15話『帰還』
久しぶりの更新です。
15話お楽しみください。
「……ハヤテさん! ハヤテさん、分かりますか!?」
「ゆっくり目を開けると、視界のピントが合ってきた。」
目を開けた瞬間、目の前に広がったのは、揺れる綺麗な青色の髪――ポニーテールを揺らしながら、心配そうな表情で俺を見下ろすミーシャさんの顔だった。
その顔を見た瞬間に、ここが冒険者ギルドの医務室だとすぐに理解できた。
なにせ目の前に、ギルドの看板娘である彼女がいるのだから間違いない。
「……ミーシャ、さん……?」
「よかった……! 意識が戻られたんですね……っ!」
ミーシャさんはホッとしたように胸を撫で下ろしつつも、俺の胸元に両手をかざし、治癒魔法を注ぎ続けてくれていた。
「あまり動かないでください! 体が魔力の消費量に対応しきれてませんし、何よりその右手……!」
「あ……」
言われて自分の右手を見てみると、真っ白な包帯が巻かれていた。
炭のように焼け焦げて変形して、激痛だった右手は、ミーシャさんの手厚い処置のおかげで、今は重い痺れのような痛みに落ち着いている。
(助かったんだ、俺。)
――いや、俺のことより!
「ミーシャさん! エレノアは!? エレノアは無事ですか!?」
「落ち着いてください、ハヤテさん! エレノアさんなら……ほら、お隣のベッドにいますよ。お腹の酷い焼き傷も、なんとか治療しましたから」
ミーシャさんが指さした先――隣のベッドを見ると、規則正しい寝息を立てて寝ているエレノアの姿があった。
「……よかった……本当によかった……っ」
命に別状はないと知り、身体から一気に気が抜けた。すると、俺を治療しているミーシャさんの青い瞳にじわっと涙が浮かび、申し訳なさそうに眉をひそめた
「……ごめんなさい、ハヤテさん。私が……私が受付で、あの依頼を無理に受けさせたりしなければ、お二人をこんな目に遭わせずに済んだのに……っ」
看板娘としていつも笑顔の彼女が、今にも泣き出しそうに肩を震わせている。だが、俺は慌てて首を横に振った。
「いえいえ! ミーシャさんのせいじゃありませんって。これは完全に、俺自身の準備不足と力不足が原因ですから。気にしないでください」
「ですが……」
「本当に。俺たちがこうして今命があるのも、ミーシャさんが手厚く治癒魔法をかけてくれたおかげなんですから」
俺が微笑みかけると、ミーシャさんは目元の涙をそっと拭い、
「ありがとうございます……すぐ代わりの薬を取ってきますね」と言って部屋を後にした
ミーシャさんが部屋を後にした直後だった。
隣のベッドから、衣類が擦れる小さな音が聞こえた。
「……ん、ぐ……っ……」
エレノアの長い眉根がぎゅっと寄せられ、まぶたがゆっくりと持ち上がる。
「エレノア!」
俺は思わずベッドから身を乗り出した。
まだ身体が痛むのも忘れて、彼女の顔を覗き込む。
「ハ、ヤテ……? ここは……」
「エレノア、無事か!? お腹、痛まないか!? 息は苦しくないか!? どこか変な感覚はないか!? 俺の声、聞こえてるか!?」
「お、おい……落ち着けハヤテ……! まだ、頭に響く……っ」
顔を近づけて容体を確かめる俺に、エレノアは圧倒されたように目を丸くし、それから苦笑いを浮かべた
「平気だ……痛みもほとんどない。ミーシャが診てくれたんだな。……それより、お前こそその右手……無茶しやがって」
「俺の右手なんてどうでもいいんだよ! お前が無事ならなんだっていい……! 本当に、無事でよかった……っ」
安堵して胸を撫で下ろす俺を見て、エレノアは少しだけ照くさそうに視線を泳がせ、
「大げさだな」と呟いた。でも、その表情にはどこかホッとしたような温かみが滲んでいた。
「……でさ、エレノア」
少し落ち着いたところで、俺はずっと頭に引っかかっていた疑問を口にした。
「俺たち、どうやってあの廃坑から帰ってきたんだ? 俺はヒュールを倒した直後に気絶したし、エレノアだってあの時は一歩も動けない状態だったろ……? 誰か救助でも来てくれたのか?」
俺の問いかけに、エレノアは一瞬だけピクッと肩を揺らした。
「ああ……それか。実は…」
第15話をお読みいただきありがとうございました!
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