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同接一万でダンジョンが確定する世界で、炎上した元トップ配信者が観測を操る  作者: 海狼ゆうき
世界は配信を見る

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代表者

 午後七時。

 ニュース速報のテロップが流れた。


《◯◯メディアグループ代表、会見へ》


 零がリモコンを握り直す。


「出てきやがった」


 七瀬はソファの端に座っている。

 訴状がテーブルに置かれたまま。


 トウマはノートを開き、国家の男は無言で録画を開始。


 画面が切り替わる。

 白い会見室。

 フラッシュ。

 中央に立つ男。


 五十代半ば。

 落ち着いたスーツ姿。

 整えられた髪。

 マイクの前に立つ。


「このたびは、弊社に関する一部配信者の発言について、正式に法的措置を取らせていただきました」


 声は低く、安定している。

 怒りはない。

 あくまで“理性的”。


「これは言論を封じるためではありません」


 一拍。


「事実に基づかない発言が、企業活動に具体的損害を与えたためです」


 スクリーンにグラフが映る。

 問い合わせ件数の増加。

 株価の一時下落。

 スポンサーの抗議メール。


 零が吐き捨てる。


「演出うまいな」


 トウマが冷静に言う。


「論点を“損害”に固定しています」


 代表は続ける。


「影響力のある方は、発言の重みを自覚すべきです」


 一拍。


「自由には責任が伴う」


 その言葉が、画面越しに刺さる。


 七瀬は無言で見ている。

 表情は固い。


「私たちは健全な議論を歓迎します」


 代表の口調は変わらない。


「しかし、根拠なき断定や印象操作は、看過できません」


 “印象操作”。

 七瀬はゆっくり息を吸う。


 会見は十五分で終わった。

 質問は制限付き。

 核心には触れさせない。

 だが印象は残る。


 テレビ各局が同時に流す。

 SNSが揺れる。


代表の言う通り


三億はやりすぎ


 割れる。


 零が立ち上がる。


「向こう、正面から来たぞ」


 トウマは七瀬を見る。


「どうしますか」


 国家の男が言う。


「感情的反応は避けるべきです」


 七瀬は立ち上がる。

 手が、少しだけ震えている。


「やる」


 零が笑う。


「配信か」


「うん」


 一拍。


「公開で」


 トウマが目を細める。


「討論、要求しますか」


 七瀬は頷く。


「逃げないなら、顔出して」


 夜九時。

 七瀬はカメラをつける。


 タイトル。

《代表者へ》


 同接、開始三分で百五十万。

 コメントが滝のように流れる。


 七瀬は落ち着いた声で言う。


「会見、見た」


 一拍。


「理性的だった」


 チャットがざわつく。


「自由には責任が伴う」


 一拍。


「その通り」


 零が裏で眉をひそめる。

 だが七瀬は続ける。


「でも、責任って何?」


 百五十万の視線。


「株価が一日下がったら、責任?」


 一拍。


「問い合わせが増えたら、責任?」


 トウマが別枠で同時解説を始める。


「市場変動と発言の因果関係は、法的に立証が難しい」


 七瀬は代表の映像を一部流す。

 フェアに。


「健全な議論は歓迎」


 一拍。


「じゃあ、公開討論しませんか」


 チャットが一瞬止まり、爆発する。


《きた》 《無理だろ》


 七瀬は続ける。


「私は逃げない」


 一拍。


「三億って言われても、ここにいる」


 深呼吸。


「あなたも、ここに来て」


 零が小さく呟く。


「挑発だな」


 国家の男が冷静に言う。


「しかし効果は高い」


 視聴者数、百六十万。

 トレンド一位。


公開討論しろ


 七瀬は言葉を選ぶ。


「私は、企業を潰したいわけじゃない」


 一拍。


「揺れてほしいだけ」


 トウマが補足する。


「批判は攻撃と同義ではない」


 チャットが高速で流れる。


《討論やれ》 《逃げるな》


 配信終了。

 数字は百七十万を超えていた。


 翌朝。

 原告企業はコメントを出さない。

 沈黙。


 だが、社内は揺れているという噂。

 株主からの問い合わせ。

 広報部への圧。


 零が言う。


「向こうも揺れてる」


 国家の男が分析する。


「討論に応じればリスク」


「応じなければ印象悪化」


 トウマが静かに言う。


「あなたは、正しい問いを投げました」


 七瀬はソファに沈む。


「怖いけどね」


 一拍。


「本物が相手だから」


 スマホが震える。

 通知。


《公開討論の件、検討中》


 公式アカウント。


 零が吹き出す。


「マジか」


 国家の男が目を細める。


「圧力は双方向になりました」


 七瀬は目を閉じる。


 裁判。

 討論。

 資本。

 言論。


 揺れは、個人を超えた。


「やるなら」


 一拍。


「逃げない」


 トウマが頷く。


「公開の場で」


 零が拳を握る。


「面白くなってきた」


 国家の男は淡々と告げる。


「これは、歴史的前例になります」


 七瀬は小さく笑う。


「大げさ」


「事実です」


 窓の外は静かだ。

 だがネットは揺れている。


 百七十万の視線。

 制度と個人の、公開戦。


 そして――

 次は舞台が用意される。

 本当に。


 次章。

 公開討論、正式決定。

 だがその裏で、

 仲間の一人に“致命的情報”が届く。


【第四十七話 終】


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