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2-2

「川谷、俺と付き合えよ」

「大丈夫です」


 そうか。それが世界の選択か。俺は心に穴が空いた。隙間風が入ってくる。それでも彼女を愛そうとは思う。そこに何かの意味があるなら。きっとあるはずだ。彼女には彼女の永遠があるのだし、そこになんらかの横槍を入れたい。結婚したいと願うほどでもないが、まあ彼女だとしても構わない。


 だが俺の願いは弾け飛んだ。まあそんなものだ。だからと言ってどうなるわけでもない。俺はただ自分の物語を彼女の物語と統一したかったのだ。それを最も広範に行える奴が一番偉い世界で良いと思っていた。俺には言葉があった。物語はない。だが話し合いはできる。


「お前がそういうなら、それでもいいんだけどさ、俺は俺のことを認めているから、誰にどう思われてもいいんだ」

「そうだね、私も嫌いじゃないけど、一線を踏み越えられるほど好きって感じでもないから」

「そうかい、御愁傷様」


 俺が何をやりたいのかは俺にも分からない。怠惰の悪魔としての仕事をこなしている毎日だったが、進展があるわけではない。むしろ進展があれば心外なところもある。俺は「俺はこれだけ頑張ったが何もなかった」というところに辿り着きたかったのかもしれない。この世界に意味はないことの再確認。


 川谷が駄目なら、岩崎という手もあるぞ。俺はモテないが、知り合いが一人もいないわけではない。告白する勇気がないわけでもない。いや自暴自棄なだけかもしれない。心の中を探ってくれよ、それができる人から洗礼でも受けるつもりだった。いや、俺は宗教とかいいです。ドグマを信じたいわけではない。


 もうどうしようもないのに、なんで戦っているんだ? 俺は。時間は限りあるのに、もう全てを停止してもいい。俺は王にも神の子にもなれる。その資格はあるはずだ。生まれてきたんだ、尊いに違いない。俺には価値がある。それは誰もが同じことだったかもしれない。俺はそれにいち早く気づいたわけでもないのにね。


 女との関係が全てではないのだが、それでも生きていることを実感するために死とセックスは不可欠だと確信している。毎日小さく死んでいき、毎日セックスに蘇る。まあ童貞なのだが、童貞を捨てたいとも思わないのだが、とにかく衝動買いだけは避け得たいな、売女の。


 俺の人生、お先真っ暗〜。いや俺自身が光だからいいのだが、何者もなしえなかった光と闇との交差点に宿るのがこの俺様だ! いや、善悪の知識の裁き人ではないのだが、だからと言って何も知らないわけではない。だが何も知らないふりをしている方が有利に立ち回れることも少なくないのだ。


 俺はクラスの俺の席から立ち上がり、学校の屋上へ向かった。そこに数人の生徒がいた。伝道できればいいなってわけではないのだが、俺を信じるものを何人作ったところで、反旗を翻されて潰れる蛙の額だった。そんな冗談はさておいて、そこにいる奴らと話をした。


「ここから飛び降りたい奴はいる?」

「は? いるわけねーだろ、死にたきゃ一人で死ね、バーカ!」


 俺の心はもう荒んでいるので全然傷つかない。むしろ傷ついたふりをしてこいつを犯人に仕立て上げて不幸のどん底に突き落とし、生涯を精神的な牢獄の中で過ごしてもらえればなんか俺が生きた心地がすると思うくらいには悪人だった。そうだ、俺は悪人なのだ。誰も俺を救えない。


「命は救えても、心を救えなければ意味ないよな」

「天国はお前の心にしかないし、地獄だってそう、お前の神様はお前しかいない」

「そうかあ? 神はあそこにいるんだよ」


 俺は天に指を突き上げた。痛快だ。一応信じているのだ。伝道してあげたことを感謝してほしい。まあ俺は分かったことがある。最も一般的な神を信じれば、聖なる神を知り、聖、義、愛の交差する一つの死に到達する。だから神父とか牧師の語る神はある意味では正しいが、彼らが本当の関係を結んでいるかは知らん。


 俺は何を信じているのかは分からない。だが生きていることにはさほど意味がないと思う。永遠の命にも価値はないと思う。「永遠の命?いらねえんだよクソが」と叫んだこともある。それが俺の本質にならないように気をつけている嫌いもある。だからなんなんだ、俺の心を変えてみろ。


 いつしか気がついたことがある。聞いたこともあったのだが、人生は出会いだ。出会いがなければ物語もない。会話もない。ただ閉じこもった薄暗い部屋で一生を過ごすことになる。俺の命よりも大事なものに出会ったときに、俺は生きることに迷いがなくなるとも知っていた。だが変わりたくもない。


「俺は怠惰の悪魔なんだ。最近、天使に鞍替えしようと思ってもいるんだがな」

「天使になりたきゃ自分の使命を果たさなきゃいけないのでは? 善に忠実でない限り、あなたは悪魔に等しい」

「自分のことを善に忠実だと思っている連中の愚かさには呆れてね、俺の心はどす黒い。そう宣言しておくよ。お前の命にもさほどの価値はないが、地球よりは重いんだ。全力で守ってやる」

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