さてここで場面は変わり『ゆっとり』のボイラー室に移るが設置から数十年、耐用年数?何それ?てな感じに年季の入った鉄釜は今日も爆発寸前の崖っぷちで時折ボムッ、ボコッと異音を立てて元気に湯を沸かしていた。
つまり条件は対等でここから先は男と男の意地のぶつけあい、崖っぷちでのチキンレースだと肚を括ったのだが、やがて耳の奥がキィーンと鳴りだし血液は轟音を上げて体内をかけ巡り心拍数は200以上を刻んで震えるぞハート燃え尽きるほどヒート、「おっさん」全身が溶けた金属と化したような苦痛のさなか、妙にしぃんとした静けさで
「おぃおっさん」そうかこれが悟りの境地というものか俺はついに自己を超越したのだと「寝てんのか?おぃあんただよおっさん」うるせぇな何だよせっかくフワッとしてたのに、ってまさか奴が話しかけてきてんのか?
はっと目を開け横を見ると、奴が首だけこっちに向けて苛立たしそうに俺を見ていた。なんだこいつ、サウナ内の最低限のマナーまで破るとはどこまで傍若無人なんだ、これだから最近の若い者はいや俺だってまだ若いけど、このまま無視を決めこんでもいいが対決を避けたと思われては沽券に関わる仕方ねえな相手してやるか言っとくけど先にルール破ったのはそっちだかんな。と俺は一瞬のうちに考えを巡らし、ぎろりと相手を睨み上げると精いっぱいドスをきかせた声で「……何だよ」と応じた。
どうせこいつの事だ、邪魔だからさっさと消えろとか俺の横に座んじゃねえとかDQNな発言をしてくるだろうと思いきや、意外と穏やかな口振りで奴はこう言った。
「いや何つうか、あんたにはちょっとこの段はきついんじゃねえか?無理して寿命を縮めない方がいいぜ」
と向けてきた視線にはわりと本気でこっちを気遣っている色があり、俺は無礼な口をたたかれる以上にむっとした。
「余計なお世話だ。俺はここの常連なんだ」
俺は言い返し、さらに続けて、
「そっちこそ無理は止めておけよ。このサウナは普通とは違うんだからな。病院送りになっても知らないぞ」
どうだこの野郎、気遣い返しだ。実際本当にこの段ヤバいし俺もそろそろ倒れそうだから出てってお願い。
「俺だって常連だよ?おっさんは見たことねぇけどな。つかほんとに大丈夫かよ、顔色尋常じゃねえぞあんた」
何……だ……と?
常連だって?こいつが?




