片手で燐寸も擦れない男に一体何が出来るというのか? ~Battle of the HEATMEN at Super Sentou YU-TTO-RI~
行きつけのサウナ風呂で黙々と己の心身を鍛えていた本格推理作家(自称)の栃茨木岩男(トチバラギ・イワオ)。だがその平和な日常は突然現れたマッスル野郎が神聖なる最上段を侵したことをきっかけに、あえなく崩壊したのだった。男の蛮行に憤慨しつつも動こうとしない他の常連客に業を煮やし、ついに自ら立って挑戦することを決意。想像を上回る焦熱地獄の中で、男の意地をかけた戦いが今、始まろうとしていた……!
俺はいつものごとく苦行に励んでいた。その日は調子がよく1分位は記録更新できそうな予感がしていた。
2017/05/02 02:40
(改)
だがいま思えばその時すでに奴は背広を片手に引っかけ「ゆっとり」の前で足を止めたのだった。
2017/05/20 10:27
(改)
そいつは慣れた手つきで暖簾をくぐると、光る革靴を脱いで木の下駄箱に入れ、無造作に100円玉(戻らない)を投げ込んだのだった。
2017/05/20 10:40
(改)
番台に座ったババア、いや女将さんはそいつの顔を見るなりぽっと頬を染めてあらお久しぶり、などと言うのであった。
2017/05/20 10:45
(改)
ああ最近ちょっと忙しくてな女将さんも元気そうで何より、と奴は軽く受け流した。ここで馬鹿正直に実は夏風邪ひいちゃってさあ、などと答えるといつまでたっても中に入れないのだ。
2017/05/20 10:51
(改)
目元を染めたbもとい女将さんを尻目に脱衣室を横切り、壁際右奥のロッカーが使用中なのを見て舌打ちする。
2017/07/21 16:06
仕方なく隣のロッカーに100円玉(戻らない)を投げ込み脱いだものをババッと投げ入れるとタオル片手に意気揚々と風呂場を目指した。
2017/07/21 16:13
垢スリもそこそこにサウナ室へ直行。扉を開けたそいつは、熱気の中に久々に見る面々(俺以外)をざっと見渡し会釈をしただけだと後になって強く主張したのである。
2017/07/21 16:40
(改)
困ったことに普段自分が座っている席が見知らぬ男に占領されている。だがあえてそれを更なる高みへ挑戦する機会ととらえた奴はフッ、と誰にともなく不敵に笑ってみせた、らしい。全裸でかっこつけてんじゃねぇ。
2017/07/28 22:00
(改)
よっしゃ今日はいつもより一段上に挑戦して座禅組んでる爺さんの横に座ってみるかと足を踏み出すと、初めて見る男がジロリと睨んできた。何だこのおっさんは。と思いながらそのまま
2017/08/03 22:59
二段、三段と上がるにつれ、おっさんの凝視もついてくる。初対面の男に嫌われるのは毎度の事だがこっちも男だ引き下がるわけにゃいかん、大体あんたが俺の場所とってんだろがと多少のイラつきと意地と、ほんの少しの
2017/08/11 10:49
さてここで場面は変わり『ゆっとり』のボイラー室に移るが設置から数十年、耐用年数?何それ?てな感じに年季の入った鉄釜は今日も爆発寸前の崖っぷちで時折ボムッ、ボコッと異音を立てて元気に湯を沸かしていた。
2017/09/07 22:51
「お?今日はちょいとご機嫌斜めだねぇ。火力が足りねえってか?」と釜と同じくらい年季の入った爺さんが調節バルブをぞんざいに回す。ボカン!という音をたてて釜は膨張し、ラスボスめいて不気味に振動した。
2017/09/14 23:12
「よしよし、その意気だ」とボイラー爺さんは嬉しそうに呟いた。この店で風呂を焚き続けてウン十年、既に自分の分身のような窯が調子よく動いている限り、まだまだやっていけると思う爺さんであった。
2017/09/21 23:47
(改)
丁度その頃、番台の女将は欠伸まじりに客が置いていった『婦人実録』をめくっていた。「へー、〇田〇子(※)また離婚するの。これで何度目だよ」ボイラー室の方でボカンという音がして、女将は軽く舌打ちをする。
2017/10/05 22:59
「またあの爺さんたら火力上げて、燃料代かさむってのに」同時刻、高くてまずいと評判のゆっとり食堂では今日から入ったパート主婦が炎上するフライパンを前にパニックに陥っていた。「は、はやく水を……!」(※)
2017/10/05 23:00
熱気に蒸されながら故郷の惑星を夢見ていたヤ=ムッダ=タルはぴくりと擬態した頭部を動かし、あーあと声にならない呻きをあげた。まあすぐに対処すれば何とかなるだろう。この生物の防災対策はそれなりに優秀だ。
2017/10/13 00:37
ラーマ=ジャル=ディン=セグンダ王子は美女の一群から必死に逃げていた。「帰国!寵愛!皇后!」「帰国!懐胎!国母!」「イ、嫌だ!僕のお嫁さんは清楚で可憐なスク水女子なんだ!こんなメドゥーサ供は嫌だーっ!
2017/10/26 23:37
「サウナにまだ人がいるんです!」色白の青年が必死の表情で訴える。「何だとぉ!?」消防団員は目を剥いて怒鳴った。「あーもうしょうがないな!いいからもう君は避難して」
2018/05/06 19:09
(改)
「だから言っただろうが、キナ臭ぇって…」
2018/05/06 20:06
「なのなのです~♪」
2018/05/06 20:07
「あんたのどこが本格なんだよ」
2018/05/06 20:08
「儂が女だったら惚れとるね」
2018/05/06 20:09
「美しい友情の始まりってやつかもな」
2018/05/06 20:12