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同接一万でダンジョンが確定する世界で、炎上した元トップ配信者が観測を操る  作者: 海狼ゆうき
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第三者


 外部審査機関。

 それが本当に“第三者”なら、七瀬の土台は揺らぐ。

 もし形式だけの外部なら、企業は崩れる。


 国家の男が調査に入る。

 名称は公開されていない。

 だが裁判所提出書類のフッターに、略称の頭文字があった。


「C.R.A」


 零が呟く。


「探せる?」


「やる」


 一晩で洗う。

 法人登記。

 過去の契約履歴。

 関連役員。


 トウマも学術ネットワークを使う。


 翌朝。

 国家の男が言う。


「見つけた」


 一拍。


「合同会社クリア・リスク・アセスメント」


 設立三年前。

 代表社員――


 七瀬は画面を見る。

 凍る。


「……この名前」


 トウマが低く言う。


「企業の元法務部長です」


 沈黙。


 零がゆっくり息を吐く。


「完全な外部ではない」


 国家の男。


「形式上は独立」


 一拍。


「だが人的関係は濃い」


 さらに洗う。

 役員の一人が、企業の顧問弁護士と同じ研究会所属。

 報酬の大半は、その企業案件。


 七瀬の鼓動が速まる。


「これ、出せる?」


「出せる」


 国家の男は冷静だ。


「ただし、証明の仕方が重要」


 癒着と断定すれば、再び“早計”を突かれる。


 トウマが言う。


「関係性を事実として並べる」


 一拍。


「判断は裁判所に委ねる」


 七瀬は頷く。


「今回は、断定しない」


 学んだ。

 言い切ることの重さを。


 その夜。

 告発者から連絡が途絶える。


 既読がつかない。

 電話も出ない。


 零が顔をしかめる。


「まずい」


 国家の男が即座に動く。


「弁護士経由で安否確認」


 数時間後。

 返答。


《本人は現在、出社停止処分》


 一拍。


《社内調査対象者として事情聴取予定》


 七瀬の胸が締め付けられる。


 来た。

 企業は絞り込んだ。


 零が低く言う。


「切られるぞ」


 国家の男。


「まだ特定は確定していない」


「でも時間の問題だ」


 七瀬は立ち上がる。

 部屋を歩く。


 選択肢は三つ。


 一、資料を即公開し、世論を味方につける。

 二、法廷まで温存し、手続きを優先する。

 三、告発者に公に名乗り出てもらう。


 三つ目は論外。

 人生が壊れる。


 トウマが静かに言う。


「あなたは守ると言った」


「うん」


「なら、最速で保護を確定させる」


 国家の男が頷く。


「内部告発者保護法の正式適用」


 一拍。


「公的通報扱いに切り替える」


 七瀬が止まる。


「それ、どうなるの」


「企業は簡単に処分できない」


 零が補足。


「ただし」


「ただし?」


「企業との関係は完全に断絶」


 告発者は戻れない。


 七瀬は目を閉じる。

 自分の戦いに、他人の未来が絡み続ける。

 重い。


 だが。


「やる」


 一拍。


「守る」


 翌日。

 第二回弁論。


 企業側が外部審査機関の資料を提出。

 契約書。

 業務委託内容。


 形式は整っている。


 だが国家の男が立つ。


「代表社員の経歴を確認したい」


 ざわめき。

 裁判官が促す。


 企業側弁護士が一瞬、言葉を選ぶ。


「過去に当社勤務歴がありますが」


「何年前までですか」


「三年前」


 七瀬は呼吸を整える。


 国家の男が続ける。


「当該会社の売上のうち、御社案件の割合は?」


 企業側が資料をめくる。

 沈黙。


「……主要取引先であることは事実です」


 空気が変わる。


 断定しない。

 ただ、事実を積む。


 トウマが小さく頷く。


 裁判官が言う。


「独立性について、さらに説明を求めます」


 企業側の表情がわずかに硬い。


 完全防御ではない。

亀裂。


 法廷後。

 記者が群がる。


《外部機関の独立性に疑問との指摘について?》


 七瀬は短く言う。


「事実を確認しているだけです」


 一拍。


「判断は裁判所がします」


 前より落ち着いている。


 零が車内で言う。


「成長したな」


「痛い目見たから」


 小さな笑い。


 だがその夜。

 告発者から連絡。


 声がかすれている。


「……保護申請、正式に通りました」


 七瀬の目が閉じる。

 安堵。


 だが告発者は続ける。


「でも、私は辞めます」


 静寂。


「戻れない」


「……ごめん」


 七瀬の声が震える。


「あなたのせいじゃない」


 一拍。


「自分で決めました」


 その強がりが、痛い。


「後悔してない?」


 少しの沈黙。


「怖いけど」


 一拍。


「黙ってる方が、もっと嫌だった」


 七瀬は言葉を失う。


 守った。

 だが失わせた。

 両方が同時に存在する。


 通話が終わる。


 零が静かに言う。


「背負う覚悟、あるか」


「もう背負ってる」


 七瀬は窓の外を見る。

 夜の街。

 光は変わらない。


 だが確実に、何かが動いている。


 外部審査機関の亀裂。

 内部告発の確定。


 企業は次、どう出るか。


 国家の男が低く言う。


「和解の再打診が来る可能性」


「今度は?」


「もっと強い条件で」


 七瀬は小さく笑う。


「なら、もっと強く断る」


 戦いは、次の段階へ入った。

 もう後戻りはない。


 第五十八話。

 企業、最終カードを切る。

 七瀬の“決定的弱点”。

 逆転か、崩壊か。


【第五十七話 終】


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