#59 救世主(?)
破片がたくさん落ちている床にぶっ倒れる。不格好でヘンテコなポーズでヘンゼルの前に飛び出したから、腹から床に落ちてしまった。
「ひ、ひむろぉ……ごめん、オレ…!」
頭上からヘンゼルの泣きじゃくる声が聞こえてくる。こんな時にも頭を撫でてやれないのが悔やまれる。早く檻から出してあげたいと思うものだ。
「大丈夫……全然、痛くないもんね!こんくらい……」
嘘である。滅茶苦茶ハチャメチャに痛い。既に半泣き状態のくせに、見栄張って立ち上がったせいで、そろそろ涙が溢れ出してくるだろうという状況になってしまった。
魔女さんの方は……と振り返ってみると───次の瞬間。
魔女さんが吹っ飛ばされた。思わず咳き込むほどの砂埃が舞う。目の前の壁には大きな穴が空いている。
その場の全員が、死の恐怖に晒される。一瞬の出来事だった。
震える手には、血とは違う冷や汗が浮かぶ。こんな手汗ヤバイ状況で、好きな子とは手を繋ぎたくないな……なんて現実逃避さえも許されない。
「あー……わたしと戦える人いなくなっちゃいましたけど、大丈夫ですか……ッ」
魔女さんの次は、悪魔が吹っ飛ばされた。僕は、そんな順番制だったの…?と全く頭が追いつかず、今起きたこと全てを間抜け面で視聴していた。
そして、吹っ飛ばされたドアから現れたのは───安心安全の赤いずきんを被った“ヤンキー赤ずきんさん”だった。
え、あんた。ドア吹っ飛ばせんの?
「おーおー。こりゃまたボロボロじゃねえか。まーたお人好し発動か?」
「…どこで遊んでたのさ」
「遊んでないわ!ニートを叩き起してきたんだよ。コイツ、大の字になって寝てやがった」
ビシッと狼男に指を指して、ヤンキー赤ずきんさんはいつもの不機嫌な顔で悪態をつく。
そんな事を微塵も気にしない狼男は、周りを見渡して使えるものがないか探して、まともに使えるもんが無いと悟ったのかこっちを向く。
「無い」
「知らねぇよ。素手でいけ。素手で」
いつも通りの無理難題。なんか、おばあさんを思い出してしまう。あんな話を聞いたあとだけど、やっぱりおばあさんが悪い人には思えなくて…。
それを証明するためにも、ここは生きて帰らなければならない。
「2人とも」
『あ?』
「ガラ悪……。とにかく、悪魔を倒すために5秒間だけ、身動きを封じて欲しいんだ」
そうこうしている間にも、悪魔は回復していく。マッチに火をつける時間を加味して、5秒間は絶対。
こっちの最強切り札、魔女さんはもう動けない。僕ら3人でどうにかするしかない。
「アイツ、魔法とか打ってくんの?」
「まあ、悪魔だし。それくらいは……」
「じゃあ!もっかい狼男凶暴化させようぜ!だったら、オレら働かなくていいし」
勇敢なのか怠惰なのか、よくわからん奴だと思う。
一応、優しいはずなんだけどな。




