3話『ギルド長との面談と馬小屋ライフ』
第3話お届けします!規格外の魔力を披露してしまったハヤテを待ち受けていたのは、ギルド長からの呼び出し.....そして、まさかの極貧スタート!?それでは、お楽しみください!
「……お前が、測定水晶を木っ端微塵にしたっていう新人か」
始まりの街シルバアインの冒険者ギルド。その奥にあるギルド長室。
立派なデスクを挟んで俺の前に座っているのは、顔に大きな傷跡があるスキンヘッドの男だった。
彼こそが、この街のギルドを取り仕切るギルド長、ガルフさんだ。
その鋭い目と、身体から滲み出る圧倒的な威圧感に、俺の背中に冷や汗が流れる。
(うわ、めちゃくちゃ強そう……。女神様が言ていた『格上の剣士』って、まさにこういう人のことか……!)
ガルフさんは、ミーシャさんがガタガタ震えながら差し出した報告書――『全属性の反応を示したのち大破』と書かれた紙を見ると、深くため息をついた。
「全属性の適性に、測定不能の魔力量、か。おいおい、どこぞ英雄の血筋か、それとも魔王の隠し子かなにかかぁ?……と言いたいところだが、その怯えきった座り方を見るに、ただのワケありのようだな」
「あ、はは……。ただの旅の者、です」
前世の引きこもり癖のせいで、目上の強者と話すだけで心臓がバクバクだ。だが、ガルフさんはフッと笑みを浮かべた。
「安心しろ。ギルドには素性が割れない奴なんざ珍しくもねえ。お前ほどの化け物だ、下手に国や教会に目をつけられて囲い込まれるより、うちのギルドで預かった方が色々と都合がいい。……ただな」
ガルフさんはパチンと指を鳴らし、真面目な顔になる。
「さっきの特級測定水晶、あれは国家予算級の代物だ。お前のポテンシャルに免じて『一応』金はとらないでやるが……タダというわけにはいかねえ。本来、新規登録者に支給される『初期支給金』は、その弁償代としてやることはできねぇ。
「えっ……!? じゃあ、俺の全財産は……」
「これだけだ。今のところお前は、最低ランクの『Fランク』だからな」
ガルフさんが机にコトンと置いたのは、冒険者カードとわずかな銅貨3枚だけだった。
ラノベ知識が脳内を駆け巡る。銅貨3枚。この世界の物価が中世ヨーロッパ基準なら、良くてパンが数個買える程度。宿に泊まるなんて絶対に無理な金額だ。
「よし、これで、登録完了だ! しっかり稼いでギルドに貢献しろよ、大物ルーキー!」
ガルフさんにガハハと豪快に背中を叩かれ(死ぬほど痛かった)、俺は半ば追い出されるようにギルドを後にした。
夕暮れ時。シルバアインの街並みは、魔導具の街灯がぽつぽつと灯り始め、幻想的な雰囲気に包まれていた。
だが、今の俺の心はそれ以上に寒かった。
「はは……。本当に銅貨3枚しかねぇ……。異世界転生初日から野宿か?」
お腹の虫がグゥと鳴る。ひとまず、通り沿いの屋台で見つけた一番安い固いパンを銅貨1枚で購入。残るは銅貨2枚だ。これで泊まれる場所なんて、この街にあるのだろうか
トボトボと裏通りを歩いていると、古びた宿屋の看板が目に留まった。そこには安宿を意味するマークと、手書きの貼り紙があった。
『素泊まり:銀貨1枚。――※ワケあり向け:馬小屋一泊
銅貨2枚(馬の機嫌次第)』
「……これだ」
俺の目がキラリと輝いた。
ラノベオタクとして、このシチュエーションを知らないはずがない。どん底からスタートする主人公が、最初に泊まる場所――それこそが『宿屋の馬小屋』だ!
「す、すみません! 馬小屋一泊、お願いします!」
宿の頑固そうなおやじに銅貨2枚を叩きつけると、「物好きなガキだな」と鼻で笑われながら、裏手の馬小屋へと案内された。
ガラガラと戸を開けると、中には2頭の立派な馬がいて、パカパカと音を立てていた。その奥に、高く積まれた乾燥した藁の山がある。
「うん……。なかなかの臭い。だけど、悪くない!」
俺は藁の山に勢いよく飛び込んだ。チクチクとした感触はあるものの、思ったよりもふかふかしていて温かい。
「現世のあの薄暗い引きこもり部屋に比べたら、天井も高いし、動物の温もりもある。……うん、全然アリだな」
固いパンをかじりながら、俺は藁に寝転がって夜空を見上げた。隙間だらけの屋根から、異世界の美しい星空が見える。
魔力測定での大騒ぎ、ギルド長からの圧、そしてこの馬小屋生活。怒涛の一日だった。格上の存在の多さに圧倒されもしたけれど、俺の心は不思議と充実感で満たされていた。
(よし……。これなら、魔王討伐も、結衣との再会も……不可能じゃない。明日は、いよいよ初めてのクエストだ。俺の【全属性魔法】とラノベ知識が、どこまで通用するか試してやる……!)
馬のいななきを子守唄代わりに聞きながら、俺は新しく始まる冒険の毎日に胸を躍らせ、深い眠りへと落ちていった。
第3話、次回、ついにハヤテが初クエストへ出発!ぜひブックマークやポイントでの応援をお願いします!




