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百折不撓のアルゴリズム-semicolon-  作者: 一ノ瀬隆
三章 千変万化のソードブルーム

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12/26

12話 燦々と輝く食の街

ロンベルの町で幼馴染のルフトに別れを告げ、ひたすら南東へとバイクを飛ばすこと一週間。


そうして順調に荒野と街道を抜け、肌を撫でる風がほんのりと潮の香りを帯び始めた頃。

アタシは遂に、第二の目的地である『セイラム』へと難なく到着した。


「魚! 魚! 魚!」


目の前に広がるのは、太陽の光を反射してキラキラと輝く広大な青海。そして、活気あふれる港の市場にズラリと並んだ、水揚げされたばかりの新鮮な魚介類の山だ!


ここ、セイラム連邦共和国の最大の名産品といえば、なんといっても『魚』である!

一年を通して過ごしやすい温暖な気候と、沖合でぶつかり合う絶妙な海流がベストマッチを起こし、多種多様で極上の海産物が集まる奇跡の海域。それに伴って独自の料理文化が凄まじい発展を遂げた、まさに海がもたらす『食の国』なのだ!!!!


「......ああもう、最高。生きててよかった」


極寒の雪山で凍えそうになっていた日々が嘘のようだ。

どこからともなく漂ってくる海鮮焼きの香ばしい匂いに、アタシの胃袋はすでに限界突破のファンファーレを鳴らしている。神代の英雄だの剣の墓場だのといった小難しい使命は、一旦頭の隅に追いやることにした。腹が減ってはなんとやらだ。


アタシは市場の入り口付近にブレイブバスターを停め、ウキウキとした足取りで屋台が立ち並ぶメインストリートへと足を踏み入れた。


「まずは新鮮な刺身からね......。その後は何を食べようかしら。海鮮丼もいいし、串焼きも捨てがたいわね!」

アタシは目を輝かせながら、食の国の熱気と極上の匂いの渦の中へと飛び込んでいった。



◇◇◇◇◇



「はッ!?」


山のように積まれた空の皿と、最後に残った極上の海鮮串をペロリと平らげたところで、アタシは不意にハッと我に返った。


危ない危ない。あまりにも海産物が美味すぎて、食べるのに夢中になるあまり、この国に来た本来の目的をすっかり忘れそうになっていた。

アタシの背中には沈黙の相棒ゲヴェニアがいて、懐にはロッドから託された小刀があるのだ。ただの食い倒れ観光旅行に来たわけじゃない。


ただでさえ、あのアタシの頭の中に直接語りかけてくるストーカー気質の神代の英雄がいるのだ。これ以上お気楽に寄り道をし過ぎると、極寒の『龍の階』からロッドがチクチクと文句や催促の思念を送ってくるに違いない。


「......それは流石に、すっごく癪に障るわね」


アタシは食後の温かいお茶をズズッと啜りながら、脳内に浮かんだロッドの涼しいドヤ顔を胡乱な目で睨みつけてかき消した。あいつに「遅いぞ」なんて脳内で説教されるのだけは、アタシのプライドにかけて絶対に避けたい。


「おじさん、ごちそうさま! すっごく美味しかったわ!」


アタシは気前よくテーブルに代金を置き、ポンッと軽く膨れたお腹を叩いて立ち上がった。

存分にセイラムの海の幸を楽しんで、長旅の疲労も完全に回復した。ここからはしっかりと頭を切り替えて、英雄としての仕事の時間だ。


アタシは賑わう市場の喧騒の中へと戻り、腹ごなしの散歩も兼ねて、町の人々から『剣の墓場』についての情報を集め始めたのだった。


「......と、気合を入れて情報収集に意気込んだのは良いのだけれど」


拍子抜けするほど、事はあっさりと済んでしまった。

神代の英雄が眠る秘密の場所。てっきり、裏通りの情報屋や酒場のマスターのような訳知り顔の人間を探し出さなければならないと思っていたのに。試しに、その辺の果物屋の愛想の良いおばちゃんに「ねえ、剣の墓場って知ってる?」と軽く尋ねただけで、道順から歴史まで詳細な情報がすらすらと返ってきたのだ。


どうやら『剣の墓場』といういかにも物騒な響きのその場所は、セイラムの人々からすると隠された秘境などではなく、一種の『聖地』のような扱いとして完全に一般化しているらしい。


さらに拍子抜けしたのは、その景観だ。

墓場、という名前から、見渡す限りの荒野に無数の錆びた剣が突き刺さっているようなおどろおどろしい景色を想像していたのだが、おばちゃん曰く、そこは名前と相反する「とても綺麗な場所」なのだという。


「見晴らしの良い小高い丘でね。その中心に一振りの刀が刺さっていて、周りを色とりどりの沢山の花が飾っているのよ」


......まあ、探す手間が省けたのは良いことよね。ロッドに急かされる前に見つかって助かったわ。


アタシは肩透かしを食らった気分をすぐに切り替え、おばちゃんから親切にも貰った周辺の地図を広げた。


「この中心都市から少し離れたところ、海岸線沿いの先にあるみたいね。......なら、善は急げ!」


行き先さえ分かれば、あとはアタシと相棒の得意分野だ。

アタシは市場の入り口に停めていたブレイブバスターの元へと早足で戻ると、ヘルメットを被って勢いよくシートに跨った。


「さあ、腹ごなしのツーリングと洒落込みますか!」


キュルルルッ、ヴオォォォォン!!


潮風の吹く活気あふれる港町に頼もしい排気音を轟かせ、アタシは第二の目的地である美しい聖地『剣の墓場』へ向けて、ブレイブバスターを颯爽と発進させたのだった。

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