い。兎に角だライラ、お前には外で生活するだけの常識・・・獣人として、女性としての常識が足りなさ過ぎる。このまま人族の国に入ったら何が有るか解らんだろ、獣人と人族の関係も含めて俺達は何も知らねぇんだ」
俺はきちんと条件を付ける事で二人を納得させてサキュバスに声を掛けた。
「おーい!残念サキュバス!ちょっとこっちこーい!」
俺が呼ぶとずぶ濡れのまま慌てて走って転びそうに為りながら窓の近くまで来た。
「うぅ・・・寒いよぅ・・・・・何かご用でしょうかぁ・・・・・」
「・・・・・ほんとに残念な奴だな・・・まぁいい、話がある。これで体を拭いてから部屋に入って来い」
俺からタオルを受け取ると体と頭を拭きながら部屋に入ってきた。
「・・・・・はぁ・・・二人共ストーブの前を開けてやってくれるか・・・・・」
俺は二人を退けさせると椅子を出してストーブの前に座らせた。
「わ~暖かいですねぇ・・・・・これで服も乾きます・・・皆さん先程は申し訳ありませんでした・・・・・このご恩は一生忘れません」
「あ~まぁそりゃ~どうでも良いんだが・・・お前、さっき何でもするって言ったけどありゃ本気か?」
「へ?あ、はい!あたしに出来る事なら何でもいたします。で、でも~初めてなので~出来れば優しくして欲しいな~な~んて・・・・・あ、でも痛いのはダメなんで叩いたり縛ったりするのは止めて欲しいかな~・・・えへへ・・・・・」
頬を染めてくねくねと身を捩るのを見てついイラッとして殺気を放った。
「・・・・・おい・・・そう言うのはいいんだよ。次ぎやったら殺すぞ」
「ヒッ!も、申し訳ありませんでした!そ、そうですよねこんなに可愛いお嬢さんが傍にいたらあたしなんて出る幕無いですよね~・・・ハハハハハ・・・・・」
「しかし一言多い奴だな・・・まあいいか、お前にやって貰うのはライラとアレスの身の回りの世話と、ライラに年相応の一般常識を教えてやって欲しいんだが・・・・・出来んのか?」
「は、はい!頑張ります!そ、それでその~・・・・・ご、ご主人様とお呼びしても良いでしょうか!」
意を決した表情で真っ直ぐに見つめられ頭の中に声が響いた。
《タニアより眷属契約申請が来ました。受諾しますか?》
一瞬この残念な奴を眷属に?と戸惑ったが受諾するとタニアはぽろぽろと涙を流し「有り難う御座います」と何度も繰り返し頭を下げた。
「よし!これでお前も俺達の仲間だ。タニア、これから宜しく頼むぞ」
こうして俺達に新しい仲間が加わり皆で食事を取るとタニアが終始泣きながら食べ、ライラにタニアを付けて風呂に入れて、アレスにもタニアを付けるか聞いたが断られて俺も断ったらまた泣かれて、タニアを部屋に案内したらご主人様より先に寝る訳にいかないと言い出して俺が眠らない事を教えたら諦めて部屋に入って行った。
皆が寝静まった後、俺は一人でお茶お飲みながらタニアの服を作り今後の事を考えていた。
「人族の国か・・・どんなくだらねぇ所か今から楽しみだぜ・・・ククククク・・・神の操り人形とそれに従う愚か者達が支配する国か・・・・・信じる者こそ救われないってか」
俺はどうぶち壊したら一番効果的かを考え続けて夜を過ごした。
ここまで読んでいただき有難う御座います。




