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同接一万でダンジョンが確定する世界で、炎上した元トップ配信者が観測を操る  作者: 海狼ゆうき
観測の暴走

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95/100

視聴率バトル

 竜が吠えた。


 巨大な口が開く。

 赤い光が喉の奥で膨れ上がる。


 ブレス。


 瞬間。


 俺と影の俺は、同時に動いた。


 ドォォォォン!!


 炎が空洞を埋める。

 岩が溶ける。

 熱風が吹き荒れる。


 チャットが爆発した。


〈うわああ〉

〈でかすぎ〉

〈ボス戦〉


 俺は横へ滑り込む。

 床を蹴る。

 竜の脚の内側へ潜る。


 影の俺は逆方向へ走った。


 完全に別ルート。


 チャットが二つに割れる。


〈右行く〉

〈主人公側〉

〈いや影の方おもろい〉


 画面上。


 視聴者数が揺れる。


 俺

 159,412


 影

 158,588


 竜の尾が振られる。


 ドォン!!


 岩が吹き飛ぶ。


 影の俺は跳んだ。

 空中で回転。

 ナイフを振る。


 ザン!


 竜の鱗が裂ける。


 チャットが盛り上がる。


〈うめえ〉

〈動き速い〉


 数字が動いた。


 俺

 158,001


 影

 160,444


 影がリードした。


 俺は竜の腹の下に潜る。


 巨大な心臓の鼓動が聞こえる。


 ドクン。

 ドクン。


 俺は小さく笑った。


「なるほど」


 影の俺が言った言葉。


“面白い方が座る”


 つまり。


 これは。


 配信。


 ただの戦闘じゃない。


「見せ方」


 俺はカメラを見る。


「コメント」


 チャットが動く。


〈なに〉

〈作戦?〉


 俺は言った。


「予想しろ」


 チャットが止まる。


「次、どこ斬ると思う」


 コメントが流れる。


〈首〉

〈目〉

〈心臓〉


 竜が脚を振る。


 俺は後ろへ跳ぶ。


 そして。


 言った。


「正解」


 ナイフを握る。


「心臓だ」


 チャットが爆発した。


〈来る〉

〈いけ〉


 数字が動く。


 俺

 166,889


 影

 160,102


 影の俺が眉を上げた。


「ほう」


「観客参加型か」


 竜が咆哮する。


 口が開く。


 影の俺にブレス。


 ドォォォォ!!


 炎が走る。


 影の俺は走る。


 壁を蹴る。


 天井へ。


 重力を無視するような動き。


 チャットが歓声を上げる。


〈やばい動き〉

〈アニメ〉


 数字が動く。


 俺

 170,211


 影

 172,901


 影が再逆転。


 俺は息を吐いた。


「やっぱ上手いな」


 影の俺が笑う。


「元トップ配信者だ」


「お前より長い」


 俺は言った。


「そうか」


 そして。


 カメラを見る。


「じゃあ」


「もっと面白くする」


 チャットがざわつく。


〈なにする〉


 俺はナイフをしまった。


 影の俺が目を細める。


「……武器捨てた?」


 竜が突進する。


 巨大な牙。


 俺は。


 逃げない。


 その場で立つ。


 チャットが絶叫する。


〈危ない〉

〈逃げろ〉


 竜の口が迫る。


 あと三メートル。


 二メートル。


 一メートル。


 その瞬間。


 俺は叫んだ。


「コメント」


「止めろ」


 チャットが止まる。


 そして。


 流れる。


〈止まれ〉

〈止まれ〉

〈止まれ〉


 空気が歪んだ。


 竜の動きが。


 止まった。


 影の俺の目が見開かれる。


「……!」


 俺は静かに言った。


「観測だ」


「三十万人が」


「止まれって言えば」


「世界は止まる」


 ナイフを抜く。


 ゆっくり歩く。


 止まった竜の首へ。


 ザン。


 一撃。


 巨大な首が落ちた。


 ドォォォォォン!!


 地面が揺れる。


 チャットが狂った。


〈神回〉

〈やばい〉

〈天才〉


 数字が跳ね上がる。


 俺

 301,882


 影

 97,441


 圧倒的差。


 影の俺が笑った。


「……なるほど」


「そこまで行ったか」


 竜の体が崩れる。


 黒い粒子になって消える。


 空中の文字が光る。


【勝者】


 ゆっくり表示される。


 配信者


 つまり。


 俺。


 チャットが爆発する。


〈勝った〉

〈ラスボス撃破〉


 影の俺は肩をすくめた。


「完敗だ」


 そして。


 椅子を見る。


 石の椅子。


 静かにそこにある。


 影の俺が言った。


「座れ」


「お前の番だ」


 空気が静かになる。


 視聴者数。


 412,000


 俺は椅子へ歩いた。


 一歩。


 また一歩。


 その時。


 影の俺が、最後に言った。


「座ったら」


「もう降りられないぞ」


 俺は止まった。


 椅子の前。


 手を伸ばす。


 その瞬間。


 空中に文字が浮かぶ。


【最終確認】


観測を支配しますか?


 チャットが止まった。


 世界が静まり返る。


 俺は。


 笑った。


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