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百折不撓のアルゴリズム-semicolon-  作者: 一ノ瀬隆
序章 輪廻融合のイグニッション

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3話 『マスター』

「......これは」


鍵を回し、重厚な鉄扉を押し開けた途端。

地響きのような重低音と共に、周囲の無機質な壁が一気にスライドして開いていった。埃まみれだったただの地下倉庫の最奥に隠されていた、本来あるべき真の姿があらわになったのだ。


そこは、まるで数百年前から時間が止まっていたかのような、完璧に保たれた秘密の工房だった。


壁際の棚や広い机の上には、沢山の複雑な研究資料や青写真、そして見たこともない高度な機械の部品パーツが、埃一つなく綺麗に整頓されている。バイクや機械いじりが好きなアタシにとっては、まさに宝箱のような、見ているだけでワクワクする空間だ。


だが、アタシの視線を何よりも強烈に釘付けにしたのは、それらの遺産ではなかった。


その部屋の中心。まるでそこだけが世界の中心であるかのように設けられた台座に、堂々と深々と刺さっていた、一振りの剣。

白銀の美しい刀身に、銃のような無骨な機構を備えた、特異で威圧的なフォルム。


──────これが、アタシの運命を決定付ける『鍵』。


誰に教わったわけでもない。アタシの魂と直感が、ただ強烈にそう告げていた。畏れなんてない。あるのは、これから始まる途方もない未知への期待だけだ。


コツ、コツ、と。

静寂に包まれた工房に、アタシの足音だけが響く。


祭壇へと吸い寄せられるように歩み寄り。

そして、アタシは一切の迷いなく、その冷たい剣の柄に力強く手を添えた──────。



◆◆◆◆◆



剣の柄に手を添えた、その瞬間。

脳内に直接響き渡るような、深く、静かで、それでいて確かな熱を持った『声』がアタシの意識に語りかけてきた。


『キミに、世界を巡る覚悟はあるか?』


ただの機械音声ではない。その言葉の奥底には、千年という途方もない時間を越えて継ぎ接ぎされてきた、無数の人々の祈りと、決して諦めなかった者たちの強烈な『意志』が込められているのが、肌を刺すように伝わってくる。


「......それは、アタシにしかできないことなんでしょ」


アタシは、柄を握る手にぐっと力を込め、不敵に笑って答えた。


「なら、答えは一つよ」


不思議な感覚だった。これから世界を相手に回すような、とんでもなく巨大な運命に巻き込まれようとしているのに。未知への恐怖も、この先が終わらない過酷な旅になるかもしれないという心配も、今の自分の心には欠片も存在しなかった。

まるで、誰かがアタシの背中を力強く押してくれているような。そんな絶対的な暖かさと、強烈な安心感を感じていたのだ。


アタシは天を仰ぎ、薄暗い工房の空気を震わせるほどの声で、己の覚悟を咆哮した。


「───────全部、アタシが引き受けるッ!!!!!」


迷いのないその宣言を、剣に宿る何者かは、確かな希望として認めたらしい。


『ならば、導け。......まだ見ぬ4人の英雄を。この久遠の世界を完全に打ち破る、そのターニングポイントまで』


ドクンッ、と心臓が大きく跳ねた。

同時に、柄を握った手のひらから、アタシと剣の意識が急速に深く繋がっていく。

無理やり侵食されるような不快感ではない。アタシという器に完全に主導権を渡し、寄り添うようにして、世界に抗うための様々な知識や技術、そして途方もない魔力の奔流が、身体の隅々にまで一気に詰め込まれていく感覚。


光に包まれる意識の中で、その声は歓喜に震えるように、最後にこう告げた。


『今、全てがそろった。......最後の英雄は、キミだ。マスター』


『───────銃剣ゲヴェニアは、他でもない。キミのために生まれてきた』



◆◆◆◆◆



「......はッ!?」


光に包まれ、ぼんやりとしていた意識が、急激に現実へと引き戻される。

さっきまで頭の中に直接響いていた、あの底知れない声の気配はもう完全に消え去っていた。でも、確かな繋がりは感じる。アタシが握りしめているこの『ゲヴェニア』とかいう剣の中に、あの途方もない意志が静かに息づいているのは確かみたいだ。


アタシの、退屈で平坦だった日常は、今、この瞬間をもって完全にぶち壊れた。


目を閉じると、自分の頭の中に明確に『三つの景色』が焼き付けられているのがわかる。行ったこともない、遠い世界の風景。おそらく、アタシがこれから導くべき残りの『英雄』たちが、あそこにいるのだろう。


「......これからよろしくね。ゲヴェニア」


アタシは口元にニヤリと笑みを浮かべ、新たな相棒への挨拶を手短に済ませる。そして、近くの棚に立てかけられていた専用らしき頑丈な鞘にゲヴェニアをカチャリと納め、背中へとしっかりと背負い込んだ。

重厚な金属の重みが、これからの旅の重責を伝えてくるようで、逆にゾクゾクする。


そのまま足早に地下倉庫を抜け出し、アタシは眩しい太陽の下へ戻った。

そして、倉庫から少し離れた場所に停めてあった、整備途中の愛車の元へと駆け寄り、残りの調整をささっと手際よく終わらせる。


レンチを置き、シートに跨ってキーを回す。

キュルルルッ、ドゥオンッ!! と、腹の底に響くような最高に凶悪で頼もしいエキゾーストノートが、青空に向けて吼えた。


「よし、行くよ。ブレイブバスター」


アクセルを煽りながら、アタシはこれから始まる未知の旅路に向けて目を細めた。

この無骨なブレイブバスター。背中に背負ったゲヴェニア。そして最後に、このアタシ、ローズ=アーゼリア。


アタシたちの伝説は、まだ始まったばかりだ───────!!!!!

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