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虫森  作者: 小円説
虫森〜森の変化と、希望との出会い〜

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9/15

日常崩壊〜〜古強者動く〜

「はぁ……バッテリーが見つかったから、ここで通信を待っていれば助かると思ったが……。流石に、数十メートルもある巨人みたいな化け物に襲われたら、こんな民家なんて一瞬で潰されちまうな」

カンラは忌々しげに窓の外を一瞥し、重い溜息をついた。

「そうですね……」


このままここに隠れていても、いずれあの怪物に踏み潰されるか、見つかって殺されるだけだ。何か、何かないのだろうか……。

ハッ!


「軍人さん! そういえば、湖から水が溢れてきた時なんかに避難するための『高台』が、この村にあります!」

「馬鹿か。そんな高いところに登ったら目立ちすぎて、化け物どもに『殺してくれ』って言ってるようなもんだろうが」

カンラは呆れたように吐き捨てた。

「いや、違うんです。その高台には、緊急避難用の『船』が備え付けられているんです」

「……船、だと?」

カンラの色が変わる。

「ああ……確かに、西の橋が軍に封鎖されている以上、現状この森から外部へ脱出する手段は船以外にないな」


『――ピーッ、ガガッ』


次の行動の糸口が見えたその時、カンラの胸元で無機質な電子音が鳴った。復旧した通信機だ。

「ちょっと待て」

カンラは僕を手で制し、通信機に耳を傾ける。


『伝令、特殊部隊員カンラへ。当該区域の状況が、もはや人智を超えた領域にあるとの報告を受けた。これより、上層部は【コード07】の投下を決定する。貴君には詳細な状況報告の義務があるため、西橋に完全隔離車両を用意している。直ちにそこへ向かい、乗車せよ』


「やった……!」

僕は思わず声を弾ませた。

「その車に乗れば、僕も一緒に助けてもらえる!」

「……喜ぶのは早い。それより、この『コード07』の決定のほうが深刻だ」

カンラの顔には、一切の希望がなかった。むしろ、化物と対峙した時よりも深い絶望が刻まれているように見えた。


「コード07……? 何なんですか、それ」

「……簡単に言えば、核兵器だ。だが、通常のものより威力が桁違いに高い。この森や島くらいだったら、一瞬で完全に吹き飛んで地図から消え去るだろうな」


頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。

(そんな……母さん……!)

あの場から消えてしまった母さん。生きている保証はない。それでも、この爆弾が落ちるまでに、母さんを見つけて助け出さないと、本当にすべてが灰になって終わってしまう。


「その爆弾……あとどれくらいで落ちてくるんですか!?」

僕はすがるようにカンラに詰め寄った。

「そうだな……。特殊兵器の輸送と安全確認、上層部の手続きにも手間取るだろう。投下までには早くても『一週間』はかかるはずだ」


一週間。

長くて短い、僕たちに残された最後の猶予。


「よかった……。一週間、それだけあれば!」

でも、どこを探せば……」

「東だ。俺はあっちに生存者がいると踏んでいる」

カンラはそう言って、煤けた窓の外を指さした。

「さっきからあの化物が、東の森で何かを追い回すように暴れている。獲物が逃げ回っている証拠だ。少なくとも、あそこに誰かがいる可能性は高い」

「確かに……行ってみましょう」

「ああ」

短く応じると、カンラは手際よく装備を整え始めた。その無駄のない動きに、ダルクは意を決して問いかけた。


「……こんな時に聞くことじゃないかもしれませんが、あなたのお名前は?」

「カンラだ。……お前は?」

「……すみません」

ダルクが言葉を濁すと、カンラは追及することなく、ただ短く頷いた。

「……事情があるようだな。いい、行くぞ」

「はい、カンラさん」


二人は静かに民家を抜け出し、鬱蒼とした森の中へと足を踏み入れた。

どれほど歩いただろうか。不意にカンラが鋭い動きで歩みを止め、ダルクを制した。

「止まれ」

「どうしたんですか、カンラさん……」

「……例の鬼だ。息を殺せ」


前方の暗がりに、あの「鬼武者」が佇んでいた。

その口から、およそ人間のものとは思えない、おぞましい掠れ声が漏れ出す。

「アワ、……ガフッ……ッガ、……アァ……。わかっておるぞ、餓鬼共。あの女の力はあまりに安直。鼻をつくほど分かりやすいからな」

「……今、あの鬼、何か言いませんでしたか?」

ダルクが震える声で囁く。しかし、カンラは前方の脅威から目を逸らさず、低く答えた。

「……気のせいだ。気にするな」


その直後だった。

「――断ッ!」

凄まじい衝撃音と共に、カンラの目の前にあった大木が、まるで紙切れのように一刀両断された。

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