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もう俺の永遠は確定していた。これ以上動くことがない。まあいいさ。俺は異世界転生してやる。そして英雄になってやる。勇者として世界を救い、女を侍り、王として全てを屈服させる。その先は地獄か。まあいい。だが地獄に落ちることを恐れていては何も始まらないではないか。
しかし健全な意味での恐れというのは絶対的に存在しているはずだった。何か大いなる存在に生かされているということへの平伏は必要不可欠なのではないか。それを運命だとか神だとか名付けたりはしても、自分で自分の運命を左右できる者がどれほど偉いのかは分からない。
俺は家に帰ることを拒否したくなった。だが家出をする勇気もない。またどうせ戻ってくると分かっていた。もう生きながらえるべきではないし、食も水も断って、全てを時の流れに任せれば良かった。だが時というものは退屈凌ぎをしなければ耐えられないほどに無価値な響きを持っている。
目の前の人を救えないのに世界など救えるか。目の前の人を殺せないのに世界など滅ぼせるか。偽善と偽悪の間に揺れているだけだった。もっと面白いことを言えたら俺は物書きになれただろう。ただ俺の実感のこもった呪いを発動し続ける魔導書なのかもしれないが、異世界に消えた宝物のような感じだ。
「川谷、俺と結婚しよう」
「そういうのじゃないから」
冗談半分なのだが、そこには色々な含蓄がある。ナニをアレして? やれやれ。ってところか。俺は別にやれやれ系主人公ではないぞ。そもそもあまりそっち方面には詳しくないのでね。正面から向き合わなければならない。俺の欲望というのは性欲に対して自由になることでは決してなかった。
だから一生童貞でも、それが永遠だとしても心は傷付かなかった。だから神が手配してくれないのかもしれないが、それでも平安が残るということを誇りにしようか? おお、神よ、俺と女を結び合わせ、そこに永遠を生み出したまえ。と願ったところで、元気になれるか?
まあまあ、一物はそこそこに、ってところで、俺ももう疲れ切っていた。こんな無意味な人生を生きることに。なぜ今まで生きてきたんだ。無駄だったのか。全てを益に変えてくれよ。心の叫びは自分に返ってくる。結局自分の頭に拳銃を向けるようなものだった。生きてるか〜俺?
生きてますよ。何度でも蘇る。いやチャンスをモノに出来ていたなら、今頃裕福だったはずだよ。まだ高校生か。漫画でも描けたら良かったな。ラノベでも書けたら良かったな。だが俺は世間に人気のあるものを俺が類似物として再生産したいとは思えないし、仕事として強いられても出来ないほどに無能なのだ。
そうだよ、俺は無能なんだ。誰からも認められることはない。本当の俺を知れば或いは、ってところでもあるが、そんなものないに等しい。ただ怠惰なんだ。働きたくないんだ。もう十分やったんだ。休ませてくれ。だが休むことにもストレスがある。小さな戦いと大きな戦いをリズム良く乗り越えたかった。
その度に死んでいたらいくら命があっても足りなかったのだから、俺は実際には何もしていない。大学受験が再来年に控えているのだが、そんなことをしているくらいだったら、即時金になることがしたい。金さえあれば、権力が手に入り、全てをトップダウンで変えられる。
つまり俺の言葉によって支配できるのだ。それほど心地よいこともないはずだった。ハーレムでも作るか。だが俺のいうハーレムは別に世間の思うハーレムとも違う。ただ名前を借りているだけだ。誤解を生んだとしても、俺が本当に分かっていればそれでいいと、一人孤独な祈りの中に覚えてもらいたかった。
神など存在するのか。創造主とは何か。俺が歌うことも髪の毛が落ちることも覚えているというのか。それは少し心苦しいですね。いつハゲになるのかもお見通しときた。だが俺は禿げないよ。ドフサでこそないがね。人と人との関係の中で、どれほど見栄えが良くなっても、最後に物を言うのは言葉なのか。
どれだけ寄り添えたかと言うのも重要じゃないか? まあ良い。時間はある。ということで俺は遊びに出た。出かけるところもないからただ散歩をしているだけだった。そのうち良い人に巡り合えるのではないか? だがそのままでは心の距離は永遠に遠いまま。心と心が再接近した時に彼らは一つになるのだ。
俺は一人で生きているわけではなかったが、誰かの何かになりたいとも思っていなかった。俺が望んでいることは、さっさとこの世界を出て異世界に転生することだっただろうか。大切な仲間を冒険と成長の中で獲得して、一生を素晴らしいモノにできるのは少なくともこの世界ではあり得ない。
そう言い切るのもおかしかったな。ただ一つ言えることというのは、別に異世界があってもなくても、俺はこの世界において俺の肉を支配しなければいけなかった。何をやりたくても、やりたくなくても、やるべきことをやる。それは怠惰の悪魔にも等しく課せられている。勤勉な天使にゃなりたくないよ。




