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虫森  作者: 小円説
虫森〜与えし者と奪いし者。〜

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15/25

日常崩壊〜壊れた森と英雄の壊〜

「はぁ、はぁ……ッ! また、ここか……」

嫌な汗が全身から噴き出す。次もまた戻ってこれる保証なんてどこにもなかった。だからこそ、なるべく死なないように、慎重に立ち回っていたはずだった。

だが、出発の直前に戻ったのだとすれば、「コード07」が落ちてくるまで、あと一日程度の猶予はあるはずだが。


「早く、出発しなくては……!」


――【 ビー、ビー、ビー!! 森への攻撃を確認。大型ミサイル接近。危険度、極大 】


「……なんだと!?」

早すぎる。計算が合わない。俺が一つ前の『生』で目撃したよりも、あまりに早すぎる着弾だ。

俺は狂ったようにカレンダーを、時計を確認する。

「西暦2150年8月2日……間違いない、一日前だ。なのになぜだ!? なぜ今落ちてくる!!」


混濁する思考。しかし、絶望を咀嚼する暇すら与えられない。

逃げる? どこへ。あれはこの島のすべてを塵に帰す、逃げ場のない終焉だ。

死へのカウントダウンが刻一刻と進む中、俺はただ、空から死神のように降り注ぐ「コード07」を見上げることしかできなかった。


「な、なんだ……あれは」


絶望の銀光に向けて、一筋の鋭い影が投げつけられた。刀だ。

だが、あらゆる迎撃対策を施された「コード07」に、そんな原始的な投擲が通じるはずもない。刀は火花を散らして弾き飛ばされる。


『――矮小な小僧どもが。ミサイルごときで、この我を倒せるとでも思ったか』


地を這うような、凄まじい圧を持った声が響いた。

その直後。


――ドォォォォンッ!!


島全体が震えるような地響きと共に、あの「鬼武者」が弾丸のごとく天へと跳躍した。

重力を無視したその飛翔は、一瞬でミサイルの射程内へと到達する。


『切り捨ててくれるわッ!!』


閃光。

抜き放たれた刃が、空を、空間を、そして軍の誇る最終兵器を両断した。

直後、上空で凄まじい爆発が巻き起こる。天が割れ、太陽がもう一つ現れたかのような光熱。しかし、それがあまりに高い高度であったため、地上に届いたのは激しい衝撃波だけだった。森は、焼き尽くされることを免れたのだ。


「な、なんて奴だ……」

ミサイルの直撃すら想定した、あの最恐の装甲を一撃で断ち切るなど。

不可能を可能にするその背中は、たとえ敵であろうと、凄惨な殺人鬼であろうと――この瞬間だけは、確かに「英雄」の輝きを放っていた。

俺は、震える右手をこめかみへと掲げていた。軍人として、抗えぬ強者への敬意を込めて、無意識に敬礼を捧げていたのだ。


だが、代償はあまりに大きかった。

流石のあの鬼とて、至近距離での大爆発には耐えきれなかったらしい。


「……あれか」


爆炎が空を焦がし、その衝撃が収まり始めた頃。人型の、真っ黒に焼け焦げた「何か」が、力なく上空から剥がれ落ちていくのが見えた。

それは重力に引かれるまま、森の中心部へと吸い込まれるように墜落していった。


驚愕の連続だった。だが、混迷を極める状況の中で、少しずつパズルのピースが埋まり始めている。真実は、あと少しで手に届くところにあるはずだ。


「行くか。……南へ」


俺は敬礼を解き、再び足を踏み出した。

死神が去り、火の粉が舞い落ちる森を抜け、未知の領域である「南」を目指して。

少し短いですが、きりが良いのでここで終わります。

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