9話『ダンジョンの法則と廃坑の異変』
第9話をお読みいただきありがとうございます! 金貨1枚の報酬に釣られて、不愛想な美少女騎士エレノアと共に旧鉱山跡へとやってきたハヤテ。しかし、目的地に到着した二人が目にしたのは、ただの廃坑ではない異様な光景でした。異世界の「ダンジョン」が生まれる驚きの条件、そしてハヤテの規格外な魔法にエレノアが驚愕!? 物語はダンジョンの中間地点まで一気に加速します!
シルバアインの街を出て数時間。俺とエレノアは、目的地の旧鉱山跡へと到着していた。
かつては採掘で栄えたというその場所は、今や崩落しかけた不気味な坑道が口を開け、周囲にはどんよりとした魔素が漂っている。
「……おいおい、ただの鉱山跡って聞いてたけど、雰囲気が変わりすぎてないか?」
息を飲み込みながら、俺は一歩下がった。前世のゲームやラノベで嫌というほど見てきた、あの特有の「ヤバい場所」の空気がビシバシと伝わってくるのだ。
すると、隣を歩くエレノアが白銀の大剣に手をかけながら、冷ややかな視線を坑道の奥へと向けた。
「ふん、世間知らずの魔法使いだな。ここはただの廃坑ではない。すでに『ダンジョン化』している」
「ダンジョン化? 鉱山が勝手にダンジョンになるのか?」
俺の問いかけに、エレノアは呆れたように小さくため息をついた。相変わらず不愛想だが、一応は親切に教えてくれるらしい。
「いいか、自然界の魔物が集まっただけでダンジョンになるわけではない。ダンジョンが形成される絶対の条件、それは『魔物が共存していること』だ」
「共存、ねえ……」
「そうだ。本来、魔物は強い生存本能から、自らの『なわばり』を作る。違う種族はもちろん、同種であっても一定のエリアでにらみ合っていて大人しくしていることなどあり得ない。必ず血を血で洗うなわばり争いが起きるからな」
「あー……それ、確かにそうかもな」
エレノアの言葉に、俺は先日――異世界に転生した二日目の
出来事(ボーンウルフ討伐)を思い出して、納得の声を上げた。
「先日、俺がシルバアイン平原でボーンウルフと出くわした時の話なんだけどさ。そいつ、ぽつんと一体だけで行動してたんだ。で、お気楽に周囲を見渡してみても、そのボーンウルフの周りには他の魔物が本当に一匹もいなかったんだよ。
かなり広い範囲にわたって、影も形もなくて。あれは、そいつの縄張り意識が強すぎて、周囲の魔物を完全に排除してたか、あるいは他の魔物が恐れて近づかなかったからなんだな」
俺の体験談を聞いたエレノアは、少し意外そうな顔で俺を見たあと、すぐにいつもの冷徹な表情に戻って頷いた。」
「ふん、お前も実際に肌で感じたのなら話が早い。そうだ、ボーンウルフのような凶暴な魔物は特にその傾向が強い。自らの領域に少しでも他の気配があれば、相手が誰であれ噛み殺す。だからこそ、魔物にとって『なわばり』とは絶対の聖域なのだ。本来ならな」
エレノアは美しい銀髪を揺らしながら、坑道の入り口に付着した不気味な粘液を指差した。
「だが、強力な『ボス』に恐怖で統率されているか、あるいは異常な濃度の魔素によって本能が書き換えられると、魔物たちは自分のなわばりを捨てて一つの場所に密集し、共存を始める。この旧鉱山跡はその状態だ。つまり、奥にいる四天王の配下『ヒュール』とやらの影響で、完全にダンジョンへと作り替えられているということだな」
(なるほど。魔物がなわばりを作らずに共存している空間、それがこの世界のダンジョンの定義か。昨日の、周囲に誰も寄せ付けないボーンウルフの孤高っぷりを思い出すと、そんな連中が肩を並べて協力し合ってるってのは相当異常な状況だな……。ってことは、中にはそんな凶暴な連中が種類を問わずめっちゃいるってことじゃねえか!)
引き返したい気持ちがあったが、脳裏に「金貨1枚」の輝きがチラついて俺の足を地面に縫い止める。ここで日和ってどうする。俺には全属性の適正があるじゃあないか。
「説明はここまでだ。いくぞ、遅れるなよ魔法使い」
エレノアはそう言い残すと、凛とした横顔のまま、白銀の大剣をいつでも抜けるように構え、薄暗い坑道へと迷いなく足を踏み入れた。
そして――俺もまた、その不気味な闇の奥へと、一歩を動かし始めたのだった。
第9話いかがでしたでしょうか! 今回はストーリーの区切りを調整し、エレノアによる「ダンジョン化の条件」の解説をメインに描きました!
1体でエリアを独占するほど強烈な縄張り意識を持つ魔物たちが、なぜか共存しているというダンジョンの異常性と不気味さが、深く伝わってくれれば幸いです。
そして、いよいよ二人は薄暗い坑道の奥へと足を踏み入れました……! 次回第10話、ついにダンジョン内部での戦闘が始まります。ハヤテの『魔法の設計図』とエレノアの剣技はどう炸裂するのか!?
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