12話『伝説の大賢者と開かれた鉄の扉』
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大賢者の説明が主になっています。
坑道の突き当たり。そこには、かつて「鉱山の会議室」として使われていたであろう、頑丈な鉄の扉があった。
扉の隙間からは、これまでの魔素とは比べものにならないほどの濃い魔素がピリピリと漏れ出してきている。
(いやいやいや、待って。この扉の向こう、絶対にヤバいって。空気の重さがさっきまだとは、違いすぎる
魔王軍四天王の精鋭なんだろ? 脳みそヘロヘロ頭痛持ちの新人冒険者が挑んでいい相手じゃないって、無理無理無理!)
一気にヒヨリ始めた俺は、あまりの恐怖に膝がガクガクと震え始めていた。
引きつった心を落ち着かせるために、先ほどからずっと引っかかっていた疑問をエレノアに問いかけてみた。
「な、なぁエレノア……。扉を開ける前に一つ聞きたいんだけどさ。さっき俺のことを『大賢者の生まれ変わり』なんて言ってたけど、その大賢者ってどんな奴?」
「……お前、こんな時に…大賢者様の伝説を知らないとは……」
エレノアは「正気か?」と言わんばかりの呆れ顔を浮かべた。しかし、俺の顔があまりにも必死だったためか、彼女はため息をつき、鉄扉を警戒しながらも静かに語り始めた。
「いいか、大賢者様は今から約350年前に生きていた伝説の魔法使いだ。この世界で唯一、『すべての属性の魔法』を完璧に操ることができたと言われている。」
「全属性、ねえ……」
まさに今の俺と同じ特徴だ。だが、エレノアの次の言葉に、俺は思わず目を丸めた。
「驚くのはここからだ。当時、大規模な魔物の侵略があり、世界の土地の大半が消失しかけた際、大賢者様はたった一人で『土魔法』を極限まで展開し、なんと今の世界の半分に相当する土地をその手で作り出したのだ。」
「我々が今、こうして大地を踏みながら生きていられるのは、大賢者様のおかげだ。」
「世界の半分を、土魔法で……!? スケールがデカすぎて意味が分からんぞ……」
「さらに、その規格外の力は神にも認められ、大賢者様はそのまま神へとなられ、そして今もなお、天からこの世界を見守ってくださっていると教会の聖書にも記されている。そんな作り話かもしれない存在と同じ『全属性』を、お前は無詠唱で混ぜ合わせたのだ。少しは自分の異常さを自覚しろ」
(いやいやいや、待て待て待て! 同じ全属性持ちだからって、さすがに俺にそんな土地を作るなんて芸当は絶対に無理だぞ!? 俺ができる『土魔法』なんて、まだ初級魔法しかない。世界の半分をつくりあげるとか…… 規模の次元が違いすぎるだろ……!)
自分と同じ特徴を持っていたらしいが賢者のチートの規模の差に、内心で激しいセルフツッコミを入れる。
(神になって今も世界を見守っている大賢者……。そりゃエレノアがあんなに引くわけだわ。でも俺に土地作りを期待されても絶対に無理だからな。本当にただの初級魔法使いなんだからな!)
大賢者の凄まじいチートっぷりに気をとられていると、いつの間にか恐怖が少しだけ紛れていた。
ギギィィィ……。
かつて鉱山の会議室として使われていたであろう、その部屋は、異様な光景へと変貌していた。
かつての会議室の備品はすべて破壊し尽くされ、壁や床には魔法陣がびっしりと描き込まれている。部屋の中央には、巨大な魔力放つ魔石があり鉱山全体の魔素をコントロールしているようだった。
そして――。
魔石の背後から漆黒のグローブをつけた男がゆらりと姿を現した。
「我が名はヒュール。魔王軍四天王バトラス様が配下にして、この鉱山を支配する者なり。偽物の大賢者、ここが貴様らの墓場だ!」
凄まじいプレッシャー。
ふと隣を見ると、あの強気なエレノアが、見たこともないほど顔を青ざめさせてカタカタと震えていた。彼女ほどの剣士が、本能的な恐怖に完全に怯えている。
「死ね」
ヒュールが短く呟き、腰から漆黒の長剣を引き抜いた。
その直後、ヒュールの体から立ち上る魔力が長剣の刃へと収束し――
ゴオォォォォォッ!!!
その瞬間、刃が炎に包まれた。魔法としての『ファイア』そのものを、剣の刃に完全に吸着させ、維持しているのだ。
「な……っ!? 嘘、だろ……!?」
エレノアが驚愕のあまり悲鳴のような声を上げた。
「エレノア、あれは一体――」
「ハヤテ、あれは魔法を物質にまとわせて維持する技術だ! 体内の魔力を出しっぱにするように垂れ流し続ける、人間には魔力量が足りずに干からびる自殺行為……! すなわち、圧倒的な魔力量を誇る『魔物にしか使えない、奴らだけの特権』だ!」
炎を纏う刃を向け、不気味に笑うヒュールの口元。
人間には不可能な、魔物だけの特権
脳みそヘロヘロの俺と、恐怖に震えるエレノアの前に、絶望の炎が炊かれていた。
次回13話 ヒュール戦です。
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