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16話『仮面の女性と、深まる疑惑』

16話投稿です〜

「……仮面の、女性……?」


俺は思わず首をかしげた。エレノアはベッドの背もたれに体を預け、どこか遠くを見るような目でうなずく。


「ああ。ハヤテが倒れて、私も腹の激痛で指一本動かせなくなった直後だ。闇の中から静かに足音が聞こえてきてな……現れたのは、異質なデザインの仮面を被った人物だった。」


「絶体絶命の状況で現れた謎の人物だ。あの時は正直、ヒュールの仲間か新たな敵が来たと絶望して、完全に諦めかけたさ。……だけどその人物は、私とハヤテには何もせず、まるで荷物でも扱うみたいにひょいと軽々しく抱え上げた、そして廃坑から脱出したんだ。」


「待てよ、俺たち二人を抱えて廃坑から出ただって? 装備も含めたら相当な重量だぞ。それを一人で……?」


「ああ。細身の体つきだったが、私とハヤテをまるで羽毛でも持ち上げるみたいに、軽々と両脇に抱え上げたんだ。腕力なのか強化魔法なのかすら分からん。ただ、耳元で聞こえた吐息と声のトーンで、仮面の裏の人物が女性だってことだけはハッキリ分かった」


エレノアの話を聞けば聞くほど、異質さが際立つ。


四天王配下のヒュールという化け物が潜んでいた廃坑だ。そこに偶然居合わせただけの一般人が乱入して、二人を軽々と救出するなんてあり得ない。


「それで、その女性は何か言ってたのか?」


「廃坑の外……眩しい光が見えたあたりで、私の意識も限界でな。必死に声を絞り出して『お前は……誰だ……?』って問いただしたんだ」


「なんて答えたんだ?」


「呆れたように小さく息を吐いてな……『あまりお前とは関わりたくない者だな。今は眠っとけ』――そう言い捨てられたところで、私の意識も完全に途切れた。次に目が覚めた時は、ギルドの医務室だったというわけだ。」


「関わりたくない者、か……」


俺はガチガチに包帯が巻かれた自分の右手を見つめた。


仮面の女性。圧倒的な力。そして「関わりたくない」という拒絶の言葉。


(俺の力や四天王ヒュールの存在を知っていた……? もしかして、魔王軍の人間か? いや、だとしたら動けない俺たちを助けてギルドまで運ぶ理由がない……)


「ハヤテ、考え込んでも今は答えは出んぞ。何にせよ、その謎の女性のおかげで私たちが生きてここにいるのは事実だ」


「……そうだな。命の恩人には変わりないか」


俺は息を吐き出し、ベッドに深く背中を預けた。


ただの初級クエストから始まったはずの俺の冒険は、どんどん巨大な渦へと巻き込まれているような気がしてならなかった。


(いや、確かにラノベだったらここから怒涛の熱い展開突入!って盛り上がるところなんだろうけどさ……。

流石に初手からこのハードモードは聞いてないって。俺、まだ平穏にダンジョン潜って素材集めるくらいのテンションだったんだけど……ハァ、なんだか一気にどっと疲れが押し寄せてきたよ)


「……まあ、今はまず、その右手を治すのが先だな」


「うぐっ……それを言われるとぐうの音も出ない……」


エレノアの呆れを含んだ視線に、俺は苦笑いを返すしかなかった。

ありがとです〜

評価とブックマークよろしくです〜

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