2話『始まりの街と冒険者ギルド』
第2話お届けします!ここからハヤテの異世界無双(?)が始まります。楽しんでいってください!
見上げるほどの巨大な石造りの城門。そこを行き交う、鎧を纏った戦士や、ローブを羽織った魔法使い、そして荷馬車を引く見たこともない巨大なトカゲ。
耳に飛び込んでくる活気ある喧騒と、微かに漂う馬糞と革製品の匂い。そのすべてが、ここが紛れもない『本物の異世界』であることを俺に告げていた。
そこで街の始まりにある看板が目に入る……
「ここが……始まりの街、シルバアイン。本当に……転生しちまったんだな」
俺――黒崎疾風は、新しく手に入れた自分の両手を何度も握り締めた。
引きこもり生活で鈍りきっていた現世の身体とは違う。今の身体は驚くほど軽くて、何より、身体の奥底でマグマのように脈打つ、凄まじい『何か』の気配を感じる。これが女神様の言っていた、規格外の魔力量ってやつだろうか。
だが、感動の余韻に浸っている暇はない。
ラノベ知識において、異世界に降り立った主人公が最初にすべきことは決まっている。
「まずは情報収集と、当面の生活費の確保。……目指すは『冒険者ギルド』一択だ そこで冒険者登録をしよう!!」
幸い、街のメインストリートを歩いていくと、それらしき建物はすぐに見つかった。剣と盾が交差したお馴染みのマークが描かれた看板。扉を開けると、中には荒くれ者たちの怒号と、酒や汗の臭いが充満していた。
一瞬、中学時代のトラウマが過り、足がすくみそうになる。だけど、俺は胸に手を当てて言い聞かせた。
(大丈夫だ。俺はもう、あの部屋で怯えていた無力な存在じゃない)
ガタガタと震えそうになる膝を意志の力で抑えつけ、俺は一歩、ギルドの床を踏みしめた。目指すは、奥にある受付カウンターだ。
「失礼します。冒険者の登録をしたいんですが……」
声をかけると、カウンターの向こうから、青色の髪をポニーテールにまとめた、いかにも「ギルドの看板娘」といった風貌の可愛い受付嬢が顔を上げた。
「はい、冒険者登録ですね! ようこそ、始まりの街シルバアインのギルドへ。私は受付のミーシャと申します」
ミーシャさんは営業スマイルを浮かべながら、一枚の紙と、青く輝く不思議な水晶を手際よく机に並べた。
「では、こちらの書類にお名前をご記入ください。それと、そちらの『魔力測定の水晶』に手を触れていただけますか? これで現在の魔力量と適性属性を測定し、ギルドカードを発行します」
「分かりました」
名前欄に『ハヤテ』と記入し、俺は少し緊張しながら、冷たい水晶にそっと右手を重ねる。
――その瞬間だった。(あ、これ、マズいかも……)
水晶に触れた瞬間、俺の身体の奥底に眠っていた膨大な魔力が、右手に集中していくのが分かった。脳内に浮かんだのは、今まで読んできた何百冊ものラノベの記憶......
キィィィィィィィィン!!!!
鼓膜を突き刺すような高い音がギルド内に響き渡る。
次の瞬間、青かった水晶が、赤、青、黄.....そして神々しい光の白、して全てを呑み込む闇の黒へと、目まぐるしく色を変えて猛烈に発光し始めたのだ。
「え……? ちょっと、何これ……!?」
ミーシャさんの目が点になる。
光はさらに輝きを増し、ギルドの広い食堂の隅々までを真っ白に染め上げた。荒くれ者たちの雑談がピタリと止まり、全員の視線が受付に釘付けになる。
そして――。
パキィィィィンッ!!!
派手な音を立てて、ギルドに一つしかない高価な魔力測定の水晶が、木っ端微塵に砕け散った。
「「「…………は?」」」
ギルド内が、静寂に包まれる。
ミーシャさんは、口をポカンと開けたまま、砕け散った水晶の破片と俺の顔を交互に見つめて硬直していた。
「あ、あの……すみません、壊しちゃいました……?」
俺が恐る恐る尋ねると、ミーシャさんはガタガタと震えながら、ひっくり返った声で叫んだ。
「こ、壊れた……!? 国家予算レベルの特級測定水晶が、魔力過多で破裂した……!? そ、それに今の発光パターン……まさか、全属性の適性者!?っ!? ハ、ハヤテさん、ここで動かないでくださいぃぃぃ!」
涙目で奥の部屋へと走っていくミーシャさんの後ろ姿を見送りながら、俺は内心で冷や汗を流していた。
「おいおい、冗談だろ……?」
「あのガキ、何者だよ……!」
静寂のあと、地鳴りのようなざわめきがギルド中を包み込む。
格上の剣士や魔法使いがゴロゴロいるこの世界。だけど、俺の持つ『知識』と『魔力』は、どうやら最初からこの世界の常識をブチ壊してしまったらしい。
(いや、すごいのは分かったけど……ミーシャさん今『国家予算レベル』って言わなかったか? 弁償しろとか言われないよな……!?)
第二話投稿させていただきました!
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