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序章:1話『異世界転生』

初投稿になります。元引きこもり少年がラノベ知識と全属性チートで魔王を討伐するお話です。楽しんでいってください!

薄暗い部屋の中に、スマートフォンのバックライトと、わずかに開いたカーテンの隙間から差し込む西日だけが揺れていた。

壁一面を埋め尽くす本棚。そこには、何百冊、何千冊というラノベが隙間なくぎっしりと敷き詰められている。本棚に入り切らなかった単行本が床に高く積まれ、まるで現実の世界から俺を守る防壁のようだった。

黒崎疾風ハヤテ。それが俺の名前だ。通信制の高校に籍だけは置いているが、結局学校にはほとんど通わず不登校の引きこもりそれが俺、黒崎疾風

「……やっぱり、ラノベの世界はいいな.....」

 ベッドに寝転びながら、読み終えたばかりのラノベを胸に抱え小さく呟く。

ラノベの物語の主人公たちは、みんな強くて、優しくて、理不尽な悪意に負けない。そして努力すれば必ずみのる.....

それに比べて現実はクソくらえって話だ

中学時代。良かれと思ってクラスメイトを庇った結果、いじめの標的は俺に変わった。昨日まで笑い合っていた友人たちは、巻き込まれるのを恐れて一斉に俺をのけ者にし、見て見ぬふりをした。

人間に絶望し、この部屋に引き込もっている俺にとって、唯一裏切らない存在――それこそが『ラノベの世界』だった。

現実から逃げ出した俺の、それが唯一の心の支えだった。


「ハヤテ! またそんな薄暗い部屋で本読んでる!」


前触れもなく、ガチャリと部屋のドアが開く。 ノックもそこそこに、

俺の防壁たちを軽々と飛び越えて入ってきたのは、幼馴染の――七瀬結衣だった。

「……結衣。入る時はノックしろっていつも言ってるだろ」

「もう、何度言われても忘れることにしたの! ほら、カーテン開けちゃうからね!」

 シャッと勢いよくカーテンが開けられ、太陽の光が俺の視界を悪くする。

結衣は俺のいじめとは無関係だった。クラスのカーストだって上位にいるような、太陽みたいに明るい女の子だ。それなのに彼女は、周囲の目なんて一切気にせず、傷ついた俺の唯一の味方として、ずっとこの部屋に通い続けてくれていた。


「ハヤテ、今日はね、ハヤテを外に連れ出しにきたんだよ!」

「……嫌だ。外の世界なんてロクなことがない」

いつもの軽口だと思って布団に潜ろうとした俺の前に、結衣が一枚の古びた写真を見せてきた。

それは、街の少し外れにある、緑豊かな大きな自然公園。

「ここ、覚えてる? 中学に上がる前、二人で時間を忘れて日が暮れるまで秘密基地作ってた場所」

「あ……」

「いじめが始まる前、あんなに楽しそうに笑ってたハヤテの笑顔が、私はもう一度見たい。……だから、お願い。今日だけでいいから、私と一緒に外に出てみない?…」

まったくこいつは…こんな腐ってる俺のことなんかを気にかけてくれて…

俺を部屋から救い出そうとする彼女の優しさが、胸の奥にじんわりと染み渡っていく。ラノベの読みすぎかもしれない。だけど、結衣のこの真っ直ぐな想いにだけは、嘘で返したくなかった。


「……分かったよ。少しだけ、だからな」

「本当!? やったぁ! じゃあすぐ準備して!」

数年ぶりに開いた、部屋の向こう側への扉。そこからリビング…玄関へ…家族は見るまでもなくとても驚いて見えた。

外の空気は驚くほど新鮮で、結衣と並んで歩く思い出の場所は、俺の凝り固まった心を少しずつ、確かに溶かしてくれた。


――ああ。現実も、悪いことばかりじゃないのかもしれない。


 そんな風に、ほんの少しだけ前を向けれた、その瞬間だった。


「キャアアアアアアアアッ!?」

「誰か、誰か止めてくれ! そいつ、刃物を持ってるぞ!!」

突如として、平穏な公園の空気を切り裂く、悲鳴と怒号。

 見れば、街の向こうから、狂った目をギラつかせた一人の男が、血のついた包丁を振り回しながらこちらへ向かって猛突進してきていた。


最悪なことに、男の直線上にいるのは――恐怖で足がすくみ、動けなくなっている結衣だった。


(動け……! 動け、俺の身体……!!)

中学時代のいじめの恐怖が、鋭い刃物のギラつきが、俺の脳を恐怖で支配する。 だけど。そんなトラウマなんて、目の前の結衣を救いたいという執念が、一瞬で上回った。


「結衣、危ないッ!!!」


引きこもり生活で鈍りきっていた身体が、爆発的なスピードで動く。 俺は結衣の華奢な身体を全力で突き飛ばし、彼女の代わりに、狂気の刃の前に立ちはだかった。

 ドスッ、と。 信じられないほど冷たい衝撃が、俺の腹部を貫く。


「嫌ああああああああッ! ハヤテ! ハヤテえええええ!!」


視界が急速に赤く染まっていく。 泣き叫びながら俺に駆け寄る結衣の姿を見ながら、俺の意識は呆気なく.….クソ.….(折角また前を向いてやり直せると思ったのに…)だが俺は安心していた…(結衣お前が無事で..)


