決断を定めたもの~深い欲望の中で~
無機質な電子音だけが規則正しく鳴り響くコントロールルームに、一人の男の声が響いた。
「閣下、質問の許可を」
「……許可する。なんだ」
「例の森への『コード07』投下は、あまりに早計かと存じます。あのエリアには未だ一般生存者がいる可能性が高く、このままでは不必要な犠牲を招きます!」
――ガンッ!
指揮官の男が、手にしていた杖を床に叩きつけた。
「……貴様の階級を言ってみろ」
「……少尉であります!」
「少尉風情が、この大将の裁定に異を唱えるというのか?」
「軍に上下の別あれど、道理に外れた軍令には意見の余地があるはずです!」
その激しい口論を、周囲の隊員たちは氷のように冷ややかな目で見守っていた。これまでにも、正義感に駆られて腐りきった上層部に逆らい、「森送り」にされていった者たちを何度も見てきたからだ。
――パン、パン。
指揮官が、乾いた音で二回手を叩いた。
すると部屋の奥から、冷徹な空気を纏った警備兵が二人歩み寄り、反抗した少尉の腹部に容赦ない一撃を叩き込んだ。
「……ぐはっ……!?」
崩れ落ち、意識を失った男を冷淡に見下ろしながら、兵士の一人が問う。
「閣下。こいつも、例の森へ?」
「ああ。放り込んでおけ」
再び、コントロールルームに静寂が戻った。
指揮官の男は、モニターに映るノイズ混じりの森を眺め、独り言のように呟いた。
「あの森は、まだ『使える』。……だが、『あれ』を知られるわけにはいかないからな」
それだけを言い残すと、男は冷徹な靴音を響かせ、部屋を去っていった。




