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百折不撓のアルゴリズム-semicolon-  作者: 一ノ瀬隆
序章 輪廻融合のイグニッション

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4話 出撃

「......あ。勢いに任せて出発しちゃったけど、そういえば家に何も言わずに出てきちゃったわ」


愛車ブレイブバスターのアクセルを回しながら、アタシはふとそんな重大な事実を思い出した。

だが、風を切りながら数秒だけ思考を巡らせた後、小さく笑い飛ばす。


「......まあ、いっか」


平和な現代においてアーゼリア家は、今やちょっと歴史的に有名なだけの平民と大して変わらない。その末裔であるアタシが、親に黙ってちょっと無茶な一人旅に出たところで、どうせ「若い頃特有の冒険心」ってことで適当に片付けられるだろう。

そんな現実的で面倒くさい後始末のことは、ブレイブバスターが切り裂く風と共に一瞬で頭の中から消え去った。代わりにアタシの思考は、『冒険』というなんと素晴らしい響きを持つ未知への期待だけに注力し始める。


さあ、まずはこの退屈な町を飛び出して、頭の中に浮かんだ最初の景色を目指そう。

そう意気込み、生まれ育ったこの町を出るメインストリートのゲートを勢いよくくぐろうと思った、その時だった。


「おい! お前、そんな大荷物積んでどこ行くんだよ!?」


「......げっ」


エンジンのエキゾーストノートに負けないくらい大きな声で、バイクの前に立ち塞がるようにしてアタシを呼び止めた影。

そこに居たのは、昔からやたらとアタシの行動に突っかかってくる、一応幼馴染である青年、ルフトだった。


「......アンタにいう義理もなんもないでしょ?」


アイドリング状態のままヘルメットのシールドを少しだけ上げ、アタシは立ち塞がるルフトに向けて呆れたようなジト目を向けた。


「つれないこと言うなよ! お前がそんな大荷物抱えてる時は、絶対なんか面白そうなことしようとしてる時だろ。頼むから、オレもついていかせてくれ!」


「......イヤです。それではごきげんよう」


ぴしゃりと即答し、アタシは再びシールドを下ろした。


ルフトは昔から、とにかくしつこい。こいつの行動原理の大半は、『アタシが関わっているか否か』だけで構成されていると言っても過言じゃないほど、やたらと干渉してくるのだ。そのくせ、いざという時の肝心なアプローチや、自分の意志を押し通すような強引さは持ち合わせていない、絵に描いたようなヘタレでもある。


......男なら、もう少し気概ってのを見せてほしいものだけどね


心の中で小さくため息をつく。

こんなヘタレな幼馴染のお守りをしてやるほど、アタシがこれから向かう未知の『冒険』は、きっと生易しいものじゃない。背中のゲヴェニアが告げた世界を巡る使命に、無関係な一般人を巻き込むわけにはいかないのだ。


それに、どうせ本気でアタシについてくる度胸なんて、あいつにはないだろう。


「あ、おい待てってば! ローズ!」


そうしてルフトの制止を完全に無視し、アタシは容赦なくクラッチを繋いだ。

後方で何か喚いているヘタレの声を、ブレイブバスターの凶悪なエキゾーストノートで掻き消し、アタシは砂埃を巻き上げながら、生まれ育った町の大通りを勢いよく駆け抜けていった。



◇◇◇◇◇



町を出て、見慣れた景色がどんどん後ろへと飛び去っていく。

風を切り裂きながら、アタシはヘルメットの中で小さく息を吐いた。


「......さて。邪魔者もいなくなったところで、現状確認と行こうかな」


ブレイブバスターの心地よい振動を感じながら、アタシはあの地下倉庫でゲヴェニアから頭の中に直接流し込まれた『三つの景色』を思い返す。

そこに、アタシ以外の『英雄』と、神代の剣が眠っているはずだ。


──────切り断つ山脈に囲まれた極寒の祭壇。


──────周りを華に囲まれた剣士の墓。


──────平原の果てにある、荘厳な遺跡。


「......この中で一番わかりやすいのは、極寒の祭壇......かな」


アタシは頭の中で地図を広げ、推測を立てる。

他の2つの景色に比べて、一つ目の景色は気候帯が明らかに違っていた。周囲を囲む鋭く険しい山々の特徴も、本で読んだことのある『あそこ』の地形と完全に一致している。


ヴァイドヘイム王国。

この大陸の北に位置する大国だ。昔は屈強な騎士団による厳格な礼節と武力を重んじていたらしいが、五百年前の戦禍を乗り越えて世界が平和になってからは、その緊張も緩和され、今ではエンターテインメントとしての『見世物の武芸』が広く大衆に親しまれている国だと聞く。


小さい頃から嫌というほど剣術を叩き込まれてきたアタシとしては、腕試しをするにはもってこいの場所じゃないか。


「よし。じゃあ向かうは、北!!!!」


最初の目的地は決まった。その旅をより盤石にするため、アタシは一番近くの町へと走り出した。

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