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変異童話  作者: 偃月作
第一章、ヘンゼルとグレーテル
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#64 はじめの結末

「コモン……なんか、消えかけて…」

「ま、ロンの体が壊れたら、魔法のおかげで実体貰ってた俺も消えるんだよ。自然の摂理ってやつ?」

あっけらかんと言うコモンに、少しの苛立ちと目を合わせられない罪悪感が生まれる。


コモンは優しい手つきで、燃えて崩れていくロンにそっと触れた。

「やって、くれたんだな。ありがとう……は、変か?」

「……わかんない。だって、僕はコモンの好きな人…殺したんだ。感謝、されることじゃ」


「もう」

僕の言葉を遮って、コモンが言葉を続ける。

「もう、いいんだ。……ロンは…お前のおかげで苦しまずにすむ。だから、ありがとう」

コモンが初めて、僕の前で笑顔を見せた。

僕には、その笑顔に込められた思いや感情全てを見透かせるわけではない。

けど、憎しみや怒りと言ったものがないのはわかった。


「はじめぇ、人からの好意は受け取っとけよ〜」

「うるさいな!……まあ、コモンが言うなら。僕がうじうじしてる訳にもいかないか」

つんつんとヤンキー赤ずきんさんに弄られながら、コモンに向き直る。

コモンとロンが決めた結末。僕の知るヘンゼルとグレーテルとは大きくかけ離れてしまったが、これはこれである種のハッピーエンドなのかもしれない。

 

コモンがロンの傍に座り込む。

「もう……一人にしないから」

独り言。独り言のはずなのに、どこか会話しているようにも見えた。コモンの顔は明るく、それでいて、目は潤んでいた。

 

「あ……ヘンゼルの檻も開くかな?」

ヘンゼルの檻まで行く。鍵に手をかけると、ボロっと砂のように消えた。それを皮切りに、ヘンゼルごと檻が床にドサッと落ちて、砂のように消えていく。ヘンゼルがお尻を押さえて痛そうに顔を歪めた。

「ご、ごめん!痛いよね……立てる?」

「そんな心配しなくても大丈夫だわ……てか、俺よりお前!ひむろ、ボロボロじゃん」

「え」

そう言われて気づく。自分の手、切り傷で血だらけ。頬からの血は固まっているし、狼男に入れられた傷もジンジン痛む。そして、いちばん酷いのは足。やけどで爛れており、変な模様が足首から広がっている。

アドレナリンが切れたのか、全身の痛みが悲鳴をあげ始めた。


「こ、これ……やばいかも……」

視界がグラグラ揺れ始めて、その場にばたんっと倒れる。瞼が重くなる。

「は!?」

「はじめさん?……はじめさん!」

ヤンキー赤ずきんさんのびっくりしたような声。クラージュ君が僕の体を揺らす。

「く、くら……じゅくん。やめ……吐く」

「え!?ご、ごめんなさい……」

貧血なのか。はたまた痛みに体が耐えきれなくなったのか。

僕の意識が遠くなっていく。

 

「ふーん。お前は、そういう結末にしたんだな」

暗い路地裏。白いローブが、変に目立った。

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