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同接一万でダンジョンが確定する世界で、炎上した元トップ配信者が観測を操る  作者: 海狼ゆうき
観測の暴走

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99/100

最大同接

 カメラの画面。


 視聴者数が増えている。


 108。


 132。


 204。


 数字はゆっくりだが、確実に増えていた。


 配信は切ったはずだった。


 電源も落としていた。


 それなのに、画面は生きている。


 チャットが流れる。


〈誰?〉

〈配信再開?〉

〈終わったんじゃないの?〉


 俺はカメラを持ち上げた。


 レンズは真っ黒だ。


 つまり――


 俺は配信していない。


 なのに数字は増える。


 影の俺が静かに言った。


「新しい観測者だ」


 俺は聞いた。


「どこにいる」


 影の俺は天井を見上げた。


「ここじゃない」


「世界のどこか」


 視聴者数。


 428


 増える速度が上がる。


 チャットも加速する。


〈誰が配信してる〉

〈画面真っ暗〉

〈音もない〉


 そのとき。


 カメラの画面が切り替わる。


 ノイズ。


 ザッ――


 映像が映る。


 最初はぼやけている。


 灰色の空。


 コンクリート。


 揺れる画面。


 そして。


 人影。


 視聴者数。


 1,204


 一気に跳ね上がる。


 チャットが爆発する。


〈誰!?〉

〈配信始まった〉

〈新配信者〉


 映像の人物は歩いている。


 フードを被っている。


 顔は見えない。


 ただ、カメラを持っている。


 歩く。


 静かな街。


 夜。


 日本だ。


 どこかの都市。


 信号機。


 自販機。


 電線。


 普通の街。


 だが。


 視聴者数は増え続ける。


 5,800


 12,000


 影の俺が小さく言った。


「早いな」


 俺は眉をひそめる。


「何が」


 影の俺が言う。


「観測が始まる速度」


 映像の人物は歩き続ける。


 そして。


 交差点で止まる。


 カメラがゆっくり持ち上がる。


 正面。


 そこにいたのは。


 男。


 スーツ。


 ビジネスマン。


 普通の通行人。


 配信者の声が初めて流れる。


 低い声。


 静かだ。


「こんばんは」


 視聴者数。


 48,000


 チャットが爆発する。


〈声きた〉

〈誰だよ〉

〈企画?〉


 男がカメラを見る。


 その瞬間。


 空気が変わる。


 配信者が言う。


「今から」


「人を殺します」


 沈黙。


 視聴者数。


 120,000


 チャットが止まる。


 数秒後。


 爆発する。


〈え〉

〈嘘だろ〉

〈通報〉

〈やめろ〉


 男は困った顔をする。


「え?」


「何?」


 配信者が言う。


「あなたです」


 ナイフ。


 銀色の刃。


 俺は思わず叫ぶ。


「やめろ!!」


 だが声は届かない。


 画面の中の世界だ。


 視聴者数。


 240,000


 チャット。


〈やばい〉

〈本物?〉

〈演技?〉


 男が後ろに下がる。


「ちょっと」


「待って」


 配信者が一歩近づく。


「配信です」


「大丈夫」


 そして。


 ナイフが振られる。


 赤。


 血。


 男が倒れる。


 アスファルトに。


 視聴者数。


 620,000


 チャットが崩壊する。


〈通報〉

〈本物〉

〈警察〉

〈ヤバい〉


 俺は歯を食いしばる。


「止めないと」


 影の俺が言う。


「止められない」


「観測が始まった」


 映像の配信者がカメラを見る。


 初めて顔が映る。


 若い。


 二十代。


 目が狂っているわけではない。


 むしろ。


 静かだ。


 配信者が言う。


「面白い?」


 視聴者数。


 900,000


 チャット。


〈最低〉

〈やばい〉

〈でも見てる〉


 配信者は笑う。


「やっぱり」


「人は」


「こういうのが好きだ」


 俺の背中が冷える。


 影の俺が静かに言う。


「新しい配信者だ」


「世界は」


「また観測される」


 視聴者数。


 1,000,000


 数字が七桁になる。


 チャットが光の壁になる。


 世界中が見ている。


 配信者が言う。


「次」


「何を見たい?」


 その瞬間。


 俺は走った。


 石の椅子へ。


 影の俺が叫ぶ。


「おい!」


 俺は振り返らない。


 椅子。


 石の王座。


 観測の中心。


 俺は手をかける。


 冷たい石。


 画面の配信者が笑う。


「次は」


「子供かな」


 視聴者数。


 1,420,000


 俺は歯を食いしばる。


 そして。


 椅子を見る。


 影の俺が言う。


「座れば」


「世界を止められる」


 俺は呟く。


「わかってる」


 視聴者数。


 2,000,000


 数字が爆発する。


 配信者がナイフを持ち上げる。


 そして。


 俺は。


 椅子に。


 座った。


 その瞬間。


 世界のすべての画面が。


 白くなった。


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