監視者〜森を管理しようとせし者〜
「……どうだ? 例の森の様子は」
無機質な電子音だけが規則正しく鳴り響くコントロールルーム。その静寂を切り裂くように、重々しい男の声が響いた。オペレーターの隊員は、表情一つ変えずにモニターを見つめたまま報告を返す。
「依然、目立った動きはありません。当該エリアに投入した特殊部隊(カンラたちの部隊)に関しては完全に消息を絶っております。現在、防衛線の橋へ向かい、脱出を試みる者の影も確認されておりません」
「ふむ……。あの森は、一体全体どうなっているのだ」
男は忌々しげに吐き捨てた。
軍の総力を挙げた調査も、あの森の前では無力に等しかった。宇宙からの衛星観測、最新鋭の偵察ドローン。あらゆる手段を尽くしたが、なぜかあの森のエリアだけは、ノイズが走ったかのように「写真」が映らないのだ。物理的にそこにあるはずの場所が、光学・電磁的観測を拒絶している。
「あの森から逃げ出してきた『モノ』が、ニューネークの市街地で突如として暴徒化し、確保後に変異を遂げた……。それゆえのウイルス感染を疑っての隔離措置だが……」
男はそこで言葉を切り、冷酷な笑みを浮かべた。
「まあ、よい。我々に実害が及ばない限り、あの森の住民が何人死のうが、あの場所が地獄になろうが知ったことではない」
それだけを言い残すと、男は靴音を響かせ、冷徹な空気を纏ったままコントロールルームを去っていった。
彼らはまだ知らない。
隔離したつもりでいるその檻の中に、歴史の闇から這い出た予測不能の多くの化物が暴れまわっていることを。




