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***アンファミーユ第3部(En Famille Part 3)***  作者: 湖灯


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30/43

【メェナードさん VS ナトー④】

 屋上に上げた部下の最後の一人が水蒸気の立ち込める中に消えてしばらく経つ。

 少しだけ争った物音が聞こえて、それ以降なんの音沙汰もない。

 おそらく彼もナトーによって倒されたに違いない。


 それにしても優秀な狙撃手でありながら、格闘戦もこれほどまでに強いとは思ってもいなかった。

 私はワザと靴音を立てて、ナトーが居そうな辺りを動き回る。

 こうしていれば、向こうから近付きやすいはず。


 案の定背後から近づいてくる気配を感じたが、振り返る間もなく持っていた自動小銃を彼女に蹴り落とされてしまった。

 パンッ。

 トリガーに掛けていた指が叩き落とされる拍子に引っ掛かり1発発射された。

 “ナトーは大丈夫なのか!”

 サラの手を汚したくなくて、ここに来たというのに何故か殺すはずのナトーの心配をしてしまう。

 “甘いな……”

 こんなんじゃ駄目だと思い、気持ちを奮い立たせるために大声で「貴様!」と怒鳴る。

 背後から銃を落とされた私は、振り向く動作と同時に右のエルボーに続いて左のフック、更に左の膝蹴りを間髪なく放つ。

 気配だけで放ったが、私より少し小さい彼女が自らの射程内に入ったのであれば、よりリーチの長いこの攻撃は確実に当たるはず。

 だがナトーは私のエルボーをスウェイでかわし、右のフックを手で受け止めて投げの体勢を取ろうとした。

 見事な防御だが私の攻撃はワンツーではない!

 振り向く回転運動のまま放った膝蹴りがナトーの体にヒットする。

 彼女は最終的なダメージを軽減するため、まるで猫のように飛び退いた。

 凄い反射神経と勘!

 普通なら痛さを堪えるために力を入れてしまい動作が鈍くなり、余計ダメージが大きくなるものだが、まさか当たった途端に逃げるとは……。

 おかげでフィニッシュに持ち込むことができなかった。

 “これが戦場で生死を掛けていた者と、防具を付けて訓練してきた者の差なのか!?”


 “ナカナカ、やるな”

 感心している場合ではない。

 私の中の悪党を奮い立たせるために、悪党らしく「どうだ、月12,000ユーロで仲間にならないか」と交渉の言葉を掛けた。

「もう断ったはずだ」

「勿体ない」

 彼女が答えた隙を狙って右から回し蹴りを放ち、その足を取りに来たところに踵落としを狙うが、ナトーは慌てて後ろに飛んで距離を取った。

 勘も冴えている。


「よく気が付いたな。大したものだ。どうだ13,000で」

「うるさい!」

「おやおや、俺のキックを見ても未だ逆らう気か?気付いているだろ、お前は俺のキックに反応が遅れるって事くらい」


 膝がどの様に上がって来たとしても、その後の脛の動きを見るまでは、足の軌跡が掴めない蹴りは私の得意技。

 これを正確にこなせる奴は、そう多くは居ない。

 ナトーが攻撃を焦れば、彼女は私の攻撃を見切れずにまともに喰らってしまい、見切ってから動いたのでは一呼吸遅れてしまうはず。

 まともに動けるのは膝が動いた瞬間に逃げる動作だけだが、それにしても正確な逃げる位置までは当てずっぽうになってしまい、結局な所前に出ようが後ろに引こうが彼女の不利な状況が変わらない。


 だが用心していたのではいつまで経っても私を倒すことは出来ない。

 何しろ私と彼女の身長差は15センチ近くもあるのだから、その分射程距離も私の方が長い。

 次に左足出す。

 これをナトーは用心深く見たので、いきなりダッシュして間合いを縮めて彼女のシャツの胸元を掴む。

 蹴りは、このためのフェイクだ。

 飛び散るボタンと共にシャツの胸が開きグイっと手繰り寄せるが、なんとナトーは素早く体を横向きにして引かれた方の袖から手を抜き、そのまま背を向けて大きく回り服自体を外した。


 “こいつは、本物の神なのか!?”


 いままで、このように逃げられた事なんてなかった。

 しかもこの動きは私を敵対する者と認識した状態で出来る動きではない!

 これは一体どういうことなんだ?

 私はお前を殺そうとしているというのに、彼女は違うのか??


 “ヤバイ! 気持ちが折れそうになる”


「ほう……ナカナカやるな。つまり俺が掴んだのは、服と言う名の皮一枚って事か?それにしても良いスタイルだ。どうだ、月20,000ユーロで」

 私は自分を奮い立たせるために、再び悪党らしく彼女に話しかけた。

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― 新着の感想 ―
 メェナードさん、苦戦してますね。  ハラハラドキドキですう。(*´Д`*)  もしもナトーちゃんがメェナードさんを殺してしまったら、サラちゃんはどうなるでしょう。  想像すると怖いし哀しいです。  
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