――だが。 次に俺が目を覚ますと、そこは、雲の上のようになびく、真っ白な天界だった。


「お目覚めですか、黒崎疾風さん」

目の前にいたのは、後光が差すほどに美しい、一人の女神様。 彼女は優しく微笑みながら、俺にこう告げた。


「あなたは命を賭けて他者を救いました。その尊き善行と……今から転生して行ってもらう世界に関する知識をたくさん持ってるということ……これらのことからあなたは魔王を倒せるであろう可能性が高き人間と評価し、あなたに異世界への転生権を授けます」

『世界に関する知識……?』あ…たぶん『ラノベの知識』か……

(てことは俺マジで異世界転生するの……!!!???)

呆然とする俺に、女神様は人差し指を立てて、楽しそうに微笑んだ。


「ええ。あなたの持つその偏った……コホン、膨大な知識は、これから向かう世界で最大の武器になります。少し、その世界のルールを伝授しましょう。」

女神様の背後に、きらきらと輝く魔導書の幻影が浮かび上がる。


「まず、あちらの世界の魔法は【魔力=イメージの力】。呪文の詠唱よりも、現象をどれだけリアルに頭の中で思い描けるかで威力が何倍にも跳ね上がります。あなたが読んできた物語の知識がそのまま応用できるはずです。


 次に、普通の人間は一生に一つ……多くても2つ3つの属性しか使えません。5つの属性を持つだけで数年に一度の天才です。……ですがハヤテさん、あなたに秘められたのは【火・水・風・地・雷・光・闇】の全て――世界で唯一の【全属性魔法】の適性、そして規格外の魔力量です。」


全属性……! ラノベで何度も読んだ、あの最強のテンプレ適性か……! 驚きで声を失う俺に、女神様は少し真剣な表情になって言葉を続けた。 


「どうかその力で、世界を救ってほしいのです。現在、その異世界は大国すら恐怖する『魔王軍』の侵略によって危機に瀕しています 。さらに世界には、人間には滅多に姿を見せない神聖な高貴なる存在――『精霊族』なども息づいています。彼らとの関わりも、あなたの運命を大きく動かすでしょう


そして、女神様は慈愛に満ちた瞳で俺を見つめ、静かに釘を刺した。


「ですけど、油断はしてはだめですよ.......この世界にはいくらあなたがこのような素晴らしい特性をお持ちでもあなたより格上な剣士や魔法使いがたくさんいますから......」


その厳かな言葉に、俺はゴクリと唾を呑み込む。


「ですが、怯える必要はありません。あなたが本気で生き、仲間を集め、その絆を紡いだとき、運命は必ずあなたに味方します。――あなたが現世で命をかけて守った『あの少女』との糸も、まだ切れてはいないのですから。……さあ、新しいあなたの物語を、始めましょう!」 


「結衣との、糸……?」


 その言葉の真意を問いかける前に、女神様は聖母のような慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、そっと両手を広げた。 

直後、視界を埋め尽くすほどの真っ白な光が、俺の身体を優しく、だけど力強く包み込んでいく。


浮遊感。そして、新しく手に入れたこの身体の奥底から、今までに感じたことのない凄まじいエネルギーが湧き上がってくるのを感じた。


ラノベの知識が、一瞬で理解した。

これが――『魔力』だ。 しかも、ただの魔力じゃない。常識を遥かに置き去りにした規格外の魔力量と、世界で唯一無二とされる【全属性魔法】の適性。それが、今の俺の身体には確かに秘められている。


そして、 真っ白な光が俺の身体を包み込んでいく。


「……さあ、行ってらっしゃい、ハヤテさん。あなたの新たな歩みに、大いなる祝福と輝かしい未来があらんことを――」


次に感覚が戻った時、俺の目の前に広がっていたのは――天を突くような巨大な城門と、活気あふれる中世ヨーロッパ風の街並みだった。


肌を撫でる風の感覚、行き交う馬車の音。すべてがリアルだ。 女神様の言葉通り、俺は本当に異世界の『始まりの街』へと降り立ったのだ。


澄み渡る異世界の空を見上げ、俺は自身の新しい両手を強く握りしめる。

格上の剣士、最強の魔法使い、そして魔王。上等だ......現実世界でいじめられ、怯えて震えていた俺は、もうあの部屋に置いてきた。


「――もう絶対に、唯々腐り続けるだけの人生は送らない。今度の人生、俺は全力で、本気で生きてみせる!」


そしていつか、大切な幼馴染と笑顔で再会するために........


本物の異世界で誓った、新たな覚悟。 前世で蓄え続けたラノベ知識をすべて『最強の攻略本』に変えて、俺の、最高に爽快で熱い異世界リスタートファンタジーが、今ここからはじまるぞっ!!!












最後までお読みいただきありがとうございました!もし「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ページ下部にある【ブックマーク登録】や、評価の【☆☆☆☆☆】を(★に)押して応援していただけると、執筆の物凄い励みになります

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