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「川谷はさ、俺のことどう思う?」

「えーいきなりだね。森下くんのこと面白いと思っているけど、笑えるとかじゃなくてね」


 川谷は同じクラスの女子生徒。まあ俺は男子生徒と言ったところだが、もう少し大人だったり子供だったり、焦点が定まらない男なのだ。そんなことはどうでもいい。俺は彼女のことを愛していた。抱きたいとかではない。一生寄り添ってあげてもいい人の一人だった。


「俺はさ、自分が何のために生まれてきたか分かんないんだよね。でもいいんじゃないかな。世界はそれでも回っていくし、次の世代に問題を繰り越していく。キャリーオーバー発生で、最後の一人が得をする世界。それもありかな。俺は天国で彼が来るのを待ち遠しくしている。そして俺たちは天使のように降り立つ」

「何その世界観。ファンタジー? 私はそういう小説は詳しくないんだ。アニメはちょっと見たことあるくらい」

「アニメねえ。俺も好きだったな」


 そう言って遠い目をした。俺は誰と関わりを持つべきかもわからないときは現実逃避をする癖があったのかもしれない。ただ目の前のことに集中していればいいはずだったのに。俺は仕事をしたくない。多分できない。働かないなら生きていけない世の中なのかもしれないが、働くことと生きることは別だった。


「川谷はさ、どんな仕事に就きたいの」

「私は小さな子供たちの面倒を見たいかな〜。そういう時間がワクワクしていそうで」

「まあ確かにそうだね、将来を担うちびっ子たちの無限の可能性の最初の数手に関係するって楽しそうだな。俺は俺の人生をどう作り上げるかにしか興味がないのかもしれないけど、他人にも関わってみたいと思えるって素敵だと思う。そんなことでどうにかなるんだから、この世はイージーモードなのかもしれないけどさ」

「森下くんは? どうしたいの?」

「俺? 分からない。とにかく生きたいと願うよ。生きているだけでいい。その俺の生き様が全世界の人たちに伝われば感無量かな」

「へえいいね」

「雑だな」


 彼女との会話はそんな感じで続いていた。他のクラスメイトも聞いていたかもしれないが、首を突っ込んでは来なかった。変人だからな。俺が。いや彼女もそうか。友達は友達を映す鏡みたいなものかもしれない。だからなんだと言われても俺は関係を止めることはない。いつか抱けるかもしれないし、抱けなかったところで問題ではない。


 それは現物的だったなと反省する。俺はもう少し魂の交流を望んでいるのだ。人と人との繋がりの中に見える真実というものを永遠の時間の中に監禁したい。それが聖なるという瞬間そのものの響きだったと確信している。意味はよく分かっていないのだが、とにかく生きるのは難しい。


 授業が始まった。俺はそれを聞き流していた。どうすれば全ての女と知り合いになって、友好的な関係を保てるかを夢想しようとしていた。どっちかを選べばどっちかを捨てなければいけないならば、そもそも誰をも俺のものにはしないほうが良かったのかもしれないが、奴隷ではないのだ。


 俺は彼女を奴隷にしたいと考えていた。彼女って誰だ? いや存在しない恋人との間の行為だった。俺の命令には従え、ということだったのかもしれないが、決してそうではない。俺が命令していると信じることを全てやれ。報酬はそのあとだということかもしれない。


 授業も終わり、俺は学校の屋上に来ていた。そこに伊川がいた。奴も奴で変人なのだが、俺よりはマシだったかもしれない。まあ、いいのさ。永遠に生きられるようになれば、何をしても。だが褒められるかどうかは別の次元だった。俺は褒められたいわけではないが、全てを敵に回して憤死できるほど傲慢でもない。


 いっそのこと傲慢で荒れていればいいさ。とも感じるのだが、世間はそれを認めてくれないし、ただ惨めな妄言、戯言として一蹴される。笑われる有名人にでもなれたらいいのだが、まあお笑い芸人にはなれない。俺は人を笑わせるほど想像力が足りない。俺にできることと言えば、人の心に傷を残すことくらい。


「伊川はなんでこの世界に生まれてきたと思う?」

「勝つためじゃね? 全てに打ち勝ち、最強になるため」

「ならもう異世界転生しちまえよ」

「お前それ教唆だからな、覚悟しておけよ」

「いやいや、冗談だよ。この世界も満足に生きられない奴が他の世界に行ったところで活躍できる目なんてないんじゃないかって俺は思うんだよね。仕事して結婚して食べて寝て飲んで、ヤッて、イッて、吐いて、同じ円環にお前もお前の子孫たちも囚われたままなんじゃ、問題を先延ばしにしているだけだよなって感じる。俺も英雄になりたかったのかもしれないが、物憂げな執務室の中が良かったよ」

「俺もお前も四十年近く働く運命にあるのかもな。今の時代、それ以降の時代、もっと働かなくてはならないかもしれない。働くって自由なのか束縛なのか俺には分からないが、好きなことで自由を手に入れるならそれほどの幸福もないんじゃないかって思うんだ、俺」

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