危惧
このゴールドラッシュ騒ぎの渦中にいる北国の人々はどう思っているのかというと、実はこの現象をあまりよくは思ってないらしい。
「乳が出ないんだ。」
牧民の男は、弱った家畜を撫でた。
「人が増えすぎて、落ち着かねえらしい。」
踏み荒らされた草原を、リュカは見下ろす。
「見世物みたいにされちまってな。」男は吐き捨てた。
「都合のいい文化だけ残して、あとは捨てられる。」
遠くで、観光客が笑っていた。
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遊牧文化もエンタメ化している。それ自体は悪いことではないのだが、観光客に請けの良い文化だけが残り、その他の面倒な文化は消え去る可能性がある。さらに悪いことに、これら3つの現象を受けて、多くの北方民族が近年都市であるユニマル本国や西国へと移住しているのだ。このままでは、遊牧文化や外交官の枯渇の恐れも出てくる。
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だが――この混乱を、利用しようとする者がいた。陸軍軍人のミグーという者が、近頃民衆の間で名をあげている人物である。
最初は、小さな集まりだった。
「資源は誰のものだ!」
数十人ほどの人々が耳を傾ける。
その中には、職を失った者や、搾取に不満を持つ者もいた。
翌日には、倍に増えていた。
ミグーの声が響く。「民のものか、それとも奪う者の物か!ともに連帯し、団結せよ!」
群衆はざわめいた。すると、誰かが石を投げ始めた。
一つの衝突が、別の衝突を呼んだ。
噂が噂を呼び、怒りが怒りを増幅させる。
こうしてタイアルでは暴動が起こり、やがてそれは制御不能になった。




