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とにかく、物語にしようじゃないか。話はそれからだ。俺の人生をこれからどうしていくのかを授業中に考えていた。俺は友達が少ない。恋人もいないし、家族もそんな関係が親密なわけではない。俺は詰みそうだと分かっていた。俺の能力では仕事にならないことも感じ始めていた。
それなのになぜ黙れないのか、この愚か者。俺は生きていることを感謝しているのだが、同時に早く死ぬことを望んでいた。ただ書き続けなければならない。俺の叫びを、衝動を。それも形になることなく電子の海に消えていく。悲しみを述べたところで、喜びが湧いてくるわけではない。負のスパイラルだ。
「森下、最近なんか辛そうじゃないか? 生きることに悩みでもあるのか?」
「悩みがあるというよりは、全てを超越してしまった感じかな。もうどうにもならねえ。こんなんなら初めから何もない方がマシだったけど、今あるという奇跡は確かに永遠の中の一つの瞬間なんだから、心だけでも強く目覚めていようってな」
「変なやつ。まあ生きていればどうにかなるよ。ならなくても死ぬだけだろ? まあ地獄に落ちちゃ堪ったものじゃないが」
「お前は天国とか地獄とかあると思う? 伊川」
「あるぜ、ここに」
そう言って彼は自分の胸に親指を差した。まあそんなところか、俺も天国に行きたかったら早いところ平安を得るべきだったな。本物の現実の天国に行っても心が救われてなければ永遠に地獄と変わらないんだ。この最悪の世界。どう乗り越えていけば最高に変えられる? それがカタルシスってやつだ。
「森下はどうしたら幸せ?」
「働いて結婚して子供を作って、俺の仕事を引き継いで、次の世代に託せた上で、天上世界からこの世界の行末を見守ることができる世界観こそ我が人生と世界の交わり! と信じることができれば幸せじゃね? 知らんけど。でもさ、俺は怠惰の悪魔なんだよ」
「怠惰の悪魔ァ? また変なあだ名考えたな。七つの大罪の最後のやつだっけ」
「そうそう、俺は何もしたくない。もう十分生きた。命を取ってください神様って感じもする。だが何かを変えたい一心で生きてもいる。何も変わらないし、生きたところで特に何にもならない虚無的な世界だって思うよ。でもそれを変えることができるのもまた俺の魂の叫びだって信じてもいる」
「まあ、精々頑張れよ」
適当だな、とは言えなかった。とりあえず彼にも感謝していた。俺はどうすれば世界を変えることができたのだろう。まだチャンスはあるが、伏線もないし、予兆もない。なんかお前は駄目なやつだって誰からも刺される無意識のレッテルの受肉として俺がいる気がするのだが、とにかく俺の価値は俺が俺であること。
だから神様感謝しますよ、と言っても言い切れない。世界を作った創造主が憎い時がある。それだけではないのかもしれないが、とにかく俺は辛いのかもしれない。いや全然辛くないのだが、誰も俺に反応しないと分かっていて、ただ断崖絶壁に立って訴えを続ける愚か者だった。
賢く生きたいんだがね、俺はまだ高校生。それも嘘かもしれない。ホームレスになって野垂れ死ぬことに不安はない。食べ物がなくなった時に何を言うのかは分からない。全てを呪うのだろうか。食べ物が俺の救い主なのだろうか。だからと言って、俺を救うものなど何もない。
ただ消えていくだけだった。俺は苦しい。苦しくない。ただ負荷を受けながら立ち止まったり、一歩進めようとして、何もできないでいることを正当化しているだけだった。俺はもう決めたのだ。ただ叫び続ける。それが俺の永遠だった。まあいいのさ。宗教じゃない。関係だ。俺は俺の魔法を使う。
詠唱の仕方を教えてもらわなくてはな、これでは本当に異世界転生じゃないか、なんて、だからと言って俺は何も救えない。滅ぼせるほどの悪でもない。いや善にも悪にも振り切っているつもりではあるのだが、この肉体がついてこないのだ、ただの怠惰の悪魔の化身。
情けない限りよ。こんな俺でも認めてくれる女神がこの世界にいれば良かったな、そう思う。俺は厨二病なのか? まあいいさ、人がなんと言おうとも、射精する先が膣内でなくても、俺の狂おしさは誰かを根底から覆すはずだった。希望に満ちた人生にも虚しさはあるのだから。
<俺はもう自殺した方がマシなんだけど、でも生きてやるよ、一矢報いてやる>
そうSNSに投稿した。犯行予告ではない。ただ俺の決意というものが消えることのない傷として世界を襲うための伏線を張る作業を怠らないだけだ。なんだ怠惰からも見放されるじゃないか。まあ良い。俺は別に生きてもいいし、死んでも良い。生きることも死ぬことも怠惰なのだ。
どちらに転んだとしても何にもならない。永遠に生きるというのは関係なのだ。誰とともに成長し、誰とともに語り合い、誰とともに寄り添っていくのかの選択なのだとしたら、俺は他の意味が何かないかと模索したかった。世界を滅ぼしたかった。そのためには神の力が必要だった。




