#56 必要なほのぼの回
ケイトside
「ちょ、はア!?」
オレの道案内をしてくれていた謎のキラキラが、無慈悲にも道の途中で消える。そりゃあもう、跡形もなく。
「嘘だろ…おい」
はじめの野郎…嘘つきやがったなァ?と妄想の中で、あほ面のはじめを殴る。
とりあえず、目の前のでかいドアを開けてみようと、前向きに考えてみる。だって、これがグレーテル達の場所への最大の手がかりなんだろ?
進まなきゃ辿り着くもんもたどり着けない。
「って、ここ…オレらが落ちたとこじゃねぇか」
建物に入ってすぐ、グレーテルに助けを求められ、真っ逆さまに落下したところ。
オレらが落ちた痕跡は全くないが、ここなのは確かだ。何かグレーテル達のところへ続く手がかりがないもんか……と周りを見渡す。
すると、あった。今一番求めてないものが……。
「狼のやつ……ここにいたんかよ」
思わずため息が零れる。オレらがボロボロになりながら、ヘンゼルとグレーテルを助けるために奮闘していた間も、コイツはここで寝ていたというのか…?
窓からは狼男に当てるように日差しが指し、この状況には似合わない、凄く平和な光景が広がっていた。
ここまで来ると、小鳥も鳴いていそうだ。
「おい、起きろ。寝てる場合じゃねぇんだよ。おーい……」
ダメだ、全ッ然起きねぇ。
ぐーすかぴーすか気持ちよさそうに寝やがって……と憎たらしさまで湧き上がってくる狼男を見ていると、無性に腹が立つ。
「てか、お前もう成人済みだろ。何やってんだよ。ニートか!」
怒りに身を任せ、寝そべっている狼男の耳元で叫ぶ。
その瞬間、ガッと狼男の目が開き、それにビビったオレが狼男の尻尾に滑って転んだ。
……負の連鎖とはまさにこの事。
『痛っ……てェ!?』
二つの雄叫びが響き渡った。
状況が上手く飲み込めないまま、狼男は尻尾への激痛で飛び起き、そして、オレは背中から転んだことによる背中の激痛に叫んだ。
「お前か!赤ずきん!」
「元はと言えばお前が寝てんのが悪いんだろうが!」
起きて早々騒ぎ立てる狼男に、オレはイラついて同じ声量で言い返す。埒が明かないとわかると、お互いの胸ぐらを掴み、拳で語り合い始める。
え?似た者同士だって?
バカ言うな。誰がこんなヤツと似てんだよ。
次言ったやつは、腹に石詰め込んで井戸に投げ入れるぞ?これ、オレん家で悪いことした時に言われる脅しな。
「いや、怖ぇよ」
「でも、お前もばあちゃん食ってたら、そうなってたかもしれねぇんだぞ」
「まじかよ」
久しぶりの日常会話に少しだけ花を咲かせる。張り詰めていた感じが、一瞬にして溶けていくようだった。
「あ。てか狼、まだ動けるよな?」
「いや、身体中なんか痛てェから無……」
「お前、モブキャラみたいになってきてるから。そろそろ見せ場なきゃ終わるぞ?」
「……行かせていただきます」
はじめ、ヘンゼル、グレーテル。ちょっと待っとけ。もう一人の用心棒連れて、助けに行くからよ。
「行きたくねー」
「文句言うな」